2 thoughts on “日本の出生数

  1. shinichi Post author

    2022年の出生数、初の80万人割れ 想定より10年早く…「賃金が低いから無理」

    東京新聞
    https://www.tokyo-np.co.jp/article/233787

     2022年に生まれた赤ちゃんの数(出生数)は前年比5.1%減の79万9728人で、1899年の統計開始以来初めて80万人を下回ったことが28日、厚生労働省の人口動態統計(速報値)で分かった。国内の外国人などを除き、日本在住の日本人だけに限れば77万人前後になるとみられる。政府機関の推計より10年ほど早いペースで少子化が進んでおり、この傾向が続けば、社会保障制度や国家財政の維持が厳しさを増すのは避けられない。(井上峻輔)

     出生数は7年連続で過去最少を更新した。16年に初めて100万人割れとなったが、それから6年でさらに2割程度落ち込んだことになる。国立社会保障・人口問題研究所(社人研)は17年に示した将来推計で、日本人の出生数が77万人台になるのは33年としていた。

     婚姻数は3年ぶりに前年を上回ったが、新型コロナウイルス禍で20〜21年は急減しており、今回の出生数減に影響した可能性がある。厚労省の担当者は「個々人の結婚や出産、子育ての希望実現を阻む要因が複雑に絡み合っているのではないか」と指摘した。

     急速な少子化の進展を受け、岸田文雄首相は「社会機能を維持できるかどうかの瀬戸際」と強調し、「異次元」と銘打った子ども・子育て政策の拡充を検討。政府は3月末をめどに具体策のたたき台をまとめ、6月にも策定する経済財政運営の指針「骨太方針」で将来的な関連予算の倍増に向けた道筋を示する方向だ。

     ただ、既に1971〜74年生まれの第2次ベビーブーム世代が出産可能な年齢層を抜けた一方、新たに出産期を迎える女性の人口が少ない。そのため、出生数を増やすのは難しく、減少の速度をどれだけ緩やかにできるかが焦点だ。

     日本在住の日本人のみを対象にした出生数は6月に公表される。速報値では、昨年1年間の死亡数が過去最多の158万2033人、死亡数から出生数を引いた人口の自然減が78万2305人で過去最大の減少幅になった。 

    ◆賃金上昇、教育費の負担軽減カギ

     統計開始以来、初の80万人割れとなった2022年の出生数。16年ごろから減少が加速し、回復の兆しは見えていない。専門家は婚姻数の減少に加え、結婚した人が子どもを産まなくなってきていることを要因に挙げ、経済的理由による出産意欲の低下が背景にあると分析。賃上げなどとともに、子どもにかかる教育費の負担軽減が重要だと指摘する。

     出生数の下落率は、15年までの10年間は毎年平均1%ほどだったが、16年以降は3%超に加速。同年に出生数が100万人を割ってから、わずか6年で2割減の80万人を下回り、底が抜けたようになっている。

     最近の出生数低下はコロナ禍による婚姻数減少の影響もあるとされるが、それ以前に加速は始まった。人口問題に詳しい日本総研の藤波匠氏は「15年までは非婚化が進む一方で、結婚した人は子を産むことが多かった。16年以降は結婚した人も子を産まなくなってきている」と分析する。

     藤波氏によると、20年の既婚女性の出生率を表す「有配偶出生率」は15年と比べ、35〜39歳は横ばいだったが、34歳以下の世代は軒並み低下。特に20〜29歳は顕著だった。

     浮かび上がるのは、今の生活や将来に不安を感じ、子どもを持つことをためらう若い夫婦が増えている実態。藤波氏は「女性は賃金の低い非正規雇用が多く、男性も賃金が下がっている。女性は働くことも家事や子育ても求められてきたが、頑張りも限界を超え『子どもを育てながら生活するのは自分には無理』『3人ほしかったけど1人だよね』と悲観的になっている」と指摘する。

     根本的な打開策は経済成長と賃金上昇としつつ、大学無償化や返済の必要がない奨学金の拡充など、高等教育の負担軽減の重要性に言及。「賃金が上がらない中で、子ども3人を大学に行かせるのは不可能という感じになっている。こんな社会をつくったのは政治の貧困だ」と強調する。

     元厚生官僚の大泉博子氏も教育費の負担軽減を求める。

     1989年に合計特殊出生率が過去最低になり「1.57ショック」と呼ばれた事態を受け、政府が94年に初の少子化対策としてまとめたのが「エンゼルプラン」。大泉氏は課長として作成に携わり「ほとんどが保育について書かれていて、人口政策ではなく児童政策に矮小わいしょう化された」と問題があったと振り返る。

