岩崎久美子

インターネットの情報検索の迅速さと情報量の多さは、興味・関心の増加や視野の広がり、知識量の増加をもたらした。しかし、自分が情報に翻弄されないためには、重みづけのない、一方的に提供される細分化された情報に対して、情報の選別や自分で情報をつなぐ技能が求められる。情報の取捨選択の優劣づけは、ある程度情報検索に習熟すると、経験的に可能なものとも言えるが、明らかに本や雑誌による情報検索とは異なる選別能力が必要となろう。
どのような情報が正しく必要な情報か、電子メールによる手紙の真意は何か、情報が溢れる中で、職場や生活でますますリテラシーが求められていると言えるのである。
つまり、個人に求められるメディア・リテラシーとは、身体から発する言語、表情、手触り、雰囲気といった感覚的なもの、経験や体験による知恵、そのような自分の内部にある力を総動員して、自分で情報を判断することにほかならない。そのためには、情報を統制する責任ある自己の確立が前提なのである。
メディアを介して、われわれは、労働のための時間と場所の拘束から解放され、また、その生活は、今後さらに効率的、合理的になっていくであろう。しかしながら、同時に喪失されつつある人間同士の触れ合い、情報やものをひとつひとつ時間をかけて見出す地道な作業といったものが、便利さを享受する前提として、一層認識されなければならないのである。

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