>麻木久仁子

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時代の変革や激動はいきなり起きるわけではない。もはや誰の目にもそれが明らかになる前に「時代」がいつ、どこで、何を準備したのか。その時々に人々は何を思い、何を守り、何を捨てたのか。日本の近代の濫觴はどこに遡るのか。鑑みて今、この時代の流れはどんな大河になろうとしているのか。なるべきなのか。今を生きる我々ひとりひとりは、どう身を処せばよいのか。
物語の登場人物たちは、やがて武士の世の矛盾が頂点に達し、体制が崩壊する日が来ることを、もちろんまだ知らない。だが実はそこかしこに「蓋」があり、開けばなにかが噴き出す予感を感じ恐れている。あるいは無意識のうちに対峙している。
成熟しきった社会の中で、その矛盾と限界がひとりひとりの生き様の中に葛藤を生んでいる時代の空気がひしひしと伝わってくる。そんな時代に生きるひとりひとりの胸の内が実に切ない。このあと、体制が崩壊していく歴史の結果を思えば、さて登はどう生きるのか。是非、続編が読みたい。

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