鈴木成子

India薄暗い中に、水を使う音、ときおりの人の声、自転車のベル、荷車をころがす音が聞こえ始める。外の明るさがますにつれて、雑多な物音が高まってくる。宿の近くにあらゆる生活用品がそろっているニューマーケットがあるので、早朝からにぎやかだ。そのかなりの騒音が神経にさわらない。屋外にある水道でバシャバシャ水浴びする音、洗濯物をバンバン打ちつける音、金属のなべかま食器がガシャガシャふれあい、それを前日の調理の残り灰でギシギシこする音、スパイスを石でゴリゴリすりつぶす音、カラスがカアカア、スズメがチュンチュン、野豚がギュガギュガ、野良犬がキャウィーンキャウィーン、ドアをバタンと閉める音、自転車のまえ・うしろ・両ハンドルに不可能な量の荷をつんだ人がひっきりなしに鳴らすチリンチリンチリンというベルの音・・・・・・。ときどき物売りの声と家の中の声がやりとりされる。学校へいく子どもたちのかん高い声がする。機械がたてる音でなく、人の日々の営みの音につつまれて、ああインドに帰ってきた、とよぶんな力がぬけていく。

One thought on “鈴木成子

  1. shinichi Post author

    まるごとインドな男と結婚したら

    by 鈴木成子

    優しいはずなのに共同生活者としての誠意に欠ける、生活力のない男。インド人男性と結婚し、インドで出産・子育てをした日本人女性の一瞬の休む間もないトラブル人生。なのになぜか悲壮感がない!安定が当たり前だった時代に、こんなに不安定な人生がアリだったとは!ダイナミックでまっすぐな著者の生き方に、むしろパワーがわいてくる!

    生活者ならではの定点的な視点で、インドの<ふつうの人びと>の多様な日常や風景が情緒豊かに展開される描かれるエッセイ。

    ヒンドゥーの神話が根底に流れるインドの暮らしの風情も繊細に描写。

    「善いも悪いも生も死も、あるがまま。来るものを拒まず、去るものを追わず。時間は時計やカレンダーではなく天体の動きと共にゆっくりと流れる。人と違うのはあたりまえ。目に映るものが変化に富んでいて、一日中ぼうっとしていても飽きない一方で、想像力が刺激される国」

    Reply

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *