吉田嘉七

汝が兄はここを墓とし定むれば
はろばろと離れたる国なれど
妹よ、遠しとは汝は思うまじ。
さらば告げん、この島は海のはて
極まれば燃ゆべき花も無し。
山青くよみの色、海青くよみのいろ。
火を噴けど、しかすがに青褪めし、
ここにして秘められし憤り。
のちの世に掘り出なば、汝は知らん、
あざやかに紅の血のいろを。
妹よ、汝が兄の胸の血のいろを。

2 thoughts on “吉田嘉七

  1. shinichi Post author

    8・15と3・11―戦後史の死角 by 笠井潔

    ここにあるのは仏教渡来以前、古代天皇制以前の縄文期にまで遡るだろう、日本列島住民のアニミズム的心性だ。山や海など、自然界のあらゆるものが黄泉に通じ、あるいは万物に霊が宿るとする考え方である。かつてのアニミズム的心性が、そのままの形で残っているとはいえないにしても。

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