「研究不正」とは、研究者等が研究活動を行う場合における次の各号に掲げる行為をいう。ただし、悪意のない間違い及び意見の相違は含まないものとする。
(1) 捏造 データや研究結果を作り上げ、これを記録または報告すること
(2) 改ざん 研究資料、試料、機器、過程に操作を加え、データや研究結果の変更や省略により、研究活動によって得られた結果等を真正でないものに加工すること
(3) 盗用 他人の考え、作業内容、研究結果や文章を、適切な引用表記をせずに使用すること
「研究不正」とは、研究者等が研究活動を行う場合における次の各号に掲げる行為をいう。ただし、悪意のない間違い及び意見の相違は含まないものとする。
(1) 捏造 データや研究結果を作り上げ、これを記録または報告すること
(2) 改ざん 研究資料、試料、機器、過程に操作を加え、データや研究結果の変更や省略により、研究活動によって得られた結果等を真正でないものに加工すること
(3) 盗用 他人の考え、作業内容、研究結果や文章を、適切な引用表記をせずに使用すること
「科学研究上の不正行為の防止等に関する規程」
(理化学研究所の内規)
第2条2項
この規定において、「研究不正」とは、研究者等が研究活動を行う場合における次の各号に掲げる行為をいう。ただし、悪意のない間違い及び意見の相違は含まないものとする。
(1)捏造 データや研究結果を作り上げ、これを記録または報告すること
(2)改ざん 研究資料、試料、機器、過程に操作を加え、データや研究結果の変更や省略により、研究活動によって得られた結果等を真正でないものに加工すること
(3)盗用 他人の考え、作業内容、研究結果や文章を、適切な引用表記をせずに使用すること
ウィキペディア
捏造 捏造とは、実際になかったことを事実のように仕立て上げること。
改竄 改竄は、文書、記録等の全部又は一部が、故意もしくは過失により、本来なされるべきでない時期に、本来なされるべきでない形式、内容に変更されることをいう。悪意の有無を問わない。
盗用 (項目なし)
goo辞書
捏造 事実でないことを事実のようにこしらえること。
改竄 文書などの字句を直すこと。特に、悪用するために、勝手に直すこと。
盗用 他人の所有になるものを無断で使用すること。
平成26年4月8日
独立行政法人理化学研究所 御中
申立人 小 保 方 晴 子
申立代理人
弁護士 三 木 秀 夫
弁護士 室 谷 和 彦
弁護士 片 山 登 志 子
弁護士 藪 野 恒 明
不服申立書
申立人は、平成26年3月31日付け「研究論文の疑義に関する調査報告書」について不服であるから、独立行政法人理化学研究所に対し、不服申立を行う。
<申立の趣旨>
1 研究論文の疑義に関する調査委員会作成にかかる「研究論文の疑義に関する調査報告書」のうち、調査対象項目(1―2)、(1―5)についての調査結果・評価及びまとめについて、再調査を行うことを求める。
2 申立人は、調査対象項目(1―2)、(1―5)について、研究不正を行っていないとの認定及び報告を求める。
<申立の理由>
第1 総論
1 調査の対象
(1)本規程に基づく調査の必要性
「科学研究上の不正行為の防止等に関する規程」(以下、「本規程」という。)第16条は、「調査委員会は、……次の各号に掲げる事項の認定を行うとともに、当該調査の結果をまとめ研究所に報告する。(1)研究不正が行われたか否か、(2)研究不正が行われたと認定したときは、その内容、研究不正に関与した者とその度合、研究不正と認定された研究に係る論文等の各著者の当該論文等及び当該研究における役割(3)研究不正が行われなかったと認定したときは、通報者の悪意に基づくものであったか否か」と規定している。
すなわち、調査委員会は、何よりも、「研究不正」が行われたか否かについて認定しなければならない。
そして、ここでいう「研究不正」とは、本規程2条2項に掲げる行為をいう。
第2条2項
この規程において、「研究不正」とは、研究者等が研究活動を行う場合における次の各号に掲げる行為をいう。ただし、悪意のない間違い及び意見の相違は含まないものとする。
