矢野沙織

私が人前でサックスを吹きに家を出たのは14歳の頃でした。その衝動は、何度遡って思い返しても、父とのいつもの何気ない小競り合いの中での、「学校へ行かないならば働きなさい。」という一言だったと思います。
いつか頼んで買ってもらった、キャンディーダルファー特集のJazz Life巻末にあるライブハウス欄を参照して、無数の10円玉を握りながら公衆電話からライブハウスに電話を掛け続けました。「社長は誰ですか?私は中学生です。働かせてください。」と、随分おかしい電話だったであろうと思います。その中で、今でもライブをさせて頂いている東京の外れにあるCafe Clairというjazz喫茶が、そんな私を拾ってくれた唯一の場所でした。
そこへ通って、伴奏だけが入っているカラオケCDをバックに演奏すると、マスターは優しく「まだ沙織ちゃんは親の目がなくてはいけないんだ。それに、1人ではできないからね。ピアノやベース、ドラムのプレイヤーと一緒にやるんだけど、バンドメンバーはいるの?」と言いました。何も無い私には、それができない。と思っていると、「まずうちに来るプロミュージシャンのライブにゲストで出てみなさい。頼んであげるから。で、次はお母さんかお父さんと来なさい。話してあげるからね。」と仰いました。
実際に仕事をしようとしてしまった無鉄砲な私に両親は辟易しながらも、翌週から殆ど毎週Cafe Clairのライブにセッションで参加させて頂いておりました。
その頃になると、私と同時期程度にjazzファンとなった父も、きゃいきゃいと喜び、多摩川沿いで練習をする私に付き合ったのでした。父子が真冬の高架下の河川敷で、カセットコンロを囲んで楽器の練習をする光景は、当時から「嘘みたいだなぁ」と思ったものですが、未だに「やっぱり嘘みたいだなぁ…」と、懐かしく思い出します。

3 thoughts on “矢野沙織

  1. shinichi Post author

    デビュー15周年の年に

    矢野沙織

    https://ameblo.jp/yanosaori/page-2.html

    私が人前でサックスを吹きに家を出たのは14歳の頃でした。
    その衝動は、何度遡って思い返しても、父とのいつもの何気ない小競り合いの中での、
    「学校へ行かないならば働きなさい。」という一言だったと思います。
    いつか頼んで買ってもらった、キャンディーダルファー特集のJazz Life巻末にあるライブハウス欄を参照して、無数の10円玉を握りながら公衆電話からライブハウスに電話を掛け続けました。
    「社長は誰ですか?私は中学生です。働かせてください。」と、随分おかしい電話だったであろうと思います。
    その中で、今でもライブをさせて頂いている東京の外れにあるCafe Clairというjazz喫茶が、そんな私を拾ってくれた唯一の場所でした。
    そこへ通って、伴奏だけが入っているカラオケCDをバックに演奏すると、マスターは優しく
    「まだ沙織ちゃんは親の目がなくてはいけないんだ。それに、1人ではできないからね。ピアノやベース、ドラムのプレイヤーと一緒にやるんだけど、バンドメンバーはいるの?」と言いました。
    何も無い私には、それができない。と思っていると、
    「まずうちに来るプロミュージシャンのライブにゲストで出てみなさい。頼んであげるから。で、次はお母さんかお父さんと来なさい。話してあげるからね。」と仰いました。
    実際に仕事をしようとしてしまった無鉄砲な私に両親は辟易しながらも、翌週から殆ど毎週Cafe Clairのライブにセッションで参加させて頂いておりました。
    その頃になると、私と同時期程度にjazzファンとなった父も、きゃいきゃいと喜び、多摩川沿いで練習をする私に付き合ったのでした。
    父子が真冬の高架下の河川敷で、カセットコンロを囲んで楽器の練習をする光景は、当時から「嘘みたいだなぁ」と思ったものですが、未だに「やっぱり嘘みたいだなぁ…」と、懐かしく思い出します。

    それから、Cafe Clairでの活動により、日本コロムビアのディレクター岡野博行さんが私を見付け、15歳の時CDを作る話が持ち上がりました。
    それに先立って、英才教育の類いも、もちろんキャリアも無かった私は、jazzを見にニューヨークへ行くことになりました。
    そこで1stアルバム「YANO SAORI」のジャケットを撮影しました。
    写真家の田村仁さんとの出会いもニューヨークでした。田村さんは、吉田拓郎さん、中島みゆきさんを撮った作品が印象的な、憧れの芸術家です。
    ジャケット撮影の当日朝早く、写真撮影がなんたるかも、化粧の仕方もよく知らない頃でしたから、いつも通りのボサボサ髪をとかして、帽子を被っただけの格好で「もっと綺麗にしたい」とぶう垂れながら現場へ行くと、田村さんは「そのまんま、そのまんま」とニコニコ仰って、朝早いハドソンヤードの長いエスカレーターでシャッターを切りました。
    今振り返ると、そこにはもう二度と撮れない「あの頃の、あの朝の私」が写っています。



    そうして時間を掛けた1stアルバムを16歳で発表したのでした。
    それからしばらく時は経って、恩師であるJames Moody師との出会いや別れ、様々な経験があり今日に至ります。
    ずうっと夢のようで嘘のようで、今もまだ夢を見ているような雰囲気のまま時が流れました。



    件仲の良かった父は、若いまま、もう8年前に亡くなり、私は子供を持ち、平成の最後にCDデビューから15周年を迎えた私は、自分の年齢の丁度半分を音楽現場で過ごしたこととなります。
    すると、いつの間にか自分が駆け出した14歳だった頃を思い出すより、娘が14歳になることを想像する事が多くなりました。

    10代は基本的にお馬鹿で子供です。
    黙っているのは堂々としているからでも怒っているからでもなく、「ここでどうしたらいいかよくわからないから」ということが多々あります。大人の判断が出来ないこともたくさんあります。それなのに大人よりたくさんの事を感じます。

    あの頃言われた、自分ではどうすることもできない事を指摘される言葉。
    「うちのライブハウスは老舗で、女子供は出演させてないんだよ。」とか。
    ミュージシャンの言う「君のような未熟な状態でCDを出すのは恥なんだよ。恥を知りなさい。」
    果ては「君が女子高生ではなくなったら物珍しさがなくなってすぐに消えるんだからね。」
    そういう類いのことは未だに記憶から影を消すことはありません。

    「歳を取ることは誇りであって祝福されるべきこと。早く大人になりなさい。そして今は祝福される子供の時間を楽しみなさい。」と教えてくれたのはMoody先生でした。

    そういう複雑なハラスメントに晒されつつも、私にはいつもそうやって、それを言い付ける相手に恵まれていました。
    それは友人であったり、共演者であったり、父親でありました。
    ですから「そりゃあ言った奴が悪いね。」とかそういう同調を得ることでまだ深い傷を負わずに済んだのかも知れません。

    時代が変わって、最近は少しずつながら意識が変わった様に感じます。
    傷付く恐れのある言葉を無くした反面、焚き付けられるような事が減った気がするのもまた否めないとか、「それじゃあ冗談も言えないじゃないか。」という意見も、違うと思いながらも今の私には一蹴する言葉がないのが歯がゆい所です。
    しかしやはり、こと子供に対しては言葉を選ぶ義務があると感じます。
    この15年間でとても増えた女性のプレイヤーは、みな伸びやかで屈託のない方が多いのは何より喜ばしいことです。
    いじめられて、折られて、その部分を補強するようにこぶができて強くなる節だらけの強さなんて別に必要がないのです。

    年の瀬となりましたが、いつも応援してくださる皆様、また、これから音楽を志す方々に、私の音楽活動が15年間続いたことをご報告致します。

    ありがとうございます。
    これからも聴いていてください。

    矢野沙織

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  2. shinichi Post author

    Left Alone
    矢野沙織

    “Left Alone” is a jazz song written by singer Billie Holiday and pianist/composer Mal Waldron, and published by E.B. Marks.

    This is one of seven songs written by or co-written by Holiday that she never recorded.

    Mal Waldron began working as pianist for Holiday in mid-1953. Holiday had intended to record the song a number of times but “always forget the damned sheet music.” However, Waldron himself recorded the song on his 1959 album Left Alone, and near the end of the LP discusses the origin of the song.

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