妹尾堅一郎

(鴻海が次世代有機ディスプレイに次の一手をかけているわけだが、そこで選んだのが日本技術者チーム。日本の技術が9割を占める可能性のある開発が、今、鴻海で進められている)
実は、前から、こういう状況になるだろうなるだろうといわれてた。にもかかわらず手が打てなかったっていうことが大きな原因ですよね。
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日本が勝つっていっている時に、完成品メーカーが勝てばいいのか、部品メーカーが勝てばいいのか、あるいはそういうのを作る設備メーカーが勝てば日本が勝ったといえるのか。全部いっぺんに勝とうとして共倒れを起こすっていうのが日本のパターンなんですね。大企業の場合は垂直統合という言い方しますけれども、フルセットで全部、自前主義で抱え込んでやろうとする。そうするとコストは高くなるし、基幹部品化もできないしみたいなことがあって、みんな諦めちゃうんです。そういう産業構造を脱しなくちゃいけないというのはようやく最近皆さんが分かってきたんですが、あとは誰が決断して誰がやるかという話だと思うんですね。
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この技術の9割は日本製ですっていうと、なんとなく我々、嬉しい感じがするんですね。例えばスマホの部品の8割は日本製ですといわれると、すごく嬉しいですよね。でもその部品も、収益率は1%からせいぜい3%ですね。10%取ってるなんていうのは、まずない。ところが、うまく完成品で全部押さえ込んだら5割、6割以上の収益率を取る。そういうビジネスモデルをみんなは作っているんですね。ですから、われわれはシェアが9割だから喜ぼうっていうそういう素朴な勝利感みたいなものからもう脱しないといけないんでしょうね。

3 thoughts on “妹尾堅一郎

  1. shinichi Post author

    クローズアップ現代

    ものづくり潮流に異変

    〜日本人技術者たち アジアへ〜

    Mediacrit

    http://o.x0.com/m/40637

    妹尾堅一郎, 国谷裕子

    国谷: きょうは、ものづくりの国際競争に大変お詳しい産学連携推進機構理事長の妹尾堅一郎さんにお越しいただきました。鴻海次世代有機ディスプレイに次の一手をかけているわけですけどもそこで選んだのが日本技術者チーム。そして日本の技術が9割を占める可能性のある…開発が今、進められているわけですけども複雑なのは、なぜ日本でそれが主体的に進まないんだろうかっていう点なんですよね。

    妹尾: そうですよね。これは悔しいですよね。たぶん、ご覧になっている方皆さん、なぜ?とこうお思いになると思うんですね。やっぱりわれわれは直視しなくちゃいけないのは実は、こういう状況に前から、なるだろうなるだろうといわれてた。にもかかわらず手が打てなかったっていうことが大きな原因ですよね。どうして、こういう状況になったかっていうとやっぱり一方でねビジネスモデルだとか産業モデルをちゃんと描けなかったというのと描いてはいたかもしれないけれどもそこへ踏み込む決断ができなかった。こういうのが折り重なって現在のこの状況を招いたともいえるんですね。そこのところはちょっとわれわれは、やっぱり反省しなくちゃいけないのかなっていうふうには思います。

    国谷: 今のVTRを見て技術はそこにある。しかし、そこに投資をしてくれる日本企業がないためになかなか研究が進まなかったっていう企業出てきましたけどもそういう意味では鴻海が日本の技術に着目をしてこうやって積極的に活用しようとしていることは日本の中小企業あるいは技術者にとっては非常に大きなプラスですよね?

    妹尾: 私は、すばらしいチャンスだというふうに思いますね。やっぱり日本がこういう有機ELみたいなものを基幹部品化できなかったっていうこのこと自身がやっぱりビジネスモデルをちゃんと作れなかったっていうことですね。それからもう一つは日本の生産ではやっぱりコストがかかっちゃう。どうしてもコスト構造は日本は諸外国に比べて圧倒的に高いですから。そこのところにも手を入れられなかった。このときにやっぱりもったいないのが技術者と中小企業の力なんですよね。

    国谷: それをうまく彼らは引っ張ってきたということですね。

    妹尾: うまくやられているというそういう思いは拭えないと思います。

    国谷: そうした技術者や中小企業にとってはいいかもしれないんですけど本当にそこで日本が勝っていけるのかどうかっていうのはどう見てらっしゃいますか?

    妹尾: これはですね日本が勝つっていっているときに完成品メーカーが勝てばいいのか部品メーカーが勝てばいいのかあるいは、そういうのを作る設備メーカーが勝てば日本が勝ったといえるか。日本は、どうしてもですねどれも全部いっぺんに勝とうとして共倒れを起こすっていうのが日本のパターンなんですね。大企業の場合は垂直統合という言い方しますけれどもフルセットで垂直統合で全部、自前主義で抱え込んでやろうとする。そうするとコストは高くなるし基幹部品化もできないしみたいなことがあってみんな諦めちゃうんです。そういう産業構造を脱しなくちゃいけないというのはようやく最近、皆さんが分かってきたんですがあとは誰が決断して誰がやるかという話だと思うんですね。

    国谷: そうすると、ただ部品のところだけにとどまったりあるいは装置のところだけにとどまると利益率ってどうなんですか?

    妹尾: これがね今のナレーションでもあったんですけれどもこの技術の9割はやはり日本製ですっていうとなんとなく、われわれうれしい感じがするんですね。例えばスマホの8割の部品は日本製です。これ、すごくうれしいですよね。でも、その部品そのものも世界で8割のシェア取ってますっていうんですが今ご指摘のとおり収益率は1%からせいぜい3%ですね。例外的なもので10%取ってるなんていうのはまず、ない。ところが、うまく基幹部品にしているところはそこは収益率が5割以上。うまく完成品で全部押さえ込んだら5割、6割以上の収益率を取る。そういうビジネスモデルをみんなは作っているんですね。ですから、われわれはシェアが9割だから喜ぼうっていうそういう素朴な勝利感みたいなものからもう脱しないといけないんでしょうね、恐らく。

    国谷: なるほどね。そういう日本の産業の構造っていうかどうするかっていうお話と技術者一人一人を見ますと非常に画期的な製品開発に挑めるという意味ではやりがいは大きいでしょうね。

    妹尾: やりがいがあるでしょうね。

    国谷: これから、どんどんこうした例が出てきますとあとに続く人々が出てくると思いますか?

    妹尾: これは続くと思います。といいますのがね産業というのは3段階よく発展するっていうんですね。1つ目はイミテーションの「I」なんです。

    国谷: イミテーションは?

    妹尾: 模倣。模倣ですね。まねっこですよね。それから2番目はインプルーブメントこれは改善です。3番目がイノベーションといってもう、全くモデルを変えてしまうっていうことなんですけど。昔から日本の技術者は、新興国が模倣したいからっていって呼ばれてた。それから、改善したいからって呼ばれてた。だから技術者はどうしてもどっかに後ろめたいところがあったんですね。今回は、イノベーション新しいもん、一緒に作ろうよって呼びかけられた。だから出てきている方々みんな晴れ晴れしい顔してるのはつまり技術を自分たちで使えるぞっていうその喜びがあると思うんですね。こういう風潮になったら恐らく日本の技術者は結構どっと行く可能性はありますね。ただ、そうなっていくと本当は日本は技術力を維持できるだろうかというところも心配ですしその技術力を使って新たなイノベーションを生み出せるかどうかっていうところも本当にもう、ギリギリのところにこれから来ますよね。

    国谷: これからどうしたらいいでしょうか?

