西山隆行

アメリカ的信条を構成する自由や民主主義などは、かなりの程度に普遍性を標榜できる価値観である。このような価値観は、アメリカのアイデンティティを定義するだけではなく、他の多くの国でも程度の差こそあれ、受け入れ可能であるに違いない。そして、多くのアメリカ人は、そのような価値観を世界に広めるのがアメリカの義務だと考えていて、実際にそのような活動を熱心にやっている。圧政に苦しむ人々のいる地域に自由と民主主義を広めるのはアメリカの責務だという考えが、当然のように表明されるのである。
だが、一般的にいえばその活動は他国に対する内政干渉である。ならば、何故、そのような一般的には認められない活動がアメリカには許されるのかというと、アメリカが例外的な国だからだというより他はない。このような議論は、アメリカ例外主義論と呼ばれており、アメリカ国民に広く受け入れられている。 。。。
アメリカでは、アメリカ的価値観の素晴らしさに魅了されて移民がアメリカを訪れ、その価値観を受け入れていったのだと主張された。その結果、アメリカ的信条は普遍性を持ち、世界中で受け入れられるべきものだと解釈されるようになっていったのである。
世界で多くの国が自国の文化的伝統に誇りを持ち、その独自性を強調するのは、一般的に見られる現象である。だが、その特殊性は他の国には模倣することのできない固有のものだと主張されるのが一般的である。これに対し、アメリカでは、その特殊性はむしろ他の国によって模倣されるべきモデルだと主張される点に特徴がある。それらの特殊性を表記する際に英語では、アメリカ以外の国については、Japanese uniqueness やGerman uniquenessなどのようにuniqueという表現が用いられるのに対し、アメリカではAmerican exceptionalismという表現が用いられる点も興味深いといえるだろう。

One thought on “西山隆行

  1. shinichi Post author

    アメリカ政治

    by 西山隆行

    アメリカ的信条の中身が何であるかについては論争がある。

    アメリカを代表する政治学者のサミュエル・P・ハンティントンは『アメリカの政治――不調和な契約』で、自由 (liberty)、平等 (equality)、個人主義 (individualism)、民主主義 (democracy)、法の支配 (rule of low) の五つを例にあげている。

    移民の国であるアメリカはこのような価値観にアイデンティティの基礎を求め、移民にこれらの価値を習得するよう求めてきた。だが、このような価値観の基盤を形作ったのは移民ではなく、建国期から存在していたピューリタンだった。

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