二宮尊徳

世の中に本当の真理はただ一つしかないが、その真理に近づく入り口はいくつもある。仏教、神道、あるいは仏教でも天台宗、浄土宗、浄土真宗、禅宗などいろいろあるが、これらは何れも一つの真理へ到達するための道に付いている沢山の入口の名前に過ぎない。例えば富士山に登るのに、吉田から、須走りから、須山から、それぞれ登れるが、最終的に頂上に至れば同じ所である。これを、違う目的に到達できる別々の道がある、と考えるのは誤りなのだ。入り口が幾つかあっても、最終的に到達する場所は同じ一つの場所なのだ。ところが世の中では、これらを別々な道であると言い真理が幾つもあるかのように解釈されがちなのだが、もともと仏教思想は紀元前に一人のブッダ釈尊によってとかれたもので、そうして顕された沢山の教義のなかから根本経典を選び出し、それぞれの宗派に分かれて守り伝えていっているに過ぎないのだ。

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