マクロとミクロ

マクロで考える人がいる
大きなことや広い範囲のことが得意で
国や世界や地球のことを考え
未来を憂う

ミクロで考える人がいる
身近なことや狭い範囲のことが得意で
家庭や町や地域のことを考え
現状を嘆く

マクロで ものを考えると
細部には目が行き届かない
違った考えをすくい上げることができないし
そもそも
ひとりひとりの心がわからないふりをして
マクロで ものを考えている

ミクロで ものを考えると
全体には目が行かない
総意に合意して それに従うことができないし
そもそも
全体のことはわからないという顔をして
ミクロで ものを考えている

マクロで考える
大きく考える
長期的な最適化と長期的な方策で
短期的な可能性を放棄する
壮大なスケールで考えることができるから
地球の環境や国の経済が落ち着いてゆく
でも
やりたい事が大きすぎて 人を忘れ
何にも手が届かずに 現実から離れる
そうはいっても もしかしたら
世界を大きく変えられるかもしれない
長期的なことや不可能にみえることを変えられるかもしれない
たとえそれが理想にすぎなくても

ミクロで考える
小さく考える
短期的な最適化と短期的な方策で
長期的な可能性を放棄する
それぞれのことを丁寧に分析するから
ひとつひとつのことは見事に進む
でも
なにをしてもそのことにしか適用できず
汎用性も応用性もない
そうはいっても もしかしたら
自分のまわりを大きく変えられるかもしれない
今日のことや明日のことを変えられるかもしれない
たとえそれが幻想だとしても

マクロでものを考えて
みんなが地球の環境のことばかり考えていたら
街角のゴミやビルの汚れは忘れられて
街はどんどん汚くなってしまう
地球がきれいになるのだから
それでいいのだと思っていても
身近な景観が損なわれ 安らぎが失われるのはつらい

ミクロでものを考えて
みんなが身近な環境をきれいにしていたら
どこか遠くにゴミの山ができて
とんでもない汚染が拡がってしまう
自分の身近がきれいだから
それでいいのだと思っていたら
汚染が自分のところにまで拡がってきてしまう

マクロでものを考えて
世界が良くなるようにとばかり考えていたら
自分の地域が貧しくなって
貧しさによる不安定が地域を覆ってしまう
世界が良くなったのだから
それでいいのだと思っていても
不安定が自分のところに拡がるのはつらい

ミクロでものを考えて
自分の地域だけを良くしようとしていたら
遠くの国にひずみが出てきて
貧しさによる不安定が拡がってしまう
自分の地域が良くなったのだから
それでいいのだと思っていたら
不安定が自分たちのところまで 押し寄せてきてしまう

マクロでものを考える人は
ミクロの人が作る里山を
本当の自然ではないといって批判する

ミクロでものを考える人は
マクロの人が言う気候変動を
ありもしないでっち上げだといって批判する

マクロでものを考える人は
ミクロの人の経済活動を
理論に合わないといって批判する
マクロでものを考える人が ミクロのことをしようとすると
小さなことに分厚い提案書を書くなんていう
トンチンカンなことをする

ミクロでものを考える人は
マクロの人の経済理論を
後付けの説明でしかないといって批判する
ミクロでものを考える人が マクロのことをしようとすると
貧しい国の可哀想な子どもの里親になるなんていう
トンチンカンなことをする

東アジアの人々は
マクロでは豊かでもミクロでは貧しく
地中海の人々は
ミクロでは豊かでもマクロでは貧しい

マクロとミクロは
どこまでいっても交わることがない
まるで 豊かな人と貧しい人 みたいに
まるで 女と男 みたいに

日々の暮らしは
マクロもミクロも関係なしに
続いてゆく

One thought on “マクロとミクロ

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *