shinichi Post author17/04/2023 at 11:38 pm [こころの時代] 宗教団体と法規制の現状 「信教の自由」と法規制 「徹底討論 宗教と“カルト”」シリーズvol.4 NHK https://youtu.be/kibTUYuv61E 宗教団体が反社会的な活動や著しい人権侵害を行ったとき、どのようにして歯止めをかければよいのか?2022年12月、旧統一教会による被害者を救済するため、不当な寄附行為を禁じる新しい法律が成立した。こうした宗教団体に対する法規制と、憲法が保障する「信教の自由」との兼ね合いが、今、問われている。 旧統一教会の問題を手掛かりに、宗教団体への法規制と「信教の自由」について、宗教問題の現場・最前線で活動してきた研究者に憲法学者、法律家を加えた6人が、徹底討論する3本シリーズの第1弾。 ** 徹底討論 問われる宗教と“カルト” VOL.4 信教の自由と法規制(前編) 初回放送日: 2023年4月2日 去年12月、旧統一教会による被害者を救済するため、不当な寄附行為を禁じる新しい法律が成立した。宗教団体への法規制と憲法が保障する「信教の自由」との兼ね合いを、どのように考えたらよいのか。 ** 【出演者】 島薗 進(宗教学者・東京大学名誉教授) 、櫻井義秀(宗教学者・北海道大学大学院教授)、小原克博(牧師・同志社大学教授)、金塚彩乃(弁護士)、駒村圭吾(憲法学者・慶應義塾大学教授)、田中優子(社会学者・法政大学名誉教授) ** 櫻井義秀:新法は「法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律」ということで、現在はこれを縮めまして「法人寄附不当勧誘防止法」と言われている。法人が寄附をお願いする場合は、お願いされた方の自由な意思を侵害することなく、その人の生活を困難にすることがないように、十分配慮しなきゃいけないと、配慮義務というのが設けられました。 金塚彩乃:確かにこの新法をこんなに早く異例のスピードで出来た法律かなと。これができたということは、確かに非常に大きな進歩なのかなと。この法律がそんざいすると、できたということ自体がまず重要なんだろうとは思うけれども、実務家の立場からすると、どうやって使うんだろうと、正直に考えているところです。おそらく今後実務上、裁判が起こされていったときに、さまざまな工夫が裁判所との間でなされて、実効性のあるものになっていくのかなと思うけれども、あまりにちょっとピンポイントなのかなということを思いました。さまざまな問題に対してどのように向き合うのかなといった視点がどうしても見えてこない部分が、この立法で済まされてしまうんじゃないのかなといった懸念を持っておりまして。 島薗進:今問題になっていること、そこでは何か解決したような気がするけれども、何か問題の根にはふれていないというか、向き合っていないということがあったと思います。 駒村圭吾: アリバイ作りのために、あるいはガス抜きのために法律をつくるということが行われるんであれば、これもう本末転倒な話だと思うんですね。 田中優子:犯罪は犯罪じゃないか。それを守る聖域なんて本当はあってはならないわけなんで、ただ宗教の場合には、ご本人がそう思っていないという大きな問題があって、その本人が届けないというようなことも起こると思うんですけれど、しかしそれは周囲が、社会がそれをちゃんと見るということが大事だと思うんです。 コミュニティが持っていた機能が機能不全に陥っている、あるいは存在しなくなっていると、そういう近代社会、あるいは近代家族の問題というのはあると思うんですよね。 小原克博:近代以降、現代に近くなればなるほど、個人がむきだしのままそこに放り出されて、社会とかコミュニティが関与できなくなったという、この変化と言うのは非常に大きいと思います。 Reply ↓
