国立健康・栄養研究所

(専門誌に掲載になった学術論文ならば信頼できますか?)
信頼のおける情報ではありますが、それは「現時点での評価」にすぎないので注意が必要です。なぜなら、研究が進めば一度掲載となった論文とは異なる事実が判明することもあるからです。具体的な例として、緑黄色野菜に含まれるβ-カロテンの情報があります。過去の研究ではβ-カロテンのがん予防効果が示唆されていましたが、そののちの研究によって、肺ガンのリスクの高い人がサプリメントとしてβ-カロテンを摂取するとがんの発症率が増加することが分かりました。緑黄色野菜を摂取することと、β-カロテンを精製・濃縮したサプリメントの形で摂取することは違うことであるため、緑黄色野菜の摂取とがん予防の可能性は今でも否定されてはいませんが、このように、研究を続けていくと「それまで常識とされていたこと」が覆されたり、同じ物質でも「効能がある」ことと「害がある」ことが別々の時期に分かったりすることがあります。近年は特に技術の進歩によって実験法などが改良されるスピードも速いため、次々と新しい研究成果が蓄積されています。科学的根拠の信頼性を維持していくためには、常に新しい情報をチェックする必要があります。

2 thoughts on “国立健康・栄養研究所

  1. shinichi Post author

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    (テレビ、新聞、雑誌などで取り上げられていたのですが…?)
    マスメディアで取り上げられたことは、必ずしも科学的な裏付けにはなりません。こういった情報は、時間や紙面などの都合で内容が省略されたり、研究の一部分だけが大きく取り上げられたり、実験の条件などが提示されていないことがあるからです。

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    (「専門家」「博士」「研究者」が言っていたのですが…?)
    「専門家が言っていた」ことが必ずしも科学的な裏付けにはなりません。情報の発信者がたとえ専門家であっても、その情報が「その人1人だけが主張していること」であったり、論文報告がなかったり、再現性が確認されていない、という場合もあるからです。

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    細胞や動物の実験で効果が証明されているようですが…?
    ヒトでの実験は、倫理的・コスト的な両面で最も実施が困難な研究ですが、科学的根拠として実生活に最も必要なのは、ヒトでの試験結果と考えられています。なぜなら、食品は人間が口に入れて食べるものなので、有効性だけでなく安全性まで確認しなければなりません。そのためにはヒト試験の結果が必要だからです。

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    特許番号は科学的根拠ではないのですか?
    特許番号は科学的根拠にはなりません。

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    「体験談」は科学的根拠にはならないのですか?
    体験談の多くは「ヒトがある食品 (食品成分) を摂取して、なんらかの効果があった」とするものですが、実験とは違いますので科学的根拠にはなりません。

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    専門誌に掲載になった学術論文ならば信頼できますか?
    信頼のおける情報ではありますが、それは「現時点での評価」にすぎないので注意が必要です。なぜなら、研究が進めば一度掲載となった論文とは異なる事実が判明することもあるからです。

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    インターネットなどで情報を調べる場合、どんな点に注意すればよいですか?

    1.情報の出典が明記されているか…学術論文では、他の多くの論文を参照 (引用) し、文末にその出典を一覧としてまとめて書くのが一般的な形式です。学術論文でなくても、その情報の引用元、著者名、発行年、などが書いてあれば信頼性の判断材料になります。

    2.情報ソースはどこか…健康や食品に関する情報であれば、医学・薬学・栄養学などの専門誌、厚生労働省や研究機関などが信頼性の高い情報ソースとなります。テレビや新聞の情報は、いわば、これらの専門誌や公的機関が発表したことを「二次的に報道した」ものに過ぎません。また、「報道者(情報の発信者)の主観的なコメント」と「実験による客観的な事実」は別のものですが、それらが混同されて「ひとかたまりの情報」として提供されている場合もあります。「誰かの主観的意見」と「自然科学の客観的事実」は区別してとらえることが必要です。

    3.新しい情報かどうか…科学的根拠となる情報は毎日のように発表・蓄積されています。古い情報をそのまま引用していないか、最新の情報をフォローしているかどうかもチェックポイントになります。

    4.情報と広告がきちんと区別されているか…いろいろなところで見られる「健康に関する情報」は、「ある商品を販売するための広告」として流されている可能性があります。「科学的根拠のある情報」と「企業のための広告」は区別するべきものですが、閲覧者に分かりづらいこともありますので注意が必要です。

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    情報がどれくらい信頼できるか、どうやって見分けられますか?

    1.具体的な研究か:体験談は具体的な研究ではない

    2.研究対象はヒトか:細胞や動物の実験結果は、そのままヒトには当てはめられない

    3.論文報告があるか:学会発表ではなく学術論文として専門誌に掲載されたものか

    4.研究デザインはどうか:信頼性を評価できるだけの研究規模はあるか、統計的に意味はあるか

    5.複数の研究で評価されているか:ひとつの研究だけでは信頼性が高いとはいえない

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