虚構の森(田中淳夫)

植林は人気だ。何か環境によいことをしたいと考える人や組織が、まず思いつくのは緑を増やすこと。そこで木を植えようと考える。地球環境を好転させようという発想の中で、木を植える、森をつくるというのは絶対的正義なのだ。 。。。
。。。 だが、この植林という行為。よくよく気をつけるべきだ。人為的に木を植えることは、自然界の営みとは違う。苗の樹種は、苗の調達方法は、そして植え方や植えてからの世話は、どうしているのか。 。。。
。。。 植える樹種と、その後の育林方針によって森の姿は変わる。その姿によっては、元の植生を破壊してしまうばあいもあるだろう。環境をよくする、気候変動を抑える‥‥‥そういう目的のために植林を推進するのなら、改めてその土地の特性と、めざすべき方向性や目的を考えて慎重に決めるべきなのだ。

One thought on “虚構の森(田中淳夫)

  1. shinichi Post author

    虚構の森

    by 田中淳夫

    SDGsが大流行の昨今。環境問題の大切さはよくわかっていても、「地球温暖化とCO2排出量は関係ない」「いやある! 」、「緑のダムがあれば洪水や山崩れは防げる」「いや防げない! 」などなど、環境問題に関しては異論だらけで、果たして何が正解かわかりません。さらに地球環境を巡ってはさまざまな“常識”も繰り広げられています。しかし、それをそのまま信じてもいいのでしょうか? 本書は、そうした思い込みに対して、もう一度一つ一つ検証を試みました。「森の常識」を元につくられた〝環境問題の世論″に異論を申し立て、不都合な真実を突きつけた一冊です。

    [目次]
    はじめに ――森を巡る情報の「罠」
    第1章 虚構のカーボンニュートラル
    1.地球上の森林面積は減少している?
    2.アマゾンは酸素を出す「地球の肺」?
    3.間伐した森は「吸収源」になる?
    4.森林を増やせば気候変動は防げる?
    5.老木は生長しないから伐るべき?
    6.温暖化によって島国は水没する?
    7.砂漠に木を植えて森をつくろう?

    第2章 間違いだらけの森と水と土
    1.「緑のダム」があると渇水しない?
    2.「緑のダム」があると洪水は起きない?
    3.木の根のおかげで山は崩れにくい?
    4.森は降雨から土壌を守ってくれる?
    5.黄砂は昔から親しまれる気象現象?
    6.植物もパンデミックに襲われる?

    第3章 日本の森を巡る幻想
    1.マツタケが採れないのは、森が荒れたから?
    2.古墳と神社の森は昔から手つかず?
    3.日本の「本物の植生」は照葉樹林?
    4.日本の森は開発が進み劣化した?
    5.植林を始めたのは江戸時代から?
    6.生物多様性は安定した環境で高まる?
    7.草原は森より生物多様性は低い?

    第4章 フェイクに化ける里山の自然
    1.ソメイヨシノにサクランボは実るか?
    2.外来草花が日本の自然を浸食する?
    3.堤防に咲く花は、遺伝子組み換え植物?
    4.街路樹は都会のオアシスになる?
    5.ミツバチの価値はハチミツにあり?
    6.外来生物は在来種を駆逐する?

    第5章 花粉症の不都合な真実
    1.造林したからスギ花粉は増えた?
    2.枯れる前のスギは花粉を多く飛ばす?
    3.スギを減らせば花粉も減る?
    4.舗装を剥がせば花粉症は治まる?
    5.花粉症はスギがもたらす日本だけの病?
    6.マイクロプラスチックは花粉症より危険?

    第6章 SDGsの裏に潜む危うさ
    1.桜樹は日本人の心だから保護すべし?
    2.和紙も漆も自然に優しい伝統工芸?
    3.木材を使わない石の紙は環境に優しい?
    4.再生可能エネルギーこそ地球を救う?
    5.パーム油が熱帯雨林を破壊する?
    6.農薬や除草剤は人にも環境にも危険?
    7.人口爆発のため食料危機になる?

    終わりに――行列の後ろを見るために

    主な参考文献(順不同)

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