shinichi Post author18/04/2023 at 12:16 am [こころの時代] フランス「セクト規制法」から考える 「信教の自由」と法規制 「徹底討論 宗教と“カルト”」シリーズvol.5 NHK https://youtu.be/TqbxNOuBLpM 国家による宗教団体に対する法規制は、その国の文化や歴史によって、さまざまな形で存在している。フランスなど、諸外国における宗教と法規制の関係は、どうなっているのか?他の国の事例を参照することで、日本における宗教と社会、国家の在り方が見えてくる。 旧統一教会の問題を手掛かりに、宗教団体への法規制と「信教の自由」について、宗教問題の現場・最前線で活動してきた研究者に憲法学者、法律家を加えた6人が、徹底討論する3本シリーズの第2弾。 ** 徹底討論 問われる宗教と“カルト” VOL.5 信教の自由と法規制(後編) 初回放送日: 2023年4月9日 宗教団体への法規制と憲法が保障する「信教の自由」との兼ね合いを、どのように考えたらよいのか。フランスなど諸外国の法規制の現状を参照しながら、憲法が掲げる「信教の自由」の思想的背景を明らかにし、宗教と社会、国家のあるべき関係を考えていく。 ** 【出演者】 島薗 進(宗教学者・東京大学名誉教授) 、櫻井義秀(宗教学者・北海道大学大学院教授)、小原克博(牧師・同志社大学教授)、金塚彩乃(弁護士)、駒村圭吾(憲法学者・慶應義塾大学教授)、田中優子(社会学者・法政大学名誉教授) 金塚彩乃:フランスの、名前がなんと訳すのかとありますけれども、よく「反セクト法」とか「セクト規制法」というふうに言われているものが、昨今、さまざま議論されているということですが、もともとの名称はちょっと違ってですね、人権と基本的自由に対する侵害をもたらす動きの予防と抑制を強化するための法律」という名前になっておりまして、こちらでは簡単にするために「セクト規制法」と呼ばせていただきたいと思います。このセクト規制法の中身、いわゆるマインドコントロール罪てきなですね、無知あるいは脆弱な状況を不法に利用する罪といったものがあります。2つの類型がありまして、ひとつが未成年あるいは、年齢、病気、身体の障害、肉体的あるいは精神的問題、妊娠といったことを抱えている、こういった弱い立場にある人たちが著しい脆弱な状態にあることを行為者が知っている場合というのが一点、もう一点は、著しい圧力あるいは繰り返される圧力、もしくはその判断力を侵害する技術により生じた心理的あるいは身体的な隷属状態にある人、それが2つ目のカテゴリーでありまして、そういうカテゴリーの人に対して、何らかの行為を行わせ、あるいは行わせないために、無知の状態では脆弱な状態を不当に濫用する行為、これを処罰するというのが、日本でマインドコントロール罪というような言い方で知られている、フランスの「無知・脆弱の不法利用罪」といったものになっております。私が興味深いなと思っているのが、その思想的背景でありまして、セクト規制法が2001年に作られたときに国会で議論がありましたけれども、ここで出てくるのが啓蒙思想ですね。やはりフランス革命の伝統があるフランスは、フランス革命というのは、いかにキリスト教を乗り越えるかといったところで出てきましたが、その背景にあった啓蒙思想というのは、宗教的ドグマであったりとか、偏見、そういった暗黒主義を光によって、啓蒙によって、乗り越えていくんだと、といったものがありましたが、ここでも、セクトとの戦いというのは、この同じ啓蒙思想に根を張るんだといったことが言われています。そしてもう一点、フランスの特徴として、フランス法の特徴としてあるのが、弱い人を守るという観点があります。おそらく日本の法律であったりとか政治の問題というのは、いかに市民や国民を守るかといったことが、全面的に議論がなかなかされていない部分があるんじゃないのかなというふうに思っています。 駒村圭吾:フランス憲法の最も革新的な前提とは何かということを、少なくとも日本の憲法学者たちはこうとらえてきたんですね。つまりその、個人というものが一番大切でしょうと。この個人というものを、さまざまな共同体とか、あるいは歴史的な文脈から括りだして、自津的主体としてまず立てるという、こういうことですよね。国家、それから個人という、この2つの両極の対立構造として統治を描き出して、国家と個人の関係をどういうふうに組み立てるのかと、こういう問題意識なんです。そうしますと、国家と個人の間に介在していたさまざまな中間団体を、これを少なくとも実践はともかく、理念的には全部排除するという構成を取るわけですね。つまり、教会もそうですし、貴族階級もそうですし、あるいはある種の同業組合的なものもあるんですけれど、これを排除して、そして赤裸々な個人を、ある意味では強い個人を、そこに対置するという構造なんですね。じゃあ実践的にすべての中間団体を法制上排除できるかというと、そんなことはないわけで、確かにかつて中間団体というのは、個人に対して抑圧的なアプローチをしたし、あるいは国家といっしょになって個人をいじめたということもあると思います。しかし他方で、個人を国家から守ってくれるとか、まあなんというか、優しく受け止めてくれて、居場所を与えてくれるという効果もあったと思うんですね。この中間団体の持っている両義性をいかに調停するかということを、フランスはセクト法に至るまで、本当に悩んでやってきているわけですね。じゃあ日本にそれがあるのかというと、残念ながら、そこはもう、ほとんど欠落しているということなんじゃないかと。 島薗進:日本の戦後の法体系で信教の自由とか政教分離ということを考える時には、やはりアメリカ合衆国の影響というものが大きかったわけなんですね。で、アメリカの考え方は、要するに宗教的なマイノリティを守るといいますかねえ、多様な宗教団体がそれぞれに自由な活動ができる、これがまあ、ある種、国是のようにもなっている国です。で、そういう意味では、フランスと非常に違うんですね。アメリカ的な、宗教的なマイノリティの権利を守る、それが社会の弱者の擁護にもつながると、こういう考え方が従来の日本には強かった。これはしばしば、こういう言葉が適切かどうかは検討の余地がありますが、宗教性善説と言ったりしていますがね、アメリカ的な影響を受けながら、日本にそういうものが入ってきたというところがあります。今の宗教法人法はそういう前提に則っているとすると、それが妥当なのかどうか。宗教性善説的な考え方で宗教団体を見てきたことの限界を考え直さなきゃならないという、そういうところに来ているんじゃないかなというふうに私は思います。 田中優子:私ね、先ほどの金塚さんの、フランスが宗教というものを、啓蒙思想が宗教を乗り越えてきたという、この言葉を聞いたときに、ここが日本と違うんだ、日本は違うんだと思いましたね。例えば古代の国家は、やはり仏教とともに成立するわけですよ。仏教が入って来たときに漢字もはいってくるし、いろいろな道具が入ってくるし、で、その後は、中国に僧侶たちを留学させて、この動きってなんなのかっていうと「権威」です。つまり国家に権威というものを与えるために仏教を使ったんですね。で、その象徴が大仏建立だったんですよ。これ、明治もそうなんですが、明治の場合には、今度はそれまで天皇家も仏教だったのに、突然仏教を止めろみたいな話になって、で、個人の信仰の問題なんて一切考慮せずに、とにかく今度は神道なんだと、これを天皇制と結びつけます。そういう歴史を見てくると、宗教と国家の関係を啓蒙思想によって乗り越えようとか、哲学によって乗り越えようとか、そういうことを一度もやっていないんですね。乗り越え方は考えたことが一度もない、という状態のなかで、いまだに、私はやっぱり、宗教に対するある種の権威的な情動というんでしょうか、で、その情動を利用する政権、そういうものが残ってしまっているような気がするんです。 小原克博:田中さんの指摘のなかで大事だと思ったのは、基本的には国家鎮護であったり、国家を統治するために宗教を使ってきた。場合によっては宗教教育を使ってきた。で、江戸時代の場合であれば、儒学とか忠とか孝を中心とするような、まあ、つまり、お上にはしっかりと従いなさいと、目上の人の言うことは絶対聞きなさいみたいな、いわばその、集団を安定的に維持するために宗教画使われ、それが道徳や価値観として、江戸時代が終わったあともずっと続いてきていると思うんですよ。それは明治になってからも、将軍が天皇に変わっても、基本構造は変わりませんし、それから戦前から戦後に変わっても、その構造はあまり変わっていないと思うんですよね。