星新一

政府の方針により、すべての国民に充分な土地が確保され、公害も犯罪も戦争さえもなくなった、健康で文化的な世界。
生活維持省に勤務する青年は、いつも通り上司から受け取った数枚の「カード」を手に、同僚とともに外勤に出る。それぞれのカードには特定の人物の情報が記載され、二人は最初のカードに記された少女の自宅を訪れる。出迎えた少女の母親に青年が身分を明かすと、彼女は『死神…』と口走って卒倒しそうになる。
実は政府の方針とは徹底した人口制限、すなわち毎日コンピュータで年齢・性別・職業に関係なく完全に公平に選抜した者を殺処分するというものであり、二人はその業務を遂行する執行官だった。
情に訴え必死に反駁する母親を、青年はいつも通りに論破する。この方針を維持できなければ、人口爆発で生活水準は下がり、貧困と暴力が公害や犯罪をはびこらせ、『行き着く先はいつも同じ、戦争です』と。 帰宅した少女を気付かれないようレーザー銃で射殺すると、二人は次のカードを見るため車に戻った。
カードを引いた青年は、思わず『景色の良い場所がいいな』と大声で言い、訝しむ同僚に自分の名が記されたカードを見せる。そして、こんな平和な時代にこれだけ生きられて幸せだった、と呟くのだった。

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