    妹尾: 一つはですねやっぱり技術というのは現場がないとしょうがないんでどうやって日本に現場を残すかっていうのが一方であります。もう一つはですねこれだけの要素技術っていいますけども個々の技術だとか、個々の技術者優秀な技術者だとか優秀な中小企業はたくさんある。でもそれを、ちゃんとした力に持ち込むようなプロデューサーっていいますかねあるいは軍師といってもいいですね。すばらしい、強い将兵がいたらそれを束ねる作戦が練れる人が必要だって。そういう人材がいよいよ出てこないといけないんではないかと思います。

    国谷: 日本にはいますか?

    妹尾: 今は…。

    国谷: どこにいますか?

    妹尾: 育ちつつあるでしょうね。逆にいうと、そこに注力して育てていかないとそれこそビジネスモデル産業モデルを作ったり作戦が練れるような人材を作れないとこの流れは押しとどめることはできないだろうと思います。

    国谷: しかし、そういう人たちに期待をする。どうやったら背中を押せますでしょうね?

    妹尾: そうですね。ここからね、日本の経営者の腕の見せどころでしょうね。その決断ができるかどうかその覚悟ができるかどうか。今、一番問われているのは日本の経営者の覚悟だと思います。

    国谷: きょうはどうもありがとうございました。

    妹尾: ありがとうございました。

    国谷: 産学連携推進機構の妹尾堅一郎さんでした。

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  2. shinichi Post author

    ものづくり潮流に異変

    ~日本人技術者たち アジアへ~

    クローズアップ現代

    http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail_3508.html

    「亀山モデル」量産化を指揮した元シャープの工場リーダー。サムスンの製品化を牽引した元ソニーの技術者。巨大技術集団を率いた元日立の製造部長。リストラ、事業縮小が続く大手メーカーの中核エンジニアたちが古巣を離れ、新たな活躍の場を求めて連帯を始めた。彼らに機会と資本の提供を申し出たのは、台湾の巨大メーカー。世界を席巻してきたアジアの受託製造(EMS)ビジネスも転機を迎え、開発力のある人材を新たに求めているのだ。手始めに取り組むのは、有機ELを使った次世代ディスプレイ開発。国境や企業の枠を越え、最適な人材や技術をプロデュースしようというアジア大手資本の動きに対して、日本企業の対応はいまも後手に回っている。自力で活躍の舞台を切り開こうとする技術者たちの挑戦が、今後の日本そしてアジアのものづくりに与える影響を見ていく。

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  3. shinichi Post author

    (sk)

    グローバルな環境から取り残されてしまった日本人たちが、相も変わらず「日本」、「日本人」、「日本の技術」、「日本の技術者」、「日本企業」、「日本の経営者」、「日本の産業」、「日本の製品」、「日本製」、「日本のパターン」などなど、「日本」、「日本」、「日本」と言い続けている。

    鴻海が日本人技術者を採用するのは、その人たちが優秀だから採用するのであって、その人たちが日本人だから採用するわけではない。

    アメリカの企業がアメリカ人しか採用してこなかったら、今のアメリカはない。

    グローバルな企業では、技術者の国籍よりも、その能力が問われる。部品も、生産される国がどこだとかいうことよりも、良い部品かどうか、安いかどうか、安定供給が可能かどうかが重要になる。

    日本の経営者や技術者しか雇えず、日本の部品しか使うことが出来ず、日本語環境に固執し、日本のシステムを使わざるを得ないとすれば、競争に負けるのは必然だ。

    グローバル対ローカルの戦いは、いつも、グローバルの勝利で終わる。

    「日本」、「日本」と言って負け続けるのが日本に伝わる遺伝子なのだとしたら、それはあまりにも悲しい。

    日本人技術者たちがグローバルな企業で活躍するというのは、なにも新しいことではない。ゼロックスの研究所長だったトゥティハシ (Tutihasi) さんが日本を出たのは、もう半世紀以上も前のこと。トゥティハシさんのような人たちは、日本がどうのこうのとは関係の無い場所で、世界を引っ張ってきた。

    ひとりでも多くの人が、トゥティハシさんのように、グローバルな環境で活躍したらいいと、心から思う。

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