ですから、個人が自立していくという経験を、ひょっとしたら、まだしていないんじゃないかと思います。 櫻井義秀:政治と宗教の関係というのは、日本というより、東アジア自体が、政治が宗教を使うという側面が非常に強いんだと思います。中国では「宗教事務条例」というのができまして、宗教団体を行政的に管理すると。このカルト団体、邪教というふうな形で言われていますけれども、これを国がある意味で徹底的に統制排除するというやり方をやって、中国公民の安全を国家が保証するという、非常にフランスとは別の形で、典型的な統制閣下ができちゃっているわけですね。ですから、宗教団体のさまざまな逸脱例というものがあると思うんです。で、その逸脱した場合に、行政的に管理統制していくのか、その都度、政治団体でもいいですし、社会団体でもいいですけど、批判しながら行動を抑制させていくのか、このやり方っていうのをもう少し考えなければいけないんじゃないかなって思うんですね。 Reply ↓
shinichi Post author18/04/2023 at 8:18 pm 法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律 ウィキペディア https://ja.wikipedia.org/wiki/法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律 法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律(令和4年法律第105号)は、「法人などによる不当な寄附の勧誘を禁止するとともに、当該勧誘を行う法人などに対する行政上の措置等を定めることにより、消費者契約法とあいまって、法人等からの寄附の勧誘を受ける者の保護を図ること」を目的として制定された日本の法律である。略称は法人寄附不当勧誘防止法。 2022年12月16日に公布され、罰則など一部規定を除き、2023年1月5日に施行された。 概要 本法は、旧統一教会問題を契機に立法された法律である。主な内容は次の通り。 寄付の勧誘に関する規制 寄付の勧誘の際、不当勧誘行為で寄付者を困惑させることの禁止 借り入れ等による資金調達の要求の禁止 寄付の意思表示の取消し 禁止行為に基づく寄付の意思表示をした場合の取消し 子や配偶者が生活費など将来受け取るべき分も返還請求することができる 構成 第1章 総則(第1条 – 第2条) 第2章 寄附の不当な勧誘の防止 第1節 配慮義務(第3条) 第2節 禁止行為(第4条・第5条) 第3節 違反に対する措置等(第6条・第7条) 第3章 寄附の意思表示の取消し等(第8条 – 第10条) 第4章 法人等の不当な勧誘により寄附をした者等に対する支援(第11条) 第5章 雑則(第12条 – 第15条) 第6章 罰則(第16条 – 第18条) 附則 制定までの経緯 2022年7月8日発生の安倍晋三元首相への銃撃事件以降に表面化した世界平和統一家庭連合(旧統一教会)をめぐる様々な問題が注目を集めたことが制定のきっかけとなった。 消費者庁が設置した有識者検討会が10月に公表した報告書を基に与野党協議を重ね、法案化した。法案の条文で「保護を図る」と謳われている元宗教2世信者から、その内容が不十分だと指摘されたり、法案の閣議決定後も野党の要望を踏まえて法案が修正された。 2013年12月以来約9年ぶりに参議院本会議が土曜日に行われた。 略歴 2022年12月8日 – 衆議院消費者問題に関する特別委員会において可決 同日、衆議院本会議においても可決、日本共産党とれいわ新選組が反対 同月10日 – 参議院消費者問題に関する特別委員会において可決された 同日 – 参議院本会議においても可決され成立、日本共産党とれいわ新選組が反対(不起立)であった 同月16日 – 公布 2023年1月5日 – 一部規定を除き施行 反対運動 2022年11月、特定非営利活動法人である国際協力NGOセンター、新公益連盟、セイエン、日本NPOセンター、日本ファンドレイジング協会は、非営利団体への寄付がこの法律によって萎縮することを懸念し、「NPO等を含む一律の規制」をやめること、「当事者も含めた、慎重な議論」をすることを要求する署名活動をChange.org上で行った。 Reply ↓
shinichi Post author18/04/2023 at 11:08 pm (sk) 権威や権力に従ってしまうと 人間は平等でなくなる 権威や権力に従ってしまうと 人間は良心を忘れてしまう 権威や権力に従ってしまうと 人間の権利は失われる 権威や権力に従ってしまうと 人間は自由でなくなる 権威や権力に従ってしまうと 人間は人間でなくなる Reply ↓
[こころの時代] 宗教団体と法規制の現状
「信教の自由」と法規制
「徹底討論 宗教と“カルト”」シリーズvol.4
NHK
https://youtu.be/kibTUYuv61E
宗教団体が反社会的な活動や著しい人権侵害を行ったとき、どのようにして歯止めをかければよいのか?2022年12月、旧統一教会による被害者を救済するため、不当な寄附行為を禁じる新しい法律が成立した。こうした宗教団体に対する法規制と、憲法が保障する「信教の自由」との兼ね合いが、今、問われている。
旧統一教会の問題を手掛かりに、宗教団体への法規制と「信教の自由」について、宗教問題の現場・最前線で活動してきた研究者に憲法学者、法律家を加えた6人が、徹底討論する3本シリーズの第1弾。
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徹底討論 問われる宗教と“カルト” VOL.4 信教の自由と法規制(前編)
初回放送日: 2023年4月2日
去年12月、旧統一教会による被害者を救済するため、不当な寄附行為を禁じる新しい法律が成立した。宗教団体への法規制と憲法が保障する「信教の自由」との兼ね合いを、どのように考えたらよいのか。
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【出演者】
島薗 進(宗教学者・東京大学名誉教授) 、櫻井義秀(宗教学者・北海道大学大学院教授)、小原克博(牧師・同志社大学教授)、金塚彩乃(弁護士)、駒村圭吾(憲法学者・慶應義塾大学教授)、田中優子(社会学者・法政大学名誉教授)
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櫻井義秀:新法は「法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律」ということで、現在はこれを縮めまして「法人寄附不当勧誘防止法」と言われている。法人が寄附をお願いする場合は、お願いされた方の自由な意思を侵害することなく、その人の生活を困難にすることがないように、十分配慮しなきゃいけないと、配慮義務というのが設けられました。
金塚彩乃:確かにこの新法をこんなに早く異例のスピードで出来た法律かなと。これができたということは、確かに非常に大きな進歩なのかなと。この法律がそんざいすると、できたということ自体がまず重要なんだろうとは思うけれども、実務家の立場からすると、どうやって使うんだろうと、正直に考えているところです。おそらく今後実務上、裁判が起こされていったときに、さまざまな工夫が裁判所との間でなされて、実効性のあるものになっていくのかなと思うけれども、あまりにちょっとピンポイントなのかなということを思いました。さまざまな問題に対してどのように向き合うのかなといった視点がどうしても見えてこない部分が、この立法で済まされてしまうんじゃないのかなといった懸念を持っておりまして。
島薗進:今問題になっていること、そこでは何か解決したような気がするけれども、何か問題の根にはふれていないというか、向き合っていないということがあったと思います。
駒村圭吾: アリバイ作りのために、あるいはガス抜きのために法律をつくるということが行われるんであれば、これもう本末転倒な話だと思うんですね。
田中優子:犯罪は犯罪じゃないか。それを守る聖域なんて本当はあってはならないわけなんで、ただ宗教の場合には、ご本人がそう思っていないという大きな問題があって、その本人が届けないというようなことも起こると思うんですけれど、しかしそれは周囲が、社会がそれをちゃんと見るということが大事だと思うんです。
