珠寶

日本のいけばなは、野山や水辺に出生する天然の姿を、花や枝葉を用いて表現します。そこには、少しの我意を交えることなく、水際はすっきりと、清清しく生けることを大事にします。 。。。
生花は百瓶あれば、それぞれ百花の表情に違いがあります。山に生育する物、水辺に生育する物の自然の出生を考えて、花瓶の口から立ち現れる生命の「水際」をはっきりと美しく整えます。 。。。
義政公の時代に、座敷を飾る掛物や道具の分類、目的に合わせた座敷の飾り様が定められました。座敷飾りの中の一つであった「花」も、「飾りの次第」を基に約束事が定められていきました。また、草木の元来持って生まれた姿によって「草木の上中下」の分類がなされ、飾る目的に関係して道具や花の姿は、後に「真・行・草」という言葉で区別されていきました。 。。。
たとえ、晩学であっても、深い志を持つ人は、すすんで自らの未熟さを知り、そしてその情理がひとつ明らかになれば、またあしたを望む。修路は果てなく続いています。余分な枝葉を切り取って、枝や花葉がその本来の美しい姿を見せるように、人間もまず自分自身の心についた余分なものを取り除き、素直な美しい姿になってはいかがでしょう。

2 thoughts on “珠寶

  1. shinichi Post author

    shuhou慈照寺の花

    by 珠寶

    http://www.ginkakuji.jp/flower/


    日本のいけばなは、野山や水辺に出生する天然の姿を、花や枝葉を用いて表現します。そこには、少しの我意を交えることなく、水際はすっきりと、清清しく生けることを大事にします。このように生けられた花の姿は、優美で趣のある、真に正しい風体だと誇れるのです。

    昔から花の道に心をよせる人は、心に良いと思う花材を手にしたら、わずかな一枝一花からも、造化自然の無限の姿を感じて、手早く花瓶にうつす教養を楽しみとし、習い事としてきました。和歌の道を志す人も、「目に見えない心の働きよりも、ただ美しい花にのみ目を映し、言葉の技巧を尊重したものは、森に朽ち葉が積もるように、ただ文字が集まっただけのつまらない和歌である。」と言っています。花の道もまた、技法を定める以前に、人間と同じ生命をもつ、個性をもつ草木と向き合い、根本的な自然を賞することを忘れてしまっては、ただ花を切って花瓶に挿すだけの虚しい行為となってしまうでしょう。

    生花は百瓶あれば、それぞれ百花の表情に違いがあります。山に生育する物、水辺に生育する物の自然の出生を考えて、花瓶の口から立ち現れる生命の「水際」をはっきりと美しく整えます。草木を一本一本自立させるためには、花瓶の中の見えないところに一番心を注ぎます。そして、それぞれの草木が持っている天然の姿を生かして、立ち伸びる性質のものは天をのぞむような姿に、また横になびきしだれる枝はそのような出生の姿を尊重します。また草木は、環境次第で素直に成長できずに痛み曲がった姿になることもあります。そのような形姿をも慈しむ気持ちが日常にあるなら、どんなに平和な社会になるでしょう。さらに「花を生ける、花を愛でる」喜び、楽しみは深まっていきます。

    義政公の時代に、座敷を飾る掛物や道具の分類、目的に合わせた座敷の飾り様が義政公の側近であった能阿弥、相阿弥らによって定められました。これを『君台観左右帳記(くんだいかんそうちょうき)』と言い、座敷飾りの中の一つであった「花」も、『君台観左右帳記』にある「飾りの次第」を基に約束事が定められていきました。また、草木の元来持って生まれた姿によって「草木の上中下」の分類がなされ、飾る目的に関係して道具や花の姿は、後に「真・行・草」という言葉で区別されていきました。

    このように理論や技法はその時の宗匠たちによって工夫され、その時代時代にいくつも変化してきましたが、いつの世も変わることなく大事なことは、その理と術を修める人の胸の覚悟でありました。天地の恵みによって成長する草木は、毎年四季をまちがえることはありません。人の心も、そのように機に応じて現れるのですから、心の発露は草木花にならい、自然に任せることが出来てこそ、はじめて「まことの花」のおもしろさを知ることになるのでしょう。

    たとえ、晩学であっても、深い志を持つ人は、すすんで自らの未熟さを知り、そしてその情理がひとつ明らかになれば、またあしたを望む。修路は果てなく続いています。余分な枝葉を切り取って、枝や花葉がその本来の美しい姿を見せるように、人間もまず自分自身の心についた余分なものを取り除き、素直な美しい姿になってはいかがでしょう。

    求める道は、遠いようで、案外近いところに存在します。これが、日本のいけばなの理というものです。

    Reply

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *