現想と幻実

想い出がぼんやりしている
はっきりしていない
そもそも 記憶全部がぼんやりしている
ぼんやりしているから
ズシンとくる
大事なことはみんなぼんやりしている
だから ズシンとくる
ほんとうのことはみんなぼんやりしている
だから ズシンとくる
ぼんやりしていることは美しくて
ズシンとくる

現実と非現実の境界が
ゆらいでいる
現実と非現実の両方が
ぼやけている

現実なのか非現実なのか
夢なのか幻なのか
ファンタジーなのか
ふわふわと そしてゆらゆらと

自由奔放な空想や 嘘のない虚構が
現実から意味を奪い
幻想は
夢と幻をごちゃ混ぜにする

夢に遊び 幻に生き
現実に 背き続けていたら
幻想と現実は いつのまにか
現想と幻実に なってしまった

政治が娯楽化し
経済がギャンブル化し
言うことと実際とが乖離し
社会にひびが入る

幻想と現実の狭間は
透けた紙のよう
現想と幻実の狭間は
蜘蛛の糸のよう

幻実と非幻実の境界に
君がいる
現想と非現想の境界に
僕がいる

One thought on “現想と幻実

  1. shinichi Post author

    (sk)

    第235作
    Fantasy

    現想と幻実: ル=グウィン短篇選集
    by アーシュラ・K・ル=グウィン
    translated by 大久保ゆう, 小磯洋光, 中村仁美

    めぐりあう書物たち
    by 尾関章
    https://ozekibook.com/
    から何らかの刺激を受けて

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