コミュニティが持っていた機能が機能不全に陥っている、あるいは存在しなくなっていると、そういう近代社会、あるいは近代家族の問題というのはあると思うんですよね。
小原克博:近代以降、現代に近くなればなるほど、個人がむきだしのままそこに放り出されて、社会とかコミュニティが関与できなくなったという、この変化と言うのは非常に大きいと思います。
[こころの時代] フランス「セクト規制法」から考える
「信教の自由」と法規制
「徹底討論 宗教と“カルト”」シリーズvol.5
NHK
https://youtu.be/TqbxNOuBLpM
国家による宗教団体に対する法規制は、その国の文化や歴史によって、さまざまな形で存在している。フランスなど、諸外国における宗教と法規制の関係は、どうなっているのか?他の国の事例を参照することで、日本における宗教と社会、国家の在り方が見えてくる。
旧統一教会の問題を手掛かりに、宗教団体への法規制と「信教の自由」について、宗教問題の現場・最前線で活動してきた研究者に憲法学者、法律家を加えた6人が、徹底討論する3本シリーズの第2弾。
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徹底討論 問われる宗教と“カルト” VOL.5 信教の自由と法規制(後編)
初回放送日: 2023年4月9日
宗教団体への法規制と憲法が保障する「信教の自由」との兼ね合いを、どのように考えたらよいのか。フランスなど諸外国の法規制の現状を参照しながら、憲法が掲げる「信教の自由」の思想的背景を明らかにし、宗教と社会、国家のあるべき関係を考えていく。
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【出演者】
島薗 進(宗教学者・東京大学名誉教授) 、櫻井義秀(宗教学者・北海道大学大学院教授)、小原克博(牧師・同志社大学教授)、金塚彩乃(弁護士)、駒村圭吾(憲法学者・慶應義塾大学教授)、田中優子(社会学者・法政大学名誉教授)
金塚彩乃:フランスの、名前がなんと訳すのかとありますけれども、よく「反セクト法」とか「セクト規制法」というふうに言われているものが、昨今、さまざま議論されているということですが、もともとの名称はちょっと違ってですね、人権と基本的自由に対する侵害をもたらす動きの予防と抑制を強化するための法律」という名前になっておりまして、こちらでは簡単にするために「セクト規制法」と呼ばせていただきたいと思います。このセクト規制法の中身、いわゆるマインドコントロール罪てきなですね、無知あるいは脆弱な状況を不法に利用する罪といったものがあります。2つの類型がありまして、ひとつが未成年あるいは、年齢、病気、身体の障害、肉体的あるいは精神的問題、妊娠といったことを抱えている、こういった弱い立場にある人たちが著しい脆弱な状態にあることを行為者が知っている場合というのが一点、もう一点は、著しい圧力あるいは繰り返される圧力、もしくはその判断力を侵害する技術により生じた心理的あるいは身体的な隷属状態にある人、それが2つ目のカテゴリーでありまして、そういうカテゴリーの人に対して、何らかの行為を行わせ、あるいは行わせないために、無知の状態では脆弱な状態を不当に濫用する行為、これを処罰するというのが、日本でマインドコントロール罪というような言い方で知られている、フランスの「無知・脆弱の不法利用罪」といったものになっております。私が興味深いなと思っているのが、その思想的背景でありまして、セクト規制法が2001年に作られたときに国会で議論がありましたけれども、ここで出てくるのが啓蒙思想ですね。やはりフランス革命の伝統があるフランスは、フランス革命というのは、いかにキリスト教を乗り越えるかといったところで出てきましたが、その背景にあった啓蒙思想というのは、宗教的ドグマであったりとか、偏見、そういった暗黒主義を光によって、啓蒙によって、乗り越えていくんだと、といったものがありましたが、ここでも、セクトとの戦いというのは、この同じ啓蒙思想に根を張るんだといったことが言われています。そしてもう一点、フランスの特徴として、フランス法の特徴としてあるのが、弱い人を守るという観点があります。おそらく日本の法律であったりとか政治の問題というのは、いかに市民や国民を守るかといったことが、全面的に議論がなかなかされていない部分があるんじゃないのかなというふうに思っています。
