韓国の出生率

韓国の22年の合計特殊出生率は0.78と過去最低だったが、ソウルは0.59でさらに低い。住宅や労働条件が厳しい大都市の住民ほど出産を控える様子がうかがえる。
将来的に国民年金を負担する労働力が必要となるから、子どもを産めという政策は人間扱いではない。少子化でも人々がいかに幸せに暮らせるかを考えるべきだ。

3 thoughts on “韓国の出生率

  1. shinichi Post author

    出生率「0.78」世界最速で少子化が進む韓国で起きていること 経済苦に悩むシングルマザーを支えるのは

    2023年2月27日
    <格差に沈む国>㊤
    by 相坂穣
    https://www.tokyo-np.co.jp/article/233409

     部屋中の壁に生えたカビが異臭を放ち、台所やベッドが朽ちかけていた。2021年に未婚で長男を産んだ韓国仁川インチョン市のキム・ミジョン=仮名=(38)は、親族から借りた「屋上部屋」に母子2人で暮らし始めた。

     韓国で住宅屋上に仮設されたコンテナの部屋は、20年に米アカデミー賞を受けた映画「パラサイト 半地下の家族」で格差の象徴とされた半地下部屋と並ぶ劣悪な住環境だ。

     不衛生な環境のせいか、長男は生後3週間で発熱して衰弱した。ウイルス感染症と診断され、集中治療で一命を取り留めた。だが、その後も免疫不全が続き、入退院を繰り返す。

    ◆妊娠後、交際相手の親に別れを迫られ

     長男の父は名門大学を卒業した20代の理工系研究者だ。交際して2年で妊娠が分かり、相手の親にあいさつに行くと、別れるよう迫られた。「彼の母親は、立派な高学歴者に育てた息子の人生を、年上の女が妨害すると思い私を嫌った」

     ミジョンは長年、広告デザインの仕事を続け、コンピューターの技術も持つ。「1人で稼ぎ、育てられる」。自信はあった。しかし病気の乳児を受け入れる保育園は見つからず、働きに出られなかった。困窮の末に申請した生活保護も、所有していた車を売ったり、資格審査を受けたり、受給までに時間がかかった。

     助けを求めたのが、ソウル市内のキリスト教系団体「主愛チュサラン共同体」だった。さまざまな事情を抱えながらも手元で子どもを育てたいと願う親を支援している。ミジョンも社会福祉が専門の職員に窮状を訴え、おむつやミルクなどの支援を受けて生活を立て直した。

     さらに同団体は「赤ちゃんポスト」を設置して子育てができない親から乳児を預かり、児童福祉施設への入所や養子縁組なども仲介する。09年冬の設置以来、12年間で約2000人を引き受けた。同団体と交流のある熊本県の慈恵病院が運営する赤ちゃんポストが07〜21年に預かった161人と比べ十数倍多い。

    ◆物質的豊かさを追い 人類史上まれな低出生率

     団体代表の李鍾洛イジョンラク(67)は「韓国は経済大国となったが、国民はマンションや車など物質的な豊かさを他人と競い、子育ては後回しになった」と語る。

     22日に韓国統計庁が発表した昨年の合計特殊出生率(女性1人が生涯に産むと見込まれる子どもの数)は、過去最低の0.78。戦乱や飢餓のない平和な社会としては人類史上でもまれに見る低さだ。
     李は婚外子比率に注目する。出生率1.65から約30年で1.8まで回復したフランスは20年の同比率が62.2%。経済協力開発機構(OECD)の平均は41.9%だが、韓国は2.5%。日本の2.4%と並び最も低い水準だ。「韓国もシングルマザーを差別するような文化を脱し、すべての親が安心して子育てできる政策、公的支援が必要だ」

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  2. shinichi Post author

    家賃2万1000円、ソウル駅前に老人の貧民街…「若者も年寄り見れば不安になる」

    2023年2月28日
    <格差に沈む国>㊥
    by 相坂穣
    https://www.tokyo-np.co.jp/article/233571

     大手IT企業などが入る高層ビルが並ぶソウル駅前の大通りから路地裏に入ると、老朽化した低層の民家や商店が軒を連ねる。炊き出しボランティアから弁当を受け取る人々も目につく。ソウル屈指の貧民街「東子洞小部屋村」だ。

    ◆半地下よりも劣悪

     古びた建物の中には、ウナギの寝床のように細長く仕切った1坪(3.3平方メートル)ほどの小部屋が並ぶ。半地下や屋上部屋よりも劣悪な環境だが、家賃は月20万ウォン(2万1000円)前後にすぎない。ここに住む約1000世帯の大半は独居老人や生活保護受給者が占める。

     「借金取りに追われたり、ホームレスを経験したりした人が集まる場所だ」。小部屋村に来て十数年という金塙泰キムホテ(78)が言った。

     中部、忠清北道チュンチョンプクトの農家の長男として育ったが、畑仕事が肌に合わず、20代でソウルに出てきた。建築作業員として全国の道路や橋などの建設現場で働き、1988年のソウル五輪後は経済的余裕も感じた。

