寺島実郎

軍事的には米国の圧倒的な「勝利」に終ったイラク戦争 。。。
そもそも、この戦争は「戦争」といえる次元のものではなかった。RMA (Revolution in Military Affairs) といわれる戦略情報戦争の時代にあって、開戦と同時に、イラク軍は通信情報手段を遮断され、組織的・系統的抵抗ができる状態ではなくなった。いわば、眼の見える人と全盲の人との戦いのような もので、表面的には「戦争」に見えるが、現実には「いたぶり」にも近い残酷な戦いであった。サダム・フセインという憎々しげに毒づく、現実にはさしたる脅威でもない専制者を「都合のよい敵」に祭り上げ、圧倒的に勝利して力を誇示しているが、安手のプロレスの試合を見せられたようなモノ悲しさが拭えない。

2 thoughts on “寺島実郎

  1. shinichi Post author

    いわゆる「奴顔」からの脱皮について

    by 寺島実郎

    世界 2003年6月号

    「バグダッド陥落」のテレビ映像をみつめた。

    米国の情報管理の中で伝えられる映像などに言及する意味もないのだが、私はイラク群衆の表情を食い入るように観察した。 思い出したのは、中国の作家魯迅が使っていた「奴顔」という表現である。

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  2. shinichi Post author

    (sk)

    10年以上経ってから過去を振り返る時、リアルタイムの頃とは違った見方をしている自分がいる。

    当時は戦闘を有利に進めるための脇役でしかなかった「情報」が、いつの間にか主役の座を奪ってしまった。その変遷を振り返ってみると、やっぱりヒラリー・クリントンの演説の頃が転換点だったことに気付く。

    アメリカはその後、イランに対しての対応でわかるように、軍事攻撃ではなくサイバー攻撃を選ぶようになっていった。軍隊が進駐したり人が死んだりということがなかったので、ニュース的にはインパクトは小さかったが、アメリカの勝利だったことに変わりはない。

    アメリカがやっている情報の戦闘も、中国がやっている情報の戦闘も、あまりニュースにはならない。情報戦争はニュースにはなりにくい。それでも、戦闘は続いている。

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