- 現在国民に対し、放送適当なりや否や
ニュースには国民に知らせてよいものと悪いものとがある。この取捨をまず第1に国家的見地から判定しなければならない。次にこのニュースを国民に知らせることによって、いかなる影響を与えるかを確かめる必要がある。
- 日本的・枢軸的観点にありや否や
いやしくも日本放送協会の取り上げるニュースは、まず第1に日本的観点に立つものであることはもちろんだが、日本と手を携えて共同の敵に当たっている独伊に対して、不利なものもまた排撃されねばならない。第3者的・第3国的観点に立つニュースは、敵側の謀略宣伝的ニュースが仮面を被っている場合が多く、不可なる場合が多い。
- 政府に協力的なりや否や
国民の世論決定の上に多大の力を持つニュースは、あくまで政府に協力的、推進的でなければならない。
- 敵に逆用されるおそれなきや否や
敵は我対外放送を聴取するの外、東亜むけの国内放送を聴取し、ことごとく之を録音している形跡が十分ある。であるから、我に不利なニュースはもちろん、敵の好んで逆用するところとなるようなニュースは、絶対に避けなければならない。たとえ片言半句といえども、乗ぜられることのないように注意を払うことが肝要である。
検閲の基準
by 秋山久
http://www2u.biglobe.ne.jp/~akiyama/no171.htm
ニュース・番組の指導に当たったのは、情報局第2部第3課(放送課)で、検閲の基準は「大東亜戦争放送のしるべ」(のちに「大東亜戦争放送指針彙集」)に例示されていた。それは上記の4項目である。
放送禁止事項には、「依命中止」「極秘」「禁止」「不可」「差し止め」とあり、禁止事項を専門に目を光らせる情報局のスタッフがそばにいつもいた。検閲がきびしくなると自己規制するようになる。検閲にひっかからないように削られそうな部分を先に自分で削る芸当をいつの間にか身につけていくことが、当たり前のことになる。