(1)捏造ねつぞう データや研究結果を作り上げ、これを記録または報告すること
(2)改ざん 研究資料、試料、機器、過程に操作を加え、データや研究結果の変更や省略により、研究活動によって得られた結果等を真正でないものに加工すること
(3)盗用 他人の考え、作業内容、研究結果や文章を、適切な引用表記をせずに使用すること
そうすると、調査委員会は、申立人の行為が本規程2条2項の「研究不正」にあたるか否かを、認定・判断をしなければならないことになる。
(2)本報告書について
「研究論文の疑義に関する調査報告書」(以下「本報告書」という。)においては、第2以下に詳述するとおり、本規程2条2項の「研究不正」にあたるか否かについて、その要件に該当するかという観点から認定するものではなく、第2条2項の定義とは別の次元で、「研究不正」と結論づけるものであって、妥当でない。
すなわち、(1―2)については、もともと、「研究活動によって得られた結果等を真正でないものに加工する」という行為態様がなく、「改ざん」が疑われる事案ではなく、論文への掲載方法が適切か否かの問題にすぎないのに、これらを混同して研究不正の認定を行っている点で妥当でない。
また、(1―5)についても、「存在しないデータや研究結果を作り上げ」るという行為態様がなく、「捏造」が疑われる事案ではなく、論文に掲載する時点で、誤った画像を掲載してしまったという問題にすぎないのに、これらを混同して研究不正の認定を行っている点で妥当でない。
2 手続保証について
(1)証拠に基づく合理的理由に基づいた判断の必要性
調査報告書において「研究不正」と判断されたならば、被通報者(申立人)は多大な不利益を受ける。
それゆえ、調査委員会が判断をなすにあたっては、合理的理由に基づいて判断されなければならず、恣意しい的判断は許されない。
合理的理由に基づいた判断がなされるためには、〈1〉その前提となる事実について証拠に基づいた認定が必要であり、〈2〉自然法則、論理則、経験則に合致した認定・判断がなされなければならない。
本件報告書の(1―5)についての認定・判断は、〈1〉重要な証拠を看過してなされたものであり、また、〈2〉経験則に反するものであり、合理的理由に基づくものではない。
(2)弁解と防御の機会の不十分
また、不利益を受ける者に対しては、弁解と防御の機会が、十分に与えられなければならない。どのような点が問題視されており、どのような不利益判断がなされるのかについて告知がなされ、それに対して、防御の機会が与えられないと、不意打ち的に不利益を受けるおそれがある。
本規程第15条3項にも「調査においては、被通報者に対して弁明の機会を与えなければならない」と規定されている。
本件において、申立人への聴取が不十分であったことは明らかである。
何より、中間報告書の作成(3月13日)から本報告書の作成(3月31日)まで、約2週間という短期間の調査であることに加え、申立人に対し1回の聞き取りがあっただけである(なお、この聞き取りとは別に、資料の確認の機会が1回あった)。
さらに、(1―2)についていえば、申立人によるレーン挿入の手順を正確に聞き取ることなく、調査委員会が独自に検証して(結果的には異なる手順を検討している。)判断をしてしまっている。
(1―5)についても、申立人が使用したであろう画像がどのような状態で保管されていたのかについて、充実した聞き取りはなされず、調査委員会が独自にPDF画像を解析して、安直に学位論文の画像を切り貼りしたと推測しているのである。
このように、本件調査は、あまりにも短期間になされたものであり(本規程第16条では、調査の開始後概おおむね150日と規定されている)、なすべき調査を行うことなく、そして、申立人への反論の機会を十分に与えることなくなされたものであり、その結果、調査委員会は、自らの検証や解析を盲信して、判断を誤ったものと考えられる。
3 再調査について
(1)再調査の必要性
本件調査の結果については、申立人に多大な利害関係があるだけでなく、国内はもちろん国外からも注目されていることからすれば、上記のような不十分な調査により、結論を断ずることは許されない。