駒村圭吾:フランス憲法の最も革新的な前提とは何かということを、少なくとも日本の憲法学者たちはこうとらえてきたんですね。つまりその、個人というものが一番大切でしょうと。この個人というものを、さまざまな共同体とか、あるいは歴史的な文脈から括りだして、自津的主体としてまず立てるという、こういうことですよね。国家、それから個人という、この2つの両極の対立構造として統治を描き出して、国家と個人の関係をどういうふうに組み立てるのかと、こういう問題意識なんです。そうしますと、国家と個人の間に介在していたさまざまな中間団体を、これを少なくとも実践はともかく、理念的には全部排除するという構成を取るわけですね。つまり、教会もそうですし、貴族階級もそうですし、あるいはある種の同業組合的なものもあるんですけれど、これを排除して、そして赤裸々な個人を、ある意味では強い個人を、そこに対置するという構造なんですね。じゃあ実践的にすべての中間団体を法制上排除できるかというと、そんなことはないわけで、確かにかつて中間団体というのは、個人に対して抑圧的なアプローチをしたし、あるいは国家といっしょになって個人をいじめたということもあると思います。しかし他方で、個人を国家から守ってくれるとか、まあなんというか、優しく受け止めてくれて、居場所を与えてくれるという効果もあったと思うんですね。この中間団体の持っている両義性をいかに調停するかということを、フランスはセクト法に至るまで、本当に悩んでやってきているわけですね。じゃあ日本にそれがあるのかというと、残念ながら、そこはもう、ほとんど欠落しているということなんじゃないかと。
島薗進:日本の戦後の法体系で信教の自由とか政教分離ということを考える時には、やはりアメリカ合衆国の影響というものが大きかったわけなんですね。で、アメリカの考え方は、要するに宗教的なマイノリティを守るといいますかねえ、多様な宗教団体がそれぞれに自由な活動ができる、これがまあ、ある種、国是のようにもなっている国です。で、そういう意味では、フランスと非常に違うんですね。アメリカ的な、宗教的なマイノリティの権利を守る、それが社会の弱者の擁護にもつながると、こういう考え方が従来の日本には強かった。これはしばしば、こういう言葉が適切かどうかは検討の余地がありますが、宗教性善説と言ったりしていますがね、アメリカ的な影響を受けながら、日本にそういうものが入ってきたというところがあります。今の宗教法人法はそういう前提に則っているとすると、それが妥当なのかどうか。宗教性善説的な考え方で宗教団体を見てきたことの限界を考え直さなきゃならないという、そういうところに来ているんじゃないかなというふうに私は思います。
田中優子:私ね、先ほどの金塚さんの、フランスが宗教というものを、啓蒙思想が宗教を乗り越えてきたという、この言葉を聞いたときに、ここが日本と違うんだ、日本は違うんだと思いましたね。例えば古代の国家は、やはり仏教とともに成立するわけですよ。仏教が入って来たときに漢字もはいってくるし、いろいろな道具が入ってくるし、で、その後は、中国に僧侶たちを留学させて、この動きってなんなのかっていうと「権威」です。つまり国家に権威というものを与えるために仏教を使ったんですね。で、その象徴が大仏建立だったんですよ。これ、明治もそうなんですが、明治の場合には、今度はそれまで天皇家も仏教だったのに、突然仏教を止めろみたいな話になって、で、個人の信仰の問題なんて一切考慮せずに、とにかく今度は神道なんだと、これを天皇制と結びつけます。そういう歴史を見てくると、宗教と国家の関係を啓蒙思想によって乗り越えようとか、哲学によって乗り越えようとか、そういうことを一度もやっていないんですね。乗り越え方は考えたことが一度もない、という状態のなかで、いまだに、私はやっぱり、宗教に対するある種の権威的な情動というんでしょうか、で、その情動を利用する政権、そういうものが残ってしまっているような気がするんです。
