フジイナオキ

企業のセキュリティ問題において重要視されているのが内部からの情報漏洩。あるデータによると80%は内部の犯行だといわれている。
中小企業の多くは、その対策の必要性を感じつつも何も施していない場合が多い。対策を取りたくてもとりようがないというのが実情だろう。
そんな中注目されているのが、AOSテクノロジーズ社のスペクタープロだ。このソフトは、いわば“パソコン版監視ビデオカメラ”といえる。インストールされると、パソコンが“いつ起動したのか”、“いつどんなサイトが見られていたのか”、“誰にどのようなメールを送ったのか”、“検索しているキーワードは何か”などを完全に記録・再生するのである。さらに、そのパソコンに直接触れなくても、ネットワークに接続されていれば他のパソコンからでも操作ログを監視することできる。また、そのパソコンにインストールされていることを分からなくすることもできる。
情報漏洩対策として販売されているこのソフトだが、従業員の就業時間内での私的パソコン閲覧や私用メールなど、労務管理対策として購入するケースも多いようだ。実際、アメリカでも管理者が従業員の勤務の様子をチェックするためにも使われており、成果をあげている。
しかし問題点がないわけではない。明らかな情報漏洩はともかく、私的に利用した場合とはいえ個人のメールの内容や、閲覧したウェブサイトを“のぞき見る”ことはプライバシーの侵害ではないのか? 
その点についてAOS社では、「事前にパソコン使用者にソフトの導入について説明し、会社側がモニタリングしていることを通知しておくことが必要でしょう」と管理者のモラルに委ねている。この事前通知により一定の抑止効果も期待できるだろうが、ソフトの使用者の意図によっては新たな問題を生みかねないことを示唆している。
いずれにせよ、このソフトが導入されると、「ちょっとパソコンで一息つこう」とはいかなくなる可能性が高い。仕事中にスポーツニュースや株式情報をチェックしていることが容易に判明してしまうのだから。
ひと昔前はどこでも自由に煙草を吸うことができたが、今では吸う場所を探すことすら難しくなったのと同様に、近い将来「昔は会社でも自由にサイトを見ることができたのに……」なんて懐かしむ日が来るのかもしれない。

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