再調査を行い、十分な手続保証のもと、丁寧な調査がなされなければならない。
(2)再調査における調査委員会の構成
再調査にあたっては、公正な判断がなされる必要から、本調査を行った委員以外の者により構成されなければならない。判断する主体が同一であれば、自らの判断を正当化せんとするあまり、偏った見方をするおそれがあり、その結果、公正を害するおそれがあるからである。
また、本件では、一見すると科学的な紛争のようにも見えるが、現実には、〈1〉本規程についての解釈、〈2〉規程の要件に該当する行為があったといえるか否かの認定が中心であり、科学的部分について先鋭な争いがあるわけではない。
とすれば、新たに調査委員を選任するにあたっては、少なくとも半数は、上記のような法的思考について熟練した者(元裁判官、元検察官、弁護士)が適任であるものと思料する。
また、科学的見地からの検討のために、研究者をその構成に加えるとしても、STAP細胞発見と利害関係のある研究者(同様の研究を行っている者、予算の配分上利害のある者など)は排除されなければならない。
さらに、理化学研究所内部の研究者が調査委員に入るならば、外部から見ると、派閥争いやトカゲのしっぽ切りなど、様々な憶測が生じることからすれば、全構成員につき外部の委員に委ねるのが妥当であるものと思料する。
第2(1―2)レーン3の挿入
論文1:Figure1iの電気泳動像においてレーン3が挿入されているように見える点。
1 事案の特殊性
本件は、電気泳動ゲルを撮影した画像(ゲル1、ゲル2写真 資料1)が、厳然と存在する点で、通常の「改ざん」が疑われる事案と異なる特殊な事案である。
すなわち、「改ざん」は、良好な結果を示すデータが存在しないにも関わらず、良好な結果を示すデータが存在するように見せかけるために、データについて変更や省略を行うものである。そのような行為は、研究の成果がなかったのにあったかのように偽装することから「研究不正」とされるのである。
そのため、「改ざん」が行われた場合、良好な結果を示すデータは実在しておらず、現に存在するデータは架空のものである。言い換えれば、良好な結果を示す架空のデータを作出することに「改ざん」の本質がある。
ところが、本件では、良好な結果を示すデータが現に存在するのである。
良好な結果を示すデータが現に存在する以上、良好な結果を示す架空のデータを作出したのではないことは、明らかである。とすれば、そもそも「研究不正」にあたる「改ざん」が疑われる事案ではないのである。
2 「改ざん」の定義
次に、より厳密に、「改ざん」の定義にさかのぼって検討する。
本規程2条2項2号において、「改ざん」とは、「研究資料、試料、機器、過程に操作を加え、データや研究結果の変更や省略により、研究活動によって得られた結果等を真正でないものに加工すること」と定義づけられている。
ここで、「真正でない」とは、虚偽と同義であり、「真正でないものに加工する」とは、虚偽のものに加工するということである。そして、その虚偽のものに加工する対象は「研究活動によって得られた結果等」であって、「研究資料、試料、機器、過程」や「データや研究結果」ではない。
いいかえると、「研究資料、試料、機器、過程に操作が加え」られ、「データや研究結果の変更や省略」が行われても、そのために「研究活動によって得られた結果等」が虚偽のものに加工されたのではない場合には、「改ざん」ではない。
3 本件における「研究活動によって得られた結果等」
そこで、本件における「研究活動によって得られた結果等」について検討する。
(1)パルスフィールド電気泳動を行った意味
T細胞が成熟していく過程では、DNAが短くなるという現象が見られる。そこで、成熟したT細胞が含まれているか否か(T細胞受容体再構成が生じた細胞が含まれているか否か)、すなわち、DNAが短くなるという現象が生じているか否かを「sorted―Oct4+」について見られるかを実証するためにパルスフィールド電気泳動を行った。
