身近だったころ

病がもっと身近だったころに
お堂にこもって病気平癒を祈るしか
できることがなかったころに

医者は自分の限界を知っていて
患者も医学の限界を知っていて

病が治らないことを
誰かのせいにすることはなかった

病は人の力の及ばないもの
誰もがそう理解していた

死がもっと身近だったころに
道端に死体が転がっているのが
そう不思議でなかったころに

人は人の限界を知っていて
自然を畏れる心を持っていて

死に至ったことを
誰かのせいにすることはなかった

死は人の力の及ばないもの
誰もがそう理解していた

自然は人の力を超えたもので
人は畏れを抱いていた
人は自然とともに生きてきて
自然がやさしくないときは
祈り
自然がゆったりとしているときは
感謝してきた
人が自然を超えたとき
自然が人になにをするか
考えただけでもおそろしい

1 thought on “身近だったころ

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