梅原猛

  • 私は近代日本のナショナリズムの多くは、この近代日本の主流思想である西欧主義の裏返しではないかと思う。
  • たとえば、明治以来の国粋主義者が提唱する天皇を神とする思想。それは、日本の誇りとも伝統ともいわれたが、そのような思想は決して有史以来、一貫して日本を貫く思想ではない。
  • 私は明治以来の日本の国家主義も、多くは外国から輸入されたものであると思う。
  • 明治以後に日本の伝統といわれるものは多く国家主義に伝統という仮の衣を被せたものにすぎない。
  • 明治政府は神と仏を引き離し、仏を殺してしまった。仏は国家によって死を命じられたが、仏の死によって、長い間仏とともに生きてきた神々までも死んでしまった。千年の間日本人が信じてきた伝統的な神と仏を殺し、かつての神仏に代えて国家と天皇を新しい神とし、日本を近代化しようとした甚だ巧妙な政策であったのである。このように国家と天皇以外の神を認めないことによって、日本はみごとに富国強兵の近代国家になったが、この神殺しは時間とともに大きくなる禍根を残した。

3 thoughts on “梅原猛

  1. shinichi Post author

    日本の伝統とは何か

    by 梅原猛

    山川草木に祈りを捧げ、聖徳太子、親鸞に日本の思想の原点を見る。日本の心とは何か、伝統とは何か。その中に梅原が長年、探し求めてきた新しい哲学創造の可能性をみる。

    Reply

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *