石牟礼道子

この世に悲しみを持つ程に、人は美しくなるとか申します。物狂ひの心程、一筋なものはございませぬ。

2 thoughts on “石牟礼道子

  1. shinichi Post author

    評伝 石牟礼道子―渚に立つひと―

    by 米本浩二

    「この世に悲しみを持つ程に、人は美しくなるとか申します」
    黙って読んでいた道子が途中から声を出して読み始めた。私は息をするのも忘れて聴き入った。
    「ああ人間はこの世で一体幾辺、望みを絶つのを繰り返すのでございましよう。限りない絶望の果て、一つを捨てる為に人間は美しくなると申します。その度に悲しみが何とはなしに絹糸の様に、その細い故に切れることなく続き、その絹糸が何時しかに一つの調べを持ち、その調べを孤独の底で奏でる時に、人間は、美しいものへ近づくのかも知れません」

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