(2)得られた結果
パルスフィールド電気泳動によって得られた画像データは、ゲル1、ゲル2の写真(資料1)のとおりであり、この研究活動から得られたのは、「sorted―Oct4+」について、「DNAが短くなった、すなわち、T細胞受容体再構成がおこった細胞が含まれているという結果」である。
4 本件において「真正でないものに加工」されたか
上記の結果は、ゲル1、ゲル2の写真により実証されており、真正なもの(ホンモノの結果)として維持されている。
申立人が、論文1に掲載するにあたり、画像を見やすいように、このゲル1写真、ゲル2写真に操作を加えたからといって(ポジティブコントロールを見やすいものにする操作を加えたからといって)、この「DNAが短くなった、すなわち、T細胞受容体再構成がおこった細胞が含まれているという結果」自体は、何らの影響も受けない。
事実は事実として厳然と存在するのである。
このように、申立人の行為は、「研究活動によって得られた結果等」を虚偽にするわけでも、ニセモノにするわけでもなく、すなわち、「真正でないものに加工する」ものではない。
発表の仕方が不適切であるからといって、研究活動によって得られた結果が虚偽になるわけではない。
5 「改ざん」にはあたらない
このように、申立人の行為は、「改ざん」の本質からしても、また、本規程の定義からしても、「改ざん」にあたるものではない。
報告書の認定・判断は、本件事案の特殊性を看過するとともに、本規程の「改ざん」の定義を基準に判断したものではなく、誤りである。
上記のとおり、「改ざん」にあたらないことは疑いないが、さらに、報告書の認定・判断は、下記に述べる点について誤りがあるため、これを指摘しておく。
6 報告書の調査結果
(1)問題点
本報告書3頁21行目以下に、この点についての調査結果が記載されている。
申立人が、画像を見やすくするために、ゲル1写真のレーン3にゲル2写真のレーン1を挿入し、挿入にあたり両写真の大きさを縦方向に調整し、また、ゲル2写真のレーン1についてコントラスト調整を行った点については、申立人自身が説明したとおりであり、誤りはない(厳密には、本報告書では、ゲル1写真を拡大したと認定するが、申立人は、ゲル2写真を縮小している)。また、申立人による挿入位置の説明についても、誤りはない。
しかし、レーン3の位置決めについて、調査委員会が検証を行い、その結果、申立人の「説明を裏付けることはできなかった」とする点は、是認できない。
(2)調査委員会の認定
本報告書(4頁2行目)では、「検証の結果、ゲル1とゲル2の間には、標準DNAサイズマーカーの対数値と泳動距離について直線性の保持は見られず、説明どおりに標準DNAサイズマーカーの位置情報に基づいてレーン3を配置することが無理である」として、ズレが生じているという評価を行っている。
(3)申立人の行為
しかし、当該画像の意味からすれば、注目されるのは、ジャームラインバンドの下方から伸びる再構成DNAバンドの領域である。いいかえると、ジャームラインバンドよりも上方も、また、再構成DNAバンド領域よりも下方(分子量が小さい)も、当該画像においては注目するものではない。
そのため、申立人が、標準DNAサイズマーカーの位置情報に基づいてレーン3を配置するにあたっては、上記の注目すべき領域(ジャームラインバンドの下方から伸びる再構成DNAバンドの領域)において、ゲル1写真とゲル2の標準DNAサイズマーカーの位置が一致するように配置した(資料2)。
より具体的には、申立人は、ゲル1写真とゲル2写真の標準DNAサイズマーカーのバンドの位置を一致させるために、ゲル2写真の高さを約80%に縮小した。次に、ゲル2の写真は、左方向に約2度傾いているため、これを修正するために、ゲル2写真を2度右方向に回転した。これにより、ゲル1写真とゲル2写真の標準DNAサイズマーカーのバンドの位置は、ことごとく一致することを確認した。
この状態からトリミングを行い、Figure1iの画像を作成した。
このようにして作成した画像は、泳動度やDNAサイズの科学的な関係性を崩すものではない。
