レビュー

アマゾン カスタマーレビュー by picander
喜読哀楽 通勤電車の中でどうぞ by たかまさ


アマゾン カスタマーレビュー

5starJouhou

 

投稿者 picander トップ500レビュアー 投稿日 2015/12/11

国連で長く情報管理の仕事を務めた著者によるエッセイ集。
600ページを超えるが、一つ一つのエッセイは1〜2ページ程度のものがほとんどで、日記のような断片が積み重なる。
書店では巻末の人名索引をまずご覧頂きたい。(目次の詳細は著者のサイトでも確認できる)
2段組11ページにわたる数百名の登場人物の多様さが本書の射程の広さを物語っているし、本書を支える、情報について知ることは人間について知ることだという思想を体現しているとも言える。
あらゆるものが「情報」として流通する時代であるからこそ「情報」をテーマに本書で語られる内容も、古典からインターネット、国際政治からメディア論から井上靖の小説、戦中のビュロクラシーまでありとあらゆる「情報」を取り込み、著者の思考は自由闊達である。
著者が長い間書き溜めていた断片を整理したものなのか(日記的な扱いならコラムごとに日付をいれてほしいが)、それとも一気に書いたものなのかわからないが、著者が確かな教養と知性を土台として「情報」を扱ってきたことが(そうでなければ情報を扱うべきでないということも)、本書の端々から理解できるだろう。みすず書房のような装丁も良い。

私のコメント:
著者です。まずは、装丁をほめていただいたことから。私もこの本の装丁が気に入っていて、インテリアとしても使えるなと思っているところなので、「みすず書房のような」と書いていただきとても嬉しいです。
「確かな教養と知性を土台として情報を扱ってきたことが」と持ち上げていただきましたが、実際は逆で、教養も知性もなく、仕事に追われ、「情報の仕事をしてきたのに、情報のことはなにもわかっていない」というのが著者である私の実態です。わかっていないから、ここまでマニアックに情報のことを考え続けることができたわけで、わかっていたら本は出していないと思います。
私のように、情報とはなにかという根本的なところをないがしろにして、情報の仕事に従事してきている人は多いのだと思います。情報について考えていたら、情報の仕事はできないという側面もあります。それでもやはり、情報の仕事に従事している人には、そして知識労働者と言われているような人には、この本を手に取ってほしいです。
私はプロの文筆家でも学者でもないので、この本の書き方もプロのものではありません。ですからこの本は、「長い間書き溜めていた断片を整理したもの」でもないし、「一気に書いたもの」でもありません。日記のように日付をつけることもできないし、学術論文のように出典を明らかにもできない。気が付いたら本ができていたというのが、正直なところです。
アマゾンのカスタマーレビューという公共の場所に載った最初のレビューがpicanderさんによるものであったこと、その「ちゃんと読んでいただけた感じ」、そして「情報とは人間」という的確な題をつけていただいたことに、心から感謝です。ありがとうございました。

picanderさんのコメント:
拙いレビューに、著者様からわざわざコメント頂き光栄です。
多彩な話題に飽きることなく一気に読みました。
ただこれだけの「情報」量を誇る本書をどうやって書かれたのだろう?というのが率直な気持ちで書かせて頂きました。
レビューでは書きませんでしたが、末尾の図書館論は感動的でした。ありがとうございました。


Takamasa喜読哀楽 通勤電車の中でどうぞ

吾輩は「本好き」である。名前はすでにある。本日天気晴朗なれど、年金安し。

by たかまさ

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情報とは

My Ranking:★★★★☆

 ある書店の新刊コーナーでこの本を見つけた。

 どの本も長いタイトル、大きな文字、目立つ写真で表紙を飾り、これでもかこれでもかと主張していた。その中でこの本だけが、タイトルが小さい2文字で、写真もなく目立たない表紙であった。それがかえって私の眼を引いた。

 ちょっと手にとって、パラパラめくってみたが、写真や図表が一切なく、文字だけだった。今時めずらしいな、工夫が足りないのでは、というのが私の第一印象。

 しかし、よく考えてみたら、これは著者なり編集者なりが意図的にやっていて、「文字だけだけど、どうだい読んでみるかい。」と読者に挑発しているのだと気づいた。

 それではその挑発に乗ってやろう、という気になり、ダメモトで読んで見た。

 アタリだ。私にとってはインパクトのある内容で、まったく新しい視野が開けた。

 情報とは何か、情報にダマサれていないか、情報とどのように付き合うべきか、情報を得てどのように生きるべきかを教えてくれた。

 世界の常識と日本の非常識を具体的に指摘して、多くの納得する提言や考え方を提示している。

 日本のリーダーや指導的な立場の人には是非読んで欲しい一冊だ。