     岸田文雄首相が「異次元の少子化対策」で掲げた保育サービス拡充などの三本柱は、30年前のプランと同じ発想だと批判。「全く進歩していない。(政府などの)調査では、教育費がかかるから産めない、1人にとどめるとの答えが最も多い。教育費ゼロの方が効果が大きい」と主張する。

     専門家や与野党の議員は、出産期を迎える女性が減っていくため「今後10年が少子化にブレーキをかけるラストチャンス」と口をそろえる。首相は28日、80万人割れを踏まえて官邸で記者団に「危機的な状況だ。今の時代に求められる子ども・子育て政策を具体化し、進めていく」と強調したが、政府が3月末をめどにまとめる対策のたたき台が試金石になる。

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  2. shinichi Post author

    財源に恵まれた東京23区で少子化対策サービス合戦 区外との格差、ばらまき批判も

    東京新聞

    https://www.tokyo-np.co.jp/article/233566

     岸田文雄首相が「異次元の少子化対策」を掲げ、自治体の2023年度予算案で子育て支援策が重要課題となるなか、東京23区の充実ぶりが目立つ。恵まれた財政力を背景に、所得制限なしで現金や金券を給付する事業を競い合う現状には、23区内と区外で受けられる行政サービスに違いが出る「多摩格差」を巡る議論の再燃も招いている。(東京ニュース取材班)

     東京23区と多摩地域の財政 財政の弾力性を示す指標「経常収支比率」は、多摩地域が23区よりも10ポイント程度高く、財政的に余裕がないことを示す。2021年度普通会計決算で23区平均は78.6%、多摩地域・島しょ平均は87.6%。過去5年は、ほぼ同様の傾向。数値が高いほど人件費や扶助費など使い道が決まっている義務的な経費が多く、自由な政策展開がしにくいとされる。

     東京都は、23年度から保護者の所得制限なしで、18歳以下の子ども全員に月額5000円を支給する方針だ。

     小池百合子知事は、少子化は「社会の存立基盤を揺るがす事態」との考えを示す。「それだけの財源があるのは大変うらやましい」(愛知県の大村秀章知事)と地方から声が上がるが、23区はさらに独自の支援策を上乗せする。

     江東区は18歳以下の約8万2500人に、1人3万円の電子クーポンを配る。新宿区は「入学準備のサポート」(吉住健一区長)として小中学校に入学する児童生徒全員に小1は5万円、中1は10万円を配る。

     目黒区も18歳以下に1万円、新生児には2万円の祝い金を出す。文京区は当初予算案には盛り込まなかったが、高校生世代などへ月に5000円を給付することを予定している。千代田区は、22年度補正予算で18歳以下に5万円の配布を決めた。

     多摩地域ではこうした取り組みは少ない。「なんでも所得制限なし、無償化というのは現実的じゃない」と東久留米市の富田竜馬市長はこぼす。「市としては(教育環境の充実など)子ども自身につながる支援に力をいれたい」とする。

     別の首長は「少子化対策は国や都など広域的に取り組むべきだし、経済支援なら所得制限をつけないとおかしい」と指摘し、こうぼやいた。「あっちは何千円、こっちは何万円というのでは、ただのばらまき。統一地方選に向けたアピールだろう」

    ◆返済不要の奨学金や給食費無償化も

     少子化対策を巡るサービス合戦が、東京23区を中心に過熱する。首長からは国の支援拡充を求める声が上がる。

     足立区は大学生や大学進学予定者に返済不要の給付型奨学金制度を設ける。私立大医学部進学の場合、6年間で給付額は最大3600万円。募集人数は40人で年収800万円以下の所得制限や、成績要件がある。

     中野区は、離婚調停中で児童扶養手当の申請ができない「実質ひとり親家庭」に、手当相当額の児童1人あたり10万円の支給を予定。妊娠、出産支援にも多くの自治体が取り組む。港区は出産費用の自己負担を事実上ゼロにすることを目指し、助成の上限額を81万円に引き上げた。

     給食費の無償化も広がる。23区では、昨年9月に方針を公表した葛飾区のほか、中央、台東、品川、世田谷、北、荒川の6区が小中学校の保護者負担をゼロにするための費用を新年度予算案に盛り込んだ。

     足立区は中学校の無償化を優先し、小学校は「財源の裏付けを含めて慎重な判断が必要。早期実施に向けて検討する」とした。都外では、水戸市が中学校の無償化方針を表明している。

     江戸川区は実施を見送った。斉藤猛区長は会見で「単年度ならばできるかもしれないが、5年、10年と(費用が)かかってくることも考えないといけない。学校給食は義務教育の一環ではないか。無償化をやるなら国がやるべきだ」と主張した。国立市の永見理夫市長も「国や都が広域的に取り組んでほしい」と注文した。

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