また、ゲル2写真のレーン1画像を、挿入するまえに、申立人は、コントラストを調整した。この画像が示すものは、定量ではなく定性的な事実を示すものなので、コントラストを調整しても、結果に影響はない。
申立人としては、ゲル1写真では、バンドの様子が見えにくいと感じたので、見やすくするように、上記の操作を行ったのである。
(4)位置ズレは生じない
上記のようにして、レーンの挿入をすると、バンドのズレは生じない。
調査委員会の検証においてズレが生じたのは、2度の傾きの補正を行わなかったことによるものと思料する。
調査委員会が、申立人に対して、具体的な挿入手順について積極的なヒアリングを行い、弁明の機会を与えたならば、申立人は「2度の傾きの補正」を説明できたにもかかわらず、その機会を与えられないまま、ズレが生じると決めつけられたものである。
(5)小括
以上のとおり、ズレが生じることを前提とした調査委員会の評価は、正確ではないものと思料する。
申立人としては、再調査において上記の点を確認いただいたうえ、研究不正がなかったとの結論を求める次第である。
7 科学的見地からの掲載方法について
申立人は、投稿論文へのゲル写真の適切な掲載法について教育を受ける機会に恵まれず、また、ネイチャーの投稿規定も知らずに、見やすいようにするために、上記レーン3の挿入を行った。(なお、ネイチャーの投稿規定を確認したところ、論文1におけるFigure1iの掲載方法は、必ずしも規定に反していると断定することはできない)
この点については、申立人は、結果的に表示方法において不適切な面があったが、本来ない解釈や間違った結論を導くものではない。しかし、表示法が不適切だったことを反省し、訂正の原稿をネイチャーに提出している。
第3 (1―5)画像取り違えについて
笹井、小保方両氏から、以下の修正すべき点が見つかったとの申し出を受け、この点についても調査した。論文1:Figure2d、2eにおいて画像の取り違えがあった点。また、これらの画像が小保方氏の学位論文に掲載された画像と酷似する点。
1 画像の整理
本件では、下記の画像が問題となっているところ、以下では、説明の便宜上、次のように表示することとする。
画像A1 学位論文の画像
骨髄の造血系細胞から作成したSTAP細胞(当時は、sphereと呼称)を用いた画像。
画像A2 パワーポイント資料(資料4)に掲載された画像
学位論文に用いられた画像A1をパワーポイント資料に掲載するにあたり、文字の色や位置関係を調整した画像。
パワーポイント資料は、2011年11月24日、若山教授、バカンティ教授に報告するための資料として作成した(当時、申立人は、ハーバード大学研究員、理化学研究所客員研究員であった)。この当時は、申立人は、ストレストリートメントという観点から研究を進めていた。そのため、この資料では、酸による刺激、ガラスピペットによる物理的刺激を含め、刺激により幹細胞化することが示されている。また、用いる細胞も、骨髄細胞や、脾臓(ひぞう)由来細胞など様々な細胞からSTAP細胞が作成できることを示している。
資料4のP6Figure4Cに、画像A2がsphere細胞からの奇形種形成の免疫染色データ画像として掲載されている。当時、STAP細胞は、sphereと呼んでいた。
その後、共同研究者によるラボミーティングのために、何度も、バージョンアップされている。
画像B マウス脾臓由来細胞を酸処理により得られたSTAP細胞からの画像
実験中に撮影したマウス脾臓由来細胞を酸処理することにより得られたSTAP細胞からの奇形種形成の免疫染色データの画像。2012年6月9日に撮影されたが、フォルダの日付は7月となっている。
画像C 撮り直し画像
HE染色に使用したサンプルと同じ切片から取り出したサンプルから、2014年2月19日に、再度、画像を撮影した。これは、データの正確性を確保する目的で、念のため撮影したものである。
画像A1の元データ及び画像Bとともに、調査委員会に提出している。
2 捏造が疑われる事案ではない
(1)「捏造」とは
