井上宗典

DNA型鑑定は1985年に英国で開発され、日本では89年に警察庁の科学警察研究所が初めて導入した。
当初は塩基配列の一部だけを調べる「MCT118型検査法」が採用されたが、当時の識別率は「1000人に1.2人」。2003年に「STR型検査法」が導入され、精度が向上した。
今年4月、全国の警察に米国製の新たな検査薬が一斉導入され、染色体の検査部位が15か所から21か所に増えた。識別率は「4兆7000億人に1人」から「565京人に1人」に飛躍的に高まり、「万人不同」と言われる指紋とも遜色がないレベルになった。
警察による1年間のDNA型鑑定件数は、1992年は22件だったが、昨年は29万715件。凶悪事件だけでなく、空き巣などの窃盗でも活用されている。
警察庁は、容疑者や遺留物から採取したDNA型をデータベース化しており、これまでに照会で一致した容疑者は6万3118人に上る。
15年4月からは、身元確認のためのDNA型のデータベースの運用を始め、事件や事故に巻き込まれた恐れがある「特異行方不明者」などのDNA型が登録されている。

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1 Response to 井上宗典

  1. shinichi says:

    DNAの謎解き、犯罪も歴史も

    by 井上宗典

    [New門]ニュースの門

    讀賣新聞 2019年11月10日(日曜日)

     犯罪捜査に欠かせないDNA型鑑定。現場に残された遺留物から、犯人を割り出す捜査の「切り札」だ。今年4月に導入された新検査薬で精度が飛躍的に向上し、個人識別率は「565京人に1人」となった。世界の人口(約77億人)をはるかに超え、数字上は別人と間違える可能性はゼロに近い。最近は犯罪捜査以外にも活用されている。

    新鑑定 「565京人に1人」暴く

     第2次世界大戦後のシベリア抑留者の遺骨収集事業で、政府が持ち帰った遺骨のうち、597柱が日本人ではない外国人の骨の可能性が高いことを突き止めたのは、研究者によるDNA型鑑定だった。

     同事業でDNA型鑑定が導入されたのは2003年。遺族から提供されたDNA型と照合し、血縁関係を判定する。70年以上前の1940年代に埋葬された古い骨や歯から抽出したDNAには、日本人特有の配列がなかった。

    10億分の1グラムで可能 判定2~3日

     DNAは「デオキシリボ核酸」の英語略。主に細胞の核の染色体にあり、様々な遺伝情報を記録する。2本の帯が、らせん状に絡んだ構造をしており、内側にA(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)という4種類の化学物質(塩基)が対になって並ぶ。

     同じ配列を繰り返す部分があり、その回数には個人差がある。鑑定ではこの繰り返し回数を比べる。

     犯罪捜査で使われる試料は、血液や唾液、精液、毛根、皮膚、骨、歯、爪、皮膚片など。唾液の場合、ペットボトルやたばこの吸い殻などから採取するケースもある。

     調べたい部分を数百万倍に増幅し、専用の装置でDNA型を自動分析する。1ナノ・グラム(10億分の1グラム)でも鑑定は可能だ。犯罪捜査では、抽出したDNA型を、容疑者のものと照らし合わせる。判定までは通常2~3日程度かかる。

     DNA型鑑定は、未解決事件の捜査で威力を発揮してきた。広島県廿日市はつかいち市で04年10月、高校2年の女子生徒が刺殺された事件では、別の暴行事件で容疑者になった男のDNA型と、現場の遺留物のDNA型が一致。事件から14年後の昨年4月、この容疑者が逮捕された。

     韓国でも今年9月、女性10人が連続で殺害され、映画「殺人の追憶」(2003年)の題材にもなった「華城ファソン事件」の遺留DNAと、別の事件で服役中の男のDNA型が一致したことが判明。最初の事件から33年の時を経て、事件は解決に向かった。

    広がる活用

     捜査の現場では、個人識別から一歩進み、容疑者の絞り込みに生かす研究も進められている。

     京都府警科学捜査研究所は塩基の一つ「シトシン」の構造が加齢で変化する「メチル化」に注目し、年齢を推定する研究を進めている。メチル化の割合を測定し、現在の誤差はプラスマイナス6歳程度。さらに誤差を減らせば、遺留物から犯人の年齢を絞り込むことが可能になる。

     DNAは、人類の謎を解き明かす大きな鍵にもなっている。

     今年5月、国立科学博物館などの研究チームが、北海道礼文島の遺跡で見つかった約3800年前の縄文人女性の人骨のDNAに刻まれたゲノム(全遺伝情報)を高精度に解析することに成功したと発表。肌の色が濃いなどの特徴や体質のほか、現代日本人が縄文人のゲノムの約10%を受け継いでいることを突き止めた。同博物館の神沢秀明研究員は「過去の人骨のDNA解析が広がれば、日本人がどのように遺伝的な変遷を遂げてきたか解明できるのではないか」と期待を寄せる。

    [DATA]識別率 指紋と遜色なく

     DNA型鑑定は1985年に英国で開発され、日本では89年に警察庁の科学警察研究所が初めて導入した。

     当初は塩基配列の一部だけを調べる「MCT118型検査法」が採用されたが、当時の識別率は「1000人に1.2人」。2003年に「STR型検査法」が導入され、精度が向上した。

     今年4月、全国の警察に米国製の新たな検査薬が一斉導入され、染色体の検査部位が15か所から21か所に増えた。識別率は「4兆7000億人に1人」から「565京人に1人」に飛躍的に高まり、「万人不同」と言われる指紋とも遜色がないレベルになった。

