安西祐一郎

人間を他の動物と分け隔てる大きな特徴は、見たり聞いたりしていることをそのまま鵜呑みにして行動するのではなく、いろいろな概念やことばによって意味をつかむことができる点にある。また、多くの経験を知識に変え、その知識を実践に応用することによって、さらにしっかりした知識を創り出していくことができる点にある。

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  1. shinichi Post author

    心と脳

    認知科学入門

    by 安西祐一郎

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    初心者が熟達者になるには、単にたくさんの知識を覚えるだけでなく、思考の方略自体を学習することが大切になる。熟達者たる所以は、博識なだけでなく、臨機応変にどうやって考えればよいか、思考の方法を熟知し、前の項で述べた「思考の限界」をある意味で超えるところにある。

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    ことばを理解したり産み出したりする心のはたらきは、いくつかのレベルの情報が総合的に処理される。
    第一は、文字が並んだ視覚パターンや音声の聴覚パターンのような知覚情報。
    第二は、母音や子音、抑揚やアクセントなどの音韻情報。
    第三は、意味の最小単位とされる形態素の情報。
    第四は、単語のレベル。
    第五は、文法のレベル。
    第六は、意味のレベル。

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    人間の言語がもつ特徴の一つは、記号で表現される情報が一列に並び、しかも文法の規則にしたがった構造をもっていることである。
    言語のもう一つの特徴は、ことばを理解したり、話したりするときには、狭い意味でのことばのはたらきだけでなく、知覚、記憶、概念やイメージ、運動などのはたらきの相互作用は必要なことである。
    言語の第三の特徴は、人間関係を築き、社会の絆を創り出す、コミュニケ—ションの最も基本的な手段になっていることである。どんな状況でどんな相手にどんなことばを使えばよいか、そこを間違えると取り返しがつかなくなることは、社会人の多くが経験していることだ。

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    心は、感情や社会性や記憶が思考のようないろいろな要素的な機能が相互作用としてはたらく情報処理システムである。とくに、心の情報処理システムは、自分自身の心や他の人々の心、また周囲の社会や環境との相互作用を通じて内部の状態が変化するシステムである。

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    こう考えると、問題を理解し、解決できるかどうかは、問題に関与する当事者がいかに「自分のこととして」問題をとらえているかにかかっている。突発的な災害や経営問題への迅速な対応は、当事者が問題の意味を常に問うているかどうかがカギになる。

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    人の心のはたらきがもつ最大の特徴の一つは、きわめて豊かでありながら全体として一貫した性質をもつ、言語の機能が含まれていることにある。
    ことばには、他の心のはたらきに独立な面と、他の心のはたらきと影響し合う面の両面がある。

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    人間が他の動物と最も異なる点の一つは、誰もがたくさんの新しい知識や新しい方法を創造できるところにある。
    創造する人間の特徴は、自分の関心事に没頭する点にある。
    創造する人間のもう一つの特徴は、ものごとを曇りのない眼で見ることである。

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    胎児から新生児を経て一生にわたる発達の過程は、感情、記憶、社会性、思考、ことばをはじめ、多種多様な心のはたらきがお互いに連携しあい、心のはたらき自体も変容しながら、新しいことができるようになっていく、熟達の過程である。

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