一般的意味では、「捏造」とは、「事実でない事を事実のようにこしらえていうこと」である(広辞苑 第五版P2068)。
そして、本規程では、「捏造」とは、「データや研究結果を作り上げ、これを記録または報告すること」と規定されている。ここで、「作り上げ」とは、存在しないものを存在するように作り上げることを意味する。「作り上げる」が単に作成、製作するという意味であるなら、すべての研究活動が「捏造」に該当することになり不当であるからである。
それゆえ、「捏造」とは、「存在しないデータや研究結果を作り上げ、これを記録または報告すること」と解釈されなければならない。
なお、平成18年8月8日付け「研究活動の不正行為への対応のガイドラインについて」と題する文書(科学技術・学術審議会 研究不正行為に関する特別委員会)によれば、ガイドラインでは、捏造は「存在しないデータ、研究結果等を作成すること。」となっている(資料3)。
(2)本件事案
本件では、論文1のFigure2d、2eの画像について、画像の取り違えがあった。
すなわち、掲載すべきであった画像B(脾臓の造血系細胞から作製したSTAP細胞を用いた画像)と異なる画像A2(骨髄の造血系細胞から作製したSTAP細胞を用いた画像)が、論文1に掲載された。
掲載すべき画像Bは、現に存在しており、調査委員会に提出されている。
(3)本来的に捏造ではない
本件では、掲載すべき画像Bが存在している以上、「事実でない事を事実のようにこしらえ」る行為はなく、「存在しないデータや研究結果を作り上げ」た行為も存在しないことは明らかである。
それゆえ、申立人が、論文掲載にあたり、画像の取り違えがあったことは、本来的に「捏造」にあたるものではない。
(4)不適切な表現と研究不正は別次元
論文による公表において、不適切な表現・掲載があったにすぎないものであり、この点は、申立人も深く反省するところであるが、そのことと、研究不正の問題とは次元を異にするものである。
2 悪意のない間違い
次に、その画像の取り違えが、悪意によるものか、過失に基づくものかを検討する。(本来的に捏造にあたらないから、悪意によらない間違いであるか否かを検討する必要はない。念のために論じているにすぎない。)
この点においても、そもそも、掲載すべき画像Bが存在する以上、「掲載した画像が、掲載すべき画像Bと異なる画像A2であること」を知りながら、あえて掲載する必要は全くない。そのようなことをすべき動機が全くないのである。
申立人の画像取り違えが、悪意によることは経験則上ありえない。
3 調査報告書の調査結果の誤り
(1)申立人の勘違いの対象
本報告書7頁7行目以下には、「小保方氏は、この条件の違いを十分に認識しておらず、単純に間違えて使用してしまったと説明した。」との記載がある。
しかし、申立人が説明した内容は、論文1に掲載した画像を、酸処理による実験で得られた画像である画像Bと認識して掲載したものであるという説明であり、換言すれば、「異なる画像を誤って掲載した」旨を説明したにすぎない。
実験条件の違いを勘違いしたのではなく、画像そのものについて勘違いしたのである。
(2)論文1の画像
本報告書7頁9行目以下には、「論文1の画像を解析すると学位論文と似た配置の図から画像をコピーして使用したことが認められた。」との記載がある。
また、本報告書7頁の下から10行目以下には、「また、論文1の画像には、学位論文と似た配置の図から切り取った跡が見えることから、この明らかな実験条件の違いを認識せずに切り貼り操作を経て論文1の図を作成したとの小保方氏の説明に納得することは困難である。」との記載がある。
このようなことからすれば、本報告書では、論文に掲載された画像が、学位論文の画像A1とは配置等が異なることから、「学位論文から切り貼りしたはずだ」という推論をもとに、申立人の説明を虚偽と認定しているようである。
しかし、上記推論は、誤りである。
(3)申立人からの聴取
