Sさん

(読売新聞の対中国に対する世論調査)
第一の設問は「『反日デモ』に伴う、日本人や日本大使館などに対する暴力行為について、中国は『中国政府に責任はない』としています。あなたは、こうした中国政府の対応に納得できますか、納得できませんか」と問う。これでは「納得する」と答えるのはどう考えても無理で、当然、「納得できない」「どちらかといえば納得できない」で92%を超すのはあたり前だ。
私のように、日本が戦時中にしたことについて、もっときちんと謝るべきだと考える人間でも、この設問だけだと、暴力行為については中国は謝るべきだと思うから、「納得できない」を選ぶ。しかし、この問題は根が深く、それを無視した質問は何の意味もない。単なる中国非難を煽るための材料集めとしかいえないだ。
第二問もほとんど同じで、「反日デモ」による日本側の被害に、中国は正式な謝罪をせず賠償にも応じていないが、「小泉首相はそれらを強く要求すべきかどうか」と問う。これも、どちらかといえばも含め「もとめるべきだと思う」が85%を超す。被害を与えたら損害賠償をするのは当たり前だから、この設問も対中国についての意識調査としてはほとんど意味がない。
読売の世論調査は、以前からその意図な手法が指摘され、問題視されていた。それを敢えて続けるというのは、読者をバカにしているとしか思えない。この程度の操作で、読者を自分の思う方向に誘導できると考えているのだから。一種の知的詐欺行為といっていい。
産経の18日の記事にも驚いた。日本PTA全国協議会が、PTA会員6千人を対象に行なった調査結果だとして、教育基本法に「愛国心」を盛り込むことが「大切」と答えた人が72%いた、と書いている。どういうことかと記事を読むと、その設問は「郷土を愛する心と国際社会の一員としての意識」を盛り込むことが大切、というのだ。これが単なる愛国心とどうつながるか、不思議でならない。明らかな誤報といってもいいものだ。私がデスクならこんな原稿は通さないのはもちろん、筆者を面罵しただろう。

One thought on “Sさん

  1. shinichi Post author

    5月19日(水)
    世論調査のまやかし

     ――読売と産経の例

    http://www.k2.dion.ne.jp/~tetsusnn/bakana/kiben/yorontyousa.htm

     世論調査には落とし穴があることはよく知られていることだし、疑問を持ちながら見ることが大事だと先に書いた。しかし、もろにそのいい加減さ、いや意図的に曲げようとした世論調査結果の例を、読売新聞が見せ付けてくれている。開いた口がふさがらない感じだ。

     18日付け紙面の対中国に対する世論調査結果だが、とにかく設問が一方的で答えを誘導しているとしか思えない。記事の見出しは「北京五輪『不安』74%」「靖国参拝『賛成』48%」というものだ。しかし、設問をみると、普通ならそう答えるだろうなあと思うものばかりだ。

     第一の設問は「『反日デモ』に伴う、日本人や日本大使館などに対する暴力行為について、中国は『中国政府に責任はない』としています。あなたは、こうした中国政府の対応に納得できますか、納得できませんか」と問う。これでは「納得する」と答えるのはどう考えても無理で、当然、「納得できない」「どちらかといえば納得できない」で92%を超すのはあたり前だ。

     私のように、日本が戦時中にしたことについて、もっときちんと謝るべきだと考える人間でも、この設問だけだと、暴力行為については中国は謝るべきだと思うから、「納得できない」を選ぶ。しかし、この問題は根が深く、それを無視した質問は何の意味もない。単なる中国非難を煽るための材料集めとしかいえないだ。

     第二問もほとんど同じで、「反日デモ」による日本側の被害に、中国は正式な謝罪をせず賠償にも応じていないが、「小泉首相はそれらを強く要求すべきかどうか」と問う。これも、どちらかといえばも含め「もとめるべきだと思う」が85%を超す。被害を与えたら損害賠償をするのは当たり前だから、この設問も対中国についての意識調査としてはほとんど意味がない。

     意味を持ってくるのは、続く質問への地ならしという点でだ。「中国はけしからんことをしているよ」という先入観を植えつけた上で、次に2008年の北京オリンピックの開催に不安を感じるかどうかを問う。これでは「大いに感じる」33.5%、「多少は感じる」40.0%と出るのは当たり前で、これも調査の意味がない。かえって、前二つの設問に対する回答より、中国不信の回答が減っている方が、興味があるといえる。

     さらに、その次の設問で、尖閣列島問題などで、小泉首相はもっと日本の立場を明確に主張すべきかどうかを問い、「主張すべきだ」76.7%と小泉を後押しする回答を引き出した上で、「小泉首相が靖国神社を参拝することに、賛成ですか、反対ですか」と質問しているのだから、最早、何をかいわんやだ。ここまで強引に引っ張ってきたのに「反対」(どちらかといえばも含め)44.5%ある方が問題として取り上げるべきだろう。
     これらの作為的数字が一人歩きするのが怖い。

     読売の世論調査は、以前からその意図な手法が指摘され、問題視されていた。それを敢えて続けるというのは、読者をバカにしているとしか思えない。この程度の操作で、読者を自分の思う方向に誘導できると考えているのだから。一種の知的詐欺行為といっていい。

     産経の18日の記事にも驚いた。日本PTA全国協議会が、PTA会員6千人を対象に行なった調査結果だとして、教育基本法に「愛国心」を盛り込むことが「大切」と答えた人が72%いた、と書いている。

     どういうことかと記事を読むと、その設問は「郷土を愛する心と国際社会の一員としての意識」を盛り込むことが大切、というのだ。これが単なる愛国心とどうつながるか、不思議でならない。明らかな誤報といってもいいものだ。私がデスクならこんな原稿は通さないのはもちろん、筆者を面罵しただろう。さすがの読売新聞も、同じデータを使いながら、「愛国心」には触れていない。

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