     警察による1年間のDNA型鑑定件数は、1992年は22件だったが、昨年は29万715件。凶悪事件だけでなく、空き巣などの窃盗でも活用されている。

     警察庁は、容疑者や遺留物から採取したDNA型をデータベース化しており、これまでに照会で一致した容疑者は6万3118人に上る。

     15年4月からは、身元確認のためのDNA型のデータベースの運用を始め、事件や事故に巻き込まれた恐れがある「特異行方不明者」などのDNA型が登録されている。

     社会部 井上宗典 警察庁担当。テロから交通政策までカバーする。ソウル特派員時代は韓国警察も取材した。
    https://www.yomiuri.co.jp/national/20191108-OYT1T50246/[New門]DNAの謎解き、犯罪も歴史も
    2019/11/10 08:54

    [New門]は、旬のニュースを記者が解き明かすコーナーです。今回のテーマは「DNA鑑定」。

     犯罪捜査に欠かせないDNA型鑑定。現場に残された遺留物から、犯人を割り出す捜査の「切り札」だ。今年4月に導入された新検査薬で精度が飛躍的に向上し、個人識別率は「565京人に1人」となった。世界の人口(約77億人)をはるかに超え、数字上は別人と間違える可能性はゼロに近い。最近は犯罪捜査以外にも活用されている。

    新鑑定 「565京人に1人」暴く

     第2次世界大戦後のシベリア抑留者の遺骨収集事業で、政府が持ち帰った遺骨のうち、597柱が日本人ではない外国人の骨の可能性が高いことを突き止めたのは、研究者によるDNA型鑑定だった。

     同事業でDNA型鑑定が導入されたのは2003年。遺族から提供されたDNA型と照合し、血縁関係を判定する。70年以上前の1940年代に埋葬された古い骨や歯から抽出したDNAには、日本人特有の配列がなかった。

    10億分の1グラムで可能 判定2~3日

     DNAは「デオキシリボ核酸」の英語略。主に細胞の核の染色体にあり、様々な遺伝情報を記録する。2本の帯が、らせん状に絡んだ構造をしており、内側にA(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)という4種類の化学物質(塩基)が対になって並ぶ。

     同じ配列を繰り返す部分があり、その回数には個人差がある。鑑定ではこの繰り返し回数を比べる。

     犯罪捜査で使われる試料は、血液や唾液、精液、毛根、皮膚、骨、歯、爪、皮膚片など。唾液の場合、ペットボトルやたばこの吸い殻などから採取するケースもある。

     調べたい部分を数百万倍に増幅し、専用の装置でDNA型を自動分析する。1ナノ・グラム(10億分の1グラム)でも鑑定は可能だ。犯罪捜査では、抽出したDNA型を、容疑者のものと照らし合わせる。判定までは通常2~3日程度かかる。

     DNA型鑑定は、未解決事件の捜査で威力を発揮してきた。広島県廿日市はつかいち市で04年10月、高校2年の女子生徒が刺殺された事件では、別の暴行事件で容疑者になった男のDNA型と、現場の遺留物のDNA型が一致。事件から14年後の昨年4月、この容疑者が逮捕された。

     韓国でも今年9月、女性10人が連続で殺害され、映画「殺人の追憶」(2003年)の題材にもなった「華城ファソン事件」の遺留DNAと、別の事件で服役中の男のDNA型が一致したことが判明。最初の事件から33年の時を経て、事件は解決に向かった。

    広がる活用

     捜査の現場では、個人識別から一歩進み、容疑者の絞り込みに生かす研究も進められている。

     京都府警科学捜査研究所は塩基の一つ「シトシン」の構造が加齢で変化する「メチル化」に注目し、年齢を推定する研究を進めている。メチル化の割合を測定し、現在の誤差はプラスマイナス6歳程度。さらに誤差を減らせば、遺留物から犯人の年齢を絞り込むことが可能になる。

     DNAは、人類の謎を解き明かす大きな鍵にもなっている。

     今年5月、国立科学博物館などの研究チームが、北海道礼文島の遺跡で見つかった約3800年前の縄文人女性の人骨のDNAに刻まれたゲノム(全遺伝情報)を高精度に解析することに成功したと発表。肌の色が濃いなどの特徴や体質のほか、現代日本人が縄文人のゲノムの約10%を受け継いでいることを突き止めた。同博物館の神沢秀明研究員は「過去の人骨のDNA解析が広がれば、日本人がどのように遺伝的な変遷を遂げてきたか解明できるのではないか」と期待を寄せる。

    [DATA]識別率 指紋と遜色なく

     DNA型鑑定は1985年に英国で開発され、日本では89年に警察庁の科学警察研究所が初めて導入した。

     当初は塩基配列の一部だけを調べる「MCT118型検査法」が採用されたが、当時の識別率は「1000人に1.2人」。2003年に「STR型検査法」が導入され、精度が向上した。

     今年4月、全国の警察に米国製の新たな検査薬が一斉導入され、染色体の検査部位が15か所から21か所に増えた。識別率は「4兆7000億人に1人」から「565京人に1人」に飛躍的に高まり、「万人不同」と言われる指紋とも遜色がないレベルになった。

     警察による1年間のDNA型鑑定件数は、1992年は22件だったが、昨年は29万715件。凶悪事件だけでなく、空き巣などの窃盗でも活用されている。

     警察庁は、容疑者や遺留物から採取したDNA型をデータベース化しており、これまでに照会で一致した容疑者は6万3118人に上る。

     15年4月からは、身元確認のためのDNA型のデータベースの運用を始め、事件や事故に巻き込まれた恐れがある「特異行方不明者」などのDNA型が登録されている。

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