小原克博:田中さんの指摘のなかで大事だと思ったのは、基本的には国家鎮護であったり、国家を統治するために宗教を使ってきた。場合によっては宗教教育を使ってきた。で、江戸時代の場合であれば、儒学とか忠とか孝を中心とするような、まあ、つまり、お上にはしっかりと従いなさいと、目上の人の言うことは絶対聞きなさいみたいな、いわばその、集団を安定的に維持するために宗教画使われ、それが道徳や価値観として、江戸時代が終わったあともずっと続いてきていると思うんですよ。それは明治になってからも、将軍が天皇に変わっても、基本構造は変わりませんし、それから戦前から戦後に変わっても、その構造はあまり変わっていないと思うんですよね。ですから、個人が自立していくという経験を、ひょっとしたら、まだしていないんじゃないかと思います。
櫻井義秀:政治と宗教の関係というのは、日本というより、東アジア自体が、政治が宗教を使うという側面が非常に強いんだと思います。中国では「宗教事務条例」というのができまして、宗教団体を行政的に管理すると。このカルト団体、邪教というふうな形で言われていますけれども、これを国がある意味で徹底的に統制排除するというやり方をやって、中国公民の安全を国家が保証するという、非常にフランスとは別の形で、典型的な統制閣下ができちゃっているわけですね。ですから、宗教団体のさまざまな逸脱例というものがあると思うんです。で、その逸脱した場合に、行政的に管理統制していくのか、その都度、政治団体でもいいですし、社会団体でもいいですけど、批判しながら行動を抑制させていくのか、このやり方っていうのをもう少し考えなければいけないんじゃないかなって思うんですね。
法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律
ウィキペディア
https://ja.wikipedia.org/wiki/法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律
法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律(令和4年法律第105号)は、「法人などによる不当な寄附の勧誘を禁止するとともに、当該勧誘を行う法人などに対する行政上の措置等を定めることにより、消費者契約法とあいまって、法人等からの寄附の勧誘を受ける者の保護を図ること」を目的として制定された日本の法律である。略称は法人寄附不当勧誘防止法。
2022年12月16日に公布され、罰則など一部規定を除き、2023年1月5日に施行された。
概要
本法は、旧統一教会問題を契機に立法された法律である。主な内容は次の通り。
構成
制定までの経緯
2022年7月8日発生の安倍晋三元首相への銃撃事件以降に表面化した世界平和統一家庭連合(旧統一教会)をめぐる様々な問題が注目を集めたことが制定のきっかけとなった。
消費者庁が設置した有識者検討会が10月に公表した報告書を基に与野党協議を重ね、法案化した。法案の条文で「保護を図る」と謳われている元宗教2世信者から、その内容が不十分だと指摘されたり、法案の閣議決定後も野党の要望を踏まえて法案が修正された。
2013年12月以来約9年ぶりに参議院本会議が土曜日に行われた。
略歴
反対運動
2022年11月、特定非営利活動法人である国際協力NGOセンター、新公益連盟、セイエン、日本NPOセンター、日本ファンドレイジング協会は、非営利団体への寄付がこの法律によって萎縮することを懸念し、「NPO等を含む一律の規制」をやめること、「当事者も含めた、慎重な議論」をすることを要求する署名活動をChange.org上で行った。
(sk)
権威や権力に従ってしまうと
人間は平等でなくなる
権威や権力に従ってしまうと
人間は良心を忘れてしまう
権威や権力に従ってしまうと
人間の権利は失われる
権威や権力に従ってしまうと
人間は自由でなくなる
権威や権力に従ってしまうと
人間は人間でなくなる