申立人代理人が、申立人から聴取したところによれば、論文に掲載された画像は、共同研究者間で行われるラボミーティングに用いられるパワーポイントの資料に掲載した画像A2を使用したものであり、学位論文に用いられた画像Alから切り貼りしたものではないことが確認された。
そして、パワーポイントの資料には、論文に掲載された画像の元になった画像A2が掲載されていることを確認した(資料4)。
この画像A2をもとに、ネイチャー仕様のフォントにするためにキャプションを付け直したものが、論文1に用いられている画像である。
なお、パワーポイントの資料は、2011年11月24日以降、何度もバージョンアップがなされているところ、論文に掲載した画像が、どのバージョンのパワーポイント資料から使用されたかについては、特定できていない。
(4)調査委員会の調査は不十分
調査委員会は、独自に論文1の画像を解析し、学位論文の画像A1と論文1の画像が配置や文字の色が異なることを検討している(スライドP14~16)。
調査委員会が、このような解析をなし、「異なる画像を誤って掲載した」という申立人の説明に疑問を持つに到ったのであれば、改めて、論文の画像は、どのように加工したのか、あるいは、どのような状態で保管していた画像を使用したのかについて、申立人に確認を取るべきであった。
申立人としても、調査委員会から、そのような質問を受けていたならば、パワーポイントの資料に掲載された画像を使用したことを説明できたのである。
申立人に対し、反論の機会を与えることもせず、安易に「学位論文から切り貼りしたはずだ」と決めつけたことは、調査委員会の調査が不十分であるとともに手続保証の観点からも問題があると言わざるをえない。
なお、申立人代理人らは、調査委員会がどのような調査を行ったのかを確認するため、平成26年4月3日、聴取にあたってなされたヒアリングの報告書等について開示を求めたが、翌4日に、理化学研究所から「開示は差し控えさせていただくことになりました」との回答を受けている。
4 調査報告書の評価(見解)について
(1)過失の可能性と悪意の評価について
本報告書7頁の下から16行目には、「データの管理が極めてずさんに行われていたことがうかがえ、由来の不確実なデータを科学的な検証と追跡ができない状態のまま投稿論文に使用した可能性もある。」との記載がある。科学的な検証と追跡ができないか否かは別にして、調査委員会も「過失」により異なる画像を使用した「可能性」を認めている。
ところが、主に〈1〉実験条件の違いを認識していたはずであること、〈2〉学位論文と似た配置の図から切り取った跡が見えること、を根拠に「小保方氏によってなされた行為はデータの信頼性を根本から壊すものであり、その危険性を認識しながらなされたものであると言わざるを得ない。よって、捏造に当たる研究不正と判断した(7頁の下から7行目)」としている。
しかし、〈1〉については、申立人は、実験条件の違いを勘違いしたのではなく、画像そのものについて勘違いしたのであって、勘違いの対象がずれている。
また、〈2〉については、先に述べたように、申立人は、ラボミーティング用のパワーポイント資料の画像を、誤って、使用したのであり、論文1の掲載にあたり、学位論文の画像を切り貼りしたことはない。
さらに、結論を導くにあたり、「小保方氏によってなされた行為はデータの信頼性を根本から壊すものであり、その危険性を認識しながらなされたものであると言わざるを得ない。」としているが、画像B及びCが存在する以上、「データの信頼性を根本から壊すもの」でないことは明らかである。
このように、調査委員会の「捏造に当たる」との判断には、何らの合理的根拠も存しない。
(2)重要な事実の欠落
また、観点を変えると、本報告書の判断は、重要な事実が判断の前提とされていない。
すなわち、〈1〉2012年6月に撮影された画像Bが存在すること、〈2〉この画像取り違えは、申立人自らが発見して、自ら申告したものであるという点、〈3〉共同執筆者全員から、2014年3月9日、ネイチャーに対して、訂正原稿を提出しており、その際、画像Cを提出していることは、極めて重要な事実である。
これらの事実は、再調査にあたり、重要な事実として、判断の前提とされなければならない。
