人口増加の加速度(大藤ヨシヲ)

  • 人口増加の加速度は落ち続けている
  • アジアでは少子化が広がりつつある
  • 人口の増減に最も大きい影響を与えるのが、出生率
  • 一人の女性が生涯に何人の子供を持つかという指標が合計特殊出生率
  • 1960年代以降、世界の合計特殊出生率は低下している
  • 合計特殊出生率の低下の背景には、女性たちが自分の人生の選択権を持てるようになったことが挙げられる

One thought on “人口増加の加速度(大藤ヨシヲ)

  1. shinichi Post author

    人口増加の加速度は落ちてきている?アジアで広がりつつある少子化と地球の人口の未来

    by 大藤ヨシヲ
    データのじかん
    https://data.wingarc.com/population-growth-18836

    人口爆発が叫ばれる時代、そんな認識が一般的に広がっています。

    しかし、そんな認識に反するように、人口の増加に大きく寄与しているアジア地域では、日本と同様に出生率が低下していることはご存知でしょうか?

    今回は、アジアの現状を起点に意外と知られていない世界人口の今をご紹介いたします!

    出生率ってそもそもどんな指標なの?

    人口の増減に最も大きく影響するのが、出生率です。

    出生率は一定人口に対する年間の出生数で測られる指標。そのなかでも、ニュースなどでよく取り上げられるのが、合計特殊出生率です。この指標は、一人の女性が生涯に何人の子供を持つか、を計測しています。計測方法として、一人の女性が出産可能である期間とされる15歳から49歳までに産む子供の数の平均を示しています。

    合計特殊出生率を算出することで、異なる母集団であっても出生による人口の自然増減を比較できるようになるため、世界各国で合計特殊出生率が計測されています。

    近年では、乳幼児の死亡率が低下したことで、合計特殊出生率が2.1以上の値を取っていれば、人口は増加傾向にあると考えてよく、逆に合計特殊出生率が2.1以下であれば、人口は減少傾向にあるということになります。

    他にも、人口1,000人当たりにおける出生数を計測する普通出生率なども各国で計測されています。

    日本の合計特殊出生率は1.44(一人の女性が生涯に持つ子供の数の平均は1.44人)、普通出生率は 7.4(1000人あたりの出生数は7.4人)と非常に低い値となっています。

    アジアで広がる少子化傾向

    では、今回の記事の主題である東アジア、南アジア地域の合計特殊出生率はどのくらいなのでしょうか?世界平均も参照しながら見てみましょう。

    下の図は、1960年以降の世界と東アジア、南アジア地域の合計特殊出生率をグラフ化したものです。

    1960年頃には5だった世界の合計特殊出生率は、2016年には2.44まで低下しています。

    さらに、日本や韓国など、少子化が加速する国を多数含む東アジア地域の合計特殊出生率は、2016年時点で1.8と少子化が進んでいることがわかります。つまり人口増加の加速度は徐々に緩やかになっていきているといえるでしょう。

    また、人口増加が加速している印象のインドを含む南アジア地域においても合計特殊出生率は2.46と世界平均を若干上回る程度になっています。

    さらに、アジアの中でも日本と関わりの大きい国の合計特殊出生率について詳しく見ていくと、韓国と日本の合計特殊出生率がおしなべて低いことがわかります。また、ほとんどの国の出生率が60年代以降に減少する中で、日本は、60年代にはすでに出生率が2を割る値をとっており、少子化先進国であることがわかります。

    このような合計特殊出生率の低下の背景には、新生児の死亡率低下など、様々な要因が考えられますが、一番の理由は、女性の希望出生率が低下してきている、ということだと考えられます。

    希望出生率の低下の背景には、女性が男性と同様に教育を受けられるようになり、自分の進路やキャリアを選択できる女性が増えたことで、「子供を生む」ということが人生の大きな役割から人生の選択肢の一つ、と捉えられるようになったことが挙げられます。また、スマートフォンなどの普及により、情報へのアクセスが容易になったことも大きな要因に挙げられています。

    実際に、2015年時点で、アジアのほとんどの国で、中等教育を受ける女性の割合が45%を超えており、教育におけるジェンダーギャップが徐々に解消されていることがわかります。

    その結果、アジアの主要国の中でも合計特殊出生率が高いフィリピン、インドネシア、インド、ベトナムでも、女性の希望出生率は1990年以降、継続的に減少傾向が続いています。

    これから地球はどうなる?国連による2100年までの人口予測

    現在の地球の人口はおよそ73億人と言われています。

    さらに、国際連合は、現時点での出生率や死亡率を参考に、2100年までの世界人口の推移を推計しています。
    最新版となる2018年度に発表された推計では、人口の推移を下記の図のように予測しています。

    このグラフを見ると、1950年には、25億人だった世界人口が、わずか70年で3倍近くまで増加しており、「人口爆発」の凄まじい勢いが感じられます。

    さらに、2016年以降の推計を見て見ると、人口増加のスピードが最も早い高位の推計値では、2045年頃に世界人口は100億人を突破するとされています。また中位の推計値でも、2055年には、100億人に達するとの予測が立っています。

    そうした中で、注目されているのが低位の推計値です。この推計値では、人口は2050年代に87億人で頭打ちを迎え、2055年頃には、むしろ世界人口は減少に転じるだろうと予測されています。その後じわじわと人口は減り続け、2100年には、現時点の世界人口である73億人を割っているとされています。

    まとめ

    今回ご紹介したことをまとめると、

    • 人口の増減に最も大きい影響を与えるのが、出生率
    • 異なる国の間での比較に便利なのが、一人の女性が生涯に何人の子供を持つかという指標である合計特殊出生率
    • 1960年代以降、世界の合計特殊出生率は低下している
    • 合計特殊出生率の低下の背景には、女性たちが自分の人生の選択権を持てるようになったことが挙げられる
    • 現在の世界人口は73億人

    ということです。

    技術の発達により、世界規模で人々の生活が急速に変化する中で、予測される未来はどんどんと変わっていきます。

    少子高齢化や人口減少は一見ネガティヴな言葉に感じられるかもしれませんが、ジェンダーギャップが縮小され、自分の人生に選択権を持って生きられる人が増えた結果だと考えるとものすごくいいことだと感じられます。

    超加速度的に進んだ人口増加の先にあるのは、さらなる増加による人口過剰なのか、はたまた加速度的な減少の先にある超少子高齢化社会なのか、行く末はまだわかりませんが、どんな値が出ても、人々が今よりよりよく生きることができているならば、それは良い未来なのだ、と思います。

    あなたは人口の推計値をみてどんな未来を予想しましたか?

    ぜひ一緒に考えてみてください!

    Reply

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *