国境

 
森の中の 曲がりくねった道を
国境の方に向かう

国境には 警備隊が
待ち受けているのだろうか

それとも 監視カメラが
見張っているのか

もし 通れなかったら
引き返すしかないのか

そもそも この道は
通行禁止ではなかったのか

まさか 通行禁止だなんて
どこにも書いてなかったじゃないか

そんなことを考えて歩いていたら
粗末な橋に出くわした

橋の下には
水が流れていない

橋の向こう側には
国境を示す石標がある

目の前にある水のない川が
国境だというのだろうか

この橋をあちら側に渡れば
違う国に行けるというのか

何の仕掛けもない みすぼらしい橋を
何の感慨もなく渡る

誰もいない 何もない国境を
静けさが優しく包んでいる

ここを真っ直ぐ行けば
違う国の町に出る

違う国の店で
違う国の商品を買うことができる

こんな橋を渡るだけで
違う世界に行くことができるというのか

振り返ると 石標が目に入る
石標に近づく

どれだけの人がここを通ったのだろう
石標はここで何を見てきたのだろう

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