企業城下町

紫の山から湧き出た水が
川になって流れてきて
沖に島に向かうようにして
海に流れ出ていった
山にも川にも海にも
神が宿っていたという
でもそれは
あまりにも昔のことなので
ほんとうことは
誰にもわからない
川の水と広がる野に惹かれ
化学企業がやってきた
企業が工場を作ったおかげで
村は町になる
企業の発展が町の発展だったから
企業がなにをしても
誰も企業を悪く言わない
そして
経済的にも社会的にも
企業が町の中心になっていった
企業のなかの偉そうなヤツのせいで
海は水銀に汚染され
海で泳ぐ魚が壊れ
その魚を食べた人たちが壊れてしまった
偉そうなヤツは市長になり
企業は過去を消し
立派な公園や駅を作った
僕はそんな町に
山の方からバスで入った
空気は重く
町は変な臭いに包まれていた
工場の前の道は場違いなくらいきれいで
工場のカメラが通行人を監視している
海まで歩いて行く
道は普通の道になり
海岸の傾斜地にへばりついている漁師の家と
沖に浮かぶ小さな漁船が
なにも終わっていないと言っている
僕はここに来たことを心から悔やみ
神社に寄った
早く出て行けと
神社は言った

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