     しかし、97年に韓国経済はアジア通貨危機で打撃を受け、公共工事が激減。金は危険な仕事でも引き受けるようになり、高所作業中に落下して臀部でんぶを骨折した。数年間働けなくなり、ソウル駅の地下道で寝る生活となった。2012年からは月約80万ウォンの生活保護を受けて小部屋に住む。

    ◆「路上に比べれば…」

     小部屋は韓国語で「チョクパン」と呼ばれる。「狭苦しい部屋」という意味で、台所はないため携帯ガスコンロや炊飯器などを床に置けば、1人がやっと横になれる空間しか残らない。シャワー代わりの給湯器やトイレは10人以上で共用する。それでも、金は「真冬の極寒の路上に比べれば天国だ」と話す。

     韓国で経済的困難を抱える高齢者が多い背景には、「漢江ハンガンの奇跡」と呼ばれる経済成長によるひずみがある。韓国は60~70年代の朴正煕パクチョンヒ政権下で経済発展を遂げた一方、福祉制度の整備は進まなかった。

     国民皆年金を達成したのは99年で、日本の61年より大きく遅れた。統計庁によると、高齢者の貧困率(世帯収入が全体の中央値の半分以下である人々の割合)は21年に37.6%で、経済協力開発機構(OECD)加盟国38カ国で最悪となり、加盟国平均13.5%の3倍近い。

     さらに世界最速ペースで進む少子化により、韓国の総人口に占める生産年齢人口(15〜64歳)の割合は、20年の71.5%から40年には55.7%まで低下すると推計される。現役世代が減る一方、高齢者が増え続ける。国民年金制度が現行のまま継続された場合、55年ごろには年金基金の積立金が枯渇するとの予想もある。

     金は結婚せず、子どもを持たない人生を振り返って言った。「若者も年寄りの苦しみを見れば不安になるだろう。子どもを育てる家を買うのも難しく、教育にも金がかかる。簡単に産める環境ではない」

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  3. shinichi Post author

    生活を失いたくない…夫婦が子どもを持たないと決めた理由 不動産高騰のソウルでは出生率0.59に

    2023年3月1日 06時00分
    <格差に沈む国>㊦
    by 相坂穣
    https://www.tokyo-np.co.jp/article/233760

     画一的なデザインの鉄筋コンクリートの高層住宅が連なる。結婚して8年になるフリーライター崔至恩チェジウン(42)と同業の夫、魏根雨ウィクンウ(42)はソウル近郊の団地で2月中旬、新婚当時と変わらずに手をつないで散策を楽しんでいた。

     「夫婦の愛情や生活を失いたくない。安定収入がない私たちが子どもを育てれば、経済的、時間的に余裕がなくなる」。崔は3年前、魏と話し合い、子どもを産まないと決めた。

     韓国で近年「Double Income No Kids」(共働き子どもなし)を意味する「DINK(ディンク)族」が流行語になった。崔は、自らと同じDINK族の女性17人の声を集めた著書「ママにはならないことにしました」(2020年)が注目を集めた。

     儒教の影響を受けた家父長制的な家族観や、育児は母親が担うべきだという考え方に、抵抗感を持つ女性が増えた。昇進や待遇で男性の同僚との差別を感じ、出産や育児休暇にともなう「キャリア断絶」を懸念する女性も多い。

    ◆賃貸住まいは持ち家より子どもが少ない

     実際、21年の政府統計では、結婚5年以内の夫婦のうち子どもがいる割合は前年比1.3ポイント減の54.2%。住環境による格差もあり、賃貸住宅に住む夫婦のうち子どもがいるのは50.1%で、持ち家に住む夫婦と比べ9.8ポイント低かった。

     韓国では国内総生産(GDP)の大半を占める大企業や、就職に有利とされる名門大学の多くがソウルに集中するため、地方からの若者の流入が続く。不動産価格が高騰し、昨年11月のソウル市内のマンション平均価格は12億ウォン(約1億2000万円)を超えた。韓国の平均賃金は日本とほぼ同水準。30代の子育て世代が親の資金援助なしに購入するのは容易ではない。

     崔と魏は親からの支援を受けず、賃貸アパートで暮らす。韓国には結婚時に男性側が住宅を用意する慣習も残り、魏は「家が買えないから結婚をしない人も増えている」と話す。

    ◆「少子化は国を殺す」と言われても

     韓国の22年の合計特殊出生率(女性1人が生涯で産むと見込まれる子どもの数)は0.78と過去最低だったが、ソウルは0.59でさらに低い。住宅や労働条件が厳しい大都市の住民ほど出産を控える様子がうかがえる。

     韓国政府は00年代半ばから対策に280兆ウォンを投じたが、少子化は止まらない。与党「国民の力」の朱豪英チュホヨン院内代表は2月中旬、国会演説で「少子化は音もなく国を殺す”がん”だ」と対策強化を訴えた。

     しかし崔は冷ややかだ。「将来的に国民年金を負担する労働力が必要となるから、子どもを産めという政策は人間扱いではない。少子化でも人々がいかに幸せに暮らせるかを考えるべきだ」と話す。その上で、男女、老人と若者、ソウルと地方、大企業と中小企業などの格差を挙げ、「これらを解消しないと、安心して子育てできる環境にはならない」と指摘する。

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