小池振一郎

5月21日、22日の2日間、ジュネーブの国連で拷問禁止委員会の第2回日本政府報告書審査が開かれた。
最終日の終了時間が近づいてきたころ、アフリカのモーリシャスの Satyabhoosun Gupt Domah 委員が、「日本の刑事司法は『中世』」とコメントした。衝撃的だった。
それまで、各委員から、取調べに弁護人の立会がないのはなぜか、と質問され、日本政府が、取調べの妨げになるからなどと答えたり、取調べ時間が制限されていないという指摘にも、誠意をもった回答をせず…というように、日本政府が不誠実な官僚答弁に終始していたから、委員たちはいらだっていた。
Domahそこで、Domah委員の「弁護人に取調べの立会がない。そのような制度だと真実でないことを真実にして、公的記録に残るのではないか。弁護人の立会が取調べに干渉するというのは説得力がない」、「司法制度の透明性の問題。ここで誤った自白等が行われるのではないか」、「有罪判決と無罪判決の比率が100対1になっている。自白に頼りすぎではないか。これは中世の名残である。こういった制度から離れていくべきである。日本の刑事手続を国際水準に合わせる必要がある」と、ズバリとメスを入れたコメントになったのだと思う。
これに対して、過敏な反応をしたのが、最後に日本政府を代表して、日本語で挨拶した上田秀明人権人道大使だった。
1831823先ほど、『中世だ』という発言があったが、日本は世界一の人権先進国だ」と開き直った。びっくりしたが、大使はあわてて、「人権先進国の一つだ」と言い直した。
これに対する会場の、声を押し殺して苦笑する雰囲気を見て感じたのか、なんと、大使は、「笑うな。シャラップ!」と叫んだ。
会場全体がびっくりして、シーンとなった。

One thought on “小池振一郎

  1. shinichi Post author

    日本の刑事司法は『中世』か

    by 小池振一郎

    http://koike-sinichiro.cocolog-nifty.com/blog/2013/05/post-99bb.html

    5月21日、22日の2日間、ジュネーブの国連で拷問禁止委員会の第2回日本政府報告書審査が開かれた。私は、日弁連の代表団の一員として、委員会を傍聴した。

    第1回日本政府報告書審査は2007年だった。このとき私は、周防監督の「それでもボクはやってない」(英語版)を自ら持参してジュネーブで上映し、委員の人たち何人かに見てもらい、素晴らしい勧告が出された。今回は、それから6年振りである。

    最終日の終了時間が近づいてきたころ、アフリカのモーリシャスのDomah委員(元判事)が、「(日本の刑事司法は)『中世』」とコメントした。衝撃的だった。

    それまで、各委員から、取調べに弁護人の立会がないのはなぜか、と質問され、日本政府が、取調べの妨げになるからなどと答えたり、取調べ時間が制限されていないという指摘にも、誠意をもった回答をせず…というように、日本政府が不誠実な官僚答弁に終始していたから、委員たちはいらだっていた。

    そこで、Domah委員の「弁護人に取調べの立会がない。そのような制度だと真実でないことを真実にして、公的記録に残るのではないか。弁護人の立会が(取調べに)干渉するというのは説得力がない…司法制度の透明性の問題。ここで誤った自白等が行われるのではないか。…有罪判決と無罪判決の比率が10対1(㊟100対1の間違い)になっている。自白に頼りすぎではないか。これは中世の名残である。こういった制度から離れていくべきである。日本の刑事手続を国際水準に合わせる必要がある。」と、ズバリとメスを入れたコメントになったのだと思う。

    これに対して、過敏な反応をしたのが、最後に日本政府を代表して、日本語で挨拶した上田人権人道大使だった。

    「先ほど、『中世だ』という発言があったが、日本は世界一の人権先進国だ」と開き直った。

    びっくりしたが、大使はあわてて、「人権先進国の一つだ」と言い直した。

    これに対する会場の、声を押し殺して苦笑する雰囲気を見て感じたのか、なんと、大使は、「笑うな。シャラップ!」と叫んだ。

    会場全体がびっくりして、シーンとなった。

    議長が慌てて、「時間がないところで、(いらいらさせて)申し訳ありません。」などと取り繕っていた。

    日本の傲慢さを目の当たりにした印象だ。アフリカの委員にまで言われたくない、という思いがあったのだろうか。戦前、このジュネーブの国際連盟で日本が脱退した時も、こんなだったのではないかと、思わず連想してしまった。

    外務省の人権人道大使でありながら、条約機関の意義(当該政府と委員会の建設的対話)を理解しているのだろうかと不安に思った。

    ちなみに、この「人権人道大使」というのは、10年前の第1次安倍内閣のときに設けられ、上田氏は2008年に任命されたようだ。

    本当は、この『中世』j発言と「シャラップ!」は新聞の1面トップに大きく報じられて然るべきだと思うのだが。

    5月31日に出される拷問禁止委員会の日本政府に対する 第2回勧告が注目される。

    Reply

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *