高橋秀実

阿川さんはインタビューが「苦手」だという。。。さらには「『新書』というものを出す柄ではない」とわざわざ断り書きを入れて、こうして指南書を出版しているのだから相当に謙虚。嫌みなくらい謙虚なのである。。。
実例のほとんどが中高年の有名人男性を相手にしたインタビューで、私はあらためて日本が男社会、いうなればオヤジ社会であることを痛感した。私もその一員なのでよくわかるが、オヤジは大人の女性からの鋭く厳しい質問には絶句してしまう。時として憤りさえ込み上げてくるが、そこで初めて会話には血が通うのではないだろうか。彼女は「聞いてあげる」ことで相手が本人も忘れていた大切なことを思い出すというが、私などは「聞いてあげない」とそっぽを向かれたほうが、話したくなるのである。

2 thoughts on “高橋秀実

  1. shinichi Post author

    「オヤジ殺し」の妙技披露

     阿川さんはインタビューが「苦手」だという。今も「修行中」で「ビクビクどきどき」するそうだが、「おだてられると木にも登る小心者」なので乗せられるように、インタビュアーをつとめているらしい。さらには「『新書』というものを出す柄ではない」とわざわざ断り書きを入れて、こうして指南書を出版しているのだから相当に謙虚。嫌みなくらい謙虚なのである。

     彼女によると、インタビューとは会話であり、「聞くこと」そのもの。本書では、相手に「自分の話を面白そうに聞いてくれるなら、もっと話しちゃおうかな」と思わせる技の数々を披露している。相手の目を見て、相づちでリズムをとる。息継ぎにも注意を払い、脱線した話も楽しむ。質問に詰まったら相手の言葉を「オウム返し」。相手が話すことを躊躇(ちゅうちょ)したら、「え、どんなお話なんですか。聞きたい聞きたい」とねだってみせたり、謙遜した発言には「そんなあ」とうめいたりする。スキャンダルについて聞かなくてはならない時も「そんな失礼なこと、聞けないよぉ」と思って聞くと、なぜか相手のほうから話し始めるという。なんでも彼女は「いつもニコニコしている人に優しく接してもらうより、怖そうな顔をしている人に優しくされるほうが、なんとなく得した気持」になり、小学生男子に「女は小さいほうが可愛い…」と言われて「なんだかドキドキした」というくらいで、あたかも好奇心いっぱいのウブな女学生を演じることが「聞く力」の源泉なのだろうか。

     実例のほとんどが中高年の有名人男性を相手にしたインタビューで、私はあらためて日本が男社会、いうなればオヤジ社会であることを痛感した。私もその一員なのでよくわかるが、オヤジは大人の女性からの鋭く厳しい質問には絶句してしまう。時として憤りさえ込み上げてくるが、そこで初めて会話には血が通うのではないだろうか。彼女は「聞いてあげる」ことで相手が本人も忘れていた大切なことを思い出すというが、私などは「聞いてあげない」とそっぽを向かれたほうが、話したくなるのである。

     評・高橋秀実

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