思い出のかけら

遠い記憶の闇のなかに
そこだけが照らされて
その前後は暗いままの
短い記録映画のような
いつまでも残っている
思い出のかけらがある

夢か幻のような人物は
自分のようでもあるし
ここに現にいる自分は
他人のようにも見える
自分はここにいるのか
幻影すらもいないのか

自分と関係があるのは
確かなような気もする
でもそんなつながりは
暗い闇のなかに消えて
灯りを灯そうとしても
頼りの理性は働かない

自分の意識的な生活が
夢か幻のようなもので
そういう記憶の断片が
実際に起こったことか
記憶を投影したものか
何もわからず佇立する

見上げると君が見えて
優しい微笑みを感じて
思い出は思い出でなく
記憶はどこにもないと
そんな思いさえ持てば
なにも起きてはいない

なにも起きていないと
君の幻に語りかけたら
嬉しそうな顔が浮かび
あっという間に消えた
明日の空は青いのだと
言っている君を感じた

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