〈1〉画像Bが存在する以上、故意に異なる画像を掲載する必要はなく、〈2〉故意に異なる画像を掲載したのであれば、自ら報告するのは不自然であり、〈3〉また、故意に異なる画像を掲載したのであれば、ネイチャーに訂正原稿を提出したりしないはずだからである。
これらの事実からすれば、「画像を誤って取り違えた。異なる画像を故意に掲載したものではない。」と認定するほかないのである。
5 再調査において調査されるべき対象
上記のとおり、本件において、画像Bが存在する以上、本来的に「捏造」が問題となる事案ではない。
また、画像Bと画像A2とを、どのようにとり違えたのか、その具体的態様を特定することに意味はない。申立人が、過失で誤っているのであれば、どの過程でどのように誤ったかについて明確な認識はないはずであり、特定することは困難であるだけでなく、もともと捏造にあたらないのに、時間と労力をかけてこれを調査する必要もないからである。
再調査において調査の対象となるべきは、現に存在する画像B、C(調査委員会にも提出されている)が、生後1週齢のマウス脾臓由来の細胞を酸処理することにより得られたSTAP細胞が用いられた分化細胞及びテラトーマの免疫染色データの画像であることの確認である。
6 最後に
申立人によるデータ管理が十分に整理されていなかったこと、画像の由来を元データにあたって確認しなかったことが、画像の取り違えにつながったことは事実であり、この点については、申立人も深く反省するところである。
しかし、上述のとおり、調査委員会が行った調査は不十分であり、そして、その結論は誤りであるものと思料する。
再調査を求めるとともに、再調査においては、申立人から十分な聞き取りを行ったうえ、反論の機会を与え、証拠に基づいた(推測によるものでない)認定判断がなされることを強く希望する。
以上
(sk)
小保方さんの STEP 細胞の件。「実験は行われた」という。そして、「データは存在した」という。
ロジックは、
というもの。
ということなのだろう。
論文の書き方の上手い研究者が集まって、倫理ばかりが強調されれば、すべての可能性は消えてしまう。
ひどい論文の例をひとつだけ。Edsger Wybe Dijkstra (EWD) の論文。それは、お世辞にも上手く書けているとはいえなかったし、どんなルールも守っていなかったし、だいいち手書きだったし、ほんとうにひどいものだった。それでもきちっとした論文よりずっと素晴らしく、どの論文もコンピュータ・サイエンスの発達に大いに貢献した。論文が上手くかけて、倫理観を持っていればそれでいいなどと考えるのは、絶対に間違っている。
医学の不正といえば、Ranjit Chandra のことが思い出されるが、分野を問わず、不正は後をたたない。Woo-suk Hwang の人間のクローンなど、これはひどいと話題になったものだけでも、かなりの数になる。
特に印象に残っているのは、2002年にベル研究所で起きた Jan Hendrik Schön の事件だ。分子レベルでのトランジスタを始め、さまざまな発表がなされ、結局のところ、それはすべて、「データの捏造」、「データの現実的でないぴったり加減」、「知られてきた物理学との矛盾」ということで、「不正」と結論づけられた。Hendrik Schön は、学位を取り上げられ、今はアカデミックの世界から離れて暮らしている。
そうかと思えば、Rosalind Franklin の「DNA の螺旋構造」の発見を盗んで有名になり、ノーベル賞まで取って、ずっと一流を通した James Watson のような研究者もいる。
小保方さんは、Hendrik Schön ではない。James Watson でもない。もちろん、Ranjit Chandra や Woo-suk Hwang のような人ではない。
小保方さんがこれから、社会からどんな扱いを受けていくのかは、誰にもわからない。でも、こういう人をひとりひとり潰していくのが日本の社会なのだとしたら、それはなんて悲しいことだろうと、そんなふうに思う。