田中宇

最近「ロシアがもうすぐ経済破綻しそうだ」「ユーロはもうダメだ」「中国もいずれ経済破綻する」「ドルだけは永久に安泰だ」といった、国際マスコミによる経済分野の仮想現実の創造が拡大している。日本では昨年から「アベノミクスは日本経済を良くする」という歪曲報道が席巻した。従来、仮想現実の創造(善悪の歪曲)は「サダム・フセインがいかに極悪か」「中国やロシアは独裁で悪い」「米英は常に正しい」といった政治面が中心だったが、米国の金融システムの潜在危機が増した最近は、経済記事の仮想現実化が強くなっている。
仮想現実を見せられた人々は、それが現実と思い、露中や欧州から投資を逃避させ、その結果、仮想現実が本物の現実になるかもしれない。しかし、ユーロは11年以来もうダメだとずっと言われてきたが破綻していないし、中国もいずれ破綻すると言われながら破綻していない。今回書いたように、ロシアもたぶん破綻しない。仮想現実は本物の現実にならず、ずっと仮想の存在だが、人々の多くは延々と騙され続けている。
国際マスコミが仮想現実化の傾向を強めていることは、国際マスコミの報道を重要な情報源としている私にとって、分析作業を難しくしている。それぞれの報道がどの程度の歪曲誇張を含んでいるか判断が難しい。全体として近年の報道は、米国の覇権維持のため、米経済の健全性を過大評価し、中露など新興市場やEU経済の危険性を過大評価する傾向がある。しかしその一方で、中露など新興市場が脆弱さを持っているのも事実で、どこまでが歪曲でどこからが事実か、判断が難しい。

One thought on “田中宇

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *