真鍋良一

確かに彼ら (ヒトラー・ユーゲント) は体躯も大きいし、眼鏡もかけていない。しかし彼らの体力というか肉体的抵抗力というか、この点は我が日本青年は断じて負けていないと思った。
彼らは日本の養子制度・見合結婚が理解できないという。ドイツ人は良い血と良い血の結合からドイツ精神・道徳が生まれると信じているが、日本人は良い精神と良い精神の結合から良い血が生まれると信じている。国家を強力にするのは血ではなく道徳と国民精神である。
ドイツ人は、悪く言えば融通の利かない鈍重な国民である。規律が崩れたときのドイツは目茶苦茶である。だからドイツ人は自分たちに適した組織を作ったのである。彼らの指導者養成方法は、ドイツの文化・伝統に基づくものであり、そのまま日本が受け入れることは危険である。
ヒトラー・ユーゲントは良い青年たちだが、ナチス的考え方しか知らない。自分というものがない。ナチスは人間から人間らしきものを、言い換えればゼーレ (Seele; 魂、精神) を奪ってしまう。
日本は個人のゼーレが全体のゼーレになりうる。ナチスは全体のゼーレのために、個人のゼーレを犠牲にしなければならなかった。そこに今日、中堅のドイツ人の苦しさがある。しかし、ヒトラー・ユーゲントはその苦しさを知らずにナチスに育て上げられている。この点、ナチスの努力は凄まじいものがあった、と考えさせられた。

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