文部省

現下わが国における学問・教育の実情を見るに、明治以来輸入せられたる西洋の思想文化にして未だ充分咀嚼せられざるものを含み、之がため日本精神の透徹全からざるものあり、近時学問に関する諸種の問題或は教育に関する改善の要望にしてその主たる理由をこの点に置くものの寡からざるは、その所以なしとせざるなり、今之を我が国既往の歴史に徴するに、外来文化は常に我が国体・日本精神の下に醇化せられ以て我が国文運の発展に貢献し来れり今や時勢に鑑み真に国礎を培養し国民を錬成すべき独自の学問・教育の発展を図らんが為めに多年輸入せられたる西洋思想・文化の弊とする所を艾除すると共にその長とする所を摂取し以て日本文化の発展に努むるは正に喫緊の要務と謂はざるべからず、ここに有力なる学者、教育家、有識者の集りたる教学刷新評議会に於て国体観念、日本精神を根本として学問、教育刷新の方途を議し、宏大にして中正なる我が国本来の道を闡明し外来文化摂取の精神を明瞭ならしめ、文政上必要なる方針と主なる事項とを決定し以て我が国教学刷新の歩を進めその発展振興を図らんとす。

2 thoughts on “文部省

  1. shinichi Post author

    学制百年史

    三 学生思想問題と教学刷新

    文部科学省

    http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/others/detail/1317652.htm

    思想問題対策と教学刷新評議会

     以上述べてきたように、大正末期から昭和初頭にかけて、学生運動が盛んとなり、それに伴う思想問題が続発した。この問題解決のため教学刷新が提唱されることになったのである。文部省はこの問題に関してすでに種々の方策をたててきたのであるが、昭和六年六月二十三日には学生思想問題調査委員会を設けてその対策を審議し、その答申に基づいて七年八月二十三日には国民精神文化研究所を創設し、九年六月には学生部を廃して思想局を設置し、この問題の解決につとめた。特に国民精神文化研究所の創設趣旨は「わが国体・国民精神の原理を闡(せん)明し、国民文化を発揚し、外来思想を批判し、マルキシズムに対抗するに足る理論体系の建設を目的とする有力なる研究機関を設くること。」にあり、それは明らかに当時の思想問題解決に対する重要な機関であったことを示している。さらに文部省は教学刷新問題の根拠を明らかにして解決の基本方針を決定するため、十年十一月十八日「教学刷新評議会官制」を公布して「教育ノ刷新振興ニ関スル重要ナル事項ヲ調査審議ス」とし、会長のほか委員六〇人以内をもってこの会を組織することとなった。その際にこの評議会の設置に関して発表された次の趣意書は、いかなる問題を解決しようとしていたかを明らかにしている。

     現下わが国における学問・教育の実情を見るに、明治以来輸入せられたる西洋の思想文化にして未だ充分咀嚼せられざるものを含み、之がため日本精神の透徹全からざるものあり、近時学問に関する諸種の問題或は教育に関する改善の要望にしてその主たる理由をこの点に置くものの寡からざるは、その所以なしとせざるなり、今之を我が国既往の歴史に徴するに、外来文化は常に我が国体・日本精神の下に醇化せられ以て我が国文運の発展に貢献し来れり今や時勢に鑑み真に国礎を培養し国民を錬成すべき独自の学問・教育の発展を図らんが為めに多年輸入せられたる西洋思想・文化の弊とする所を艾除すると共にその長とする所を摂取し以て日本文化の発展に努むるは正に喫緊の要務と謂はざるべからず、ここに有力なる学者、教育家、有識者の集りたる教学刷新評議会に於て国体観念、日本精神を根本として学問、教育刷新の方途を議し、宏大にして中正なる我が国本来の道を闡明し外来文化摂取の精神を明瞭ならしめ、文政上必要なる方針と主なる事項とを決定し以て我が国教学刷新の歩を進めその発展振興を図らんとす。

     右の趣旨に基づいて教学刷新の要項を決定し、十一年にこれを答申したのである。その要項は当時の国家主義的趨勢に則(のっと)って、教育の根本精神およびこれに基づく教育内容改善の基本方針を指示したものであって、各学校における教授の具体的な問題についても刷新の基礎となるものを指示したのである。

    教学刷新への着手

     この教学刷新評議会において決定された要項に基づいて教育内容の改善が行なわれることになり、昭和十二年春から各学校における教育内容構成の一般原則を検討し、要目の改正をも行なったものである。しかし、その当時とられた内容改善の方策は応急的のものであって、基本的な改善はこれを短日月の間には実現しえないものとして後に問題を残したのである。ここにおいて教育内容および方法に関する基本的な改革が、さらに強く要望されることとなり、その実現のために具体的な方策を全般的に審議せざるをえなくなった。そのためには単に文部省内における改善委員会のごときものをもってしては、これを処理することができないとして、さらに強力なる審議機関の成立が求められた。十二年十二月に成立した教育審議会は、残された文教刷新の重要問題を引き続き審議することとなった。

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  2. shinichi Post author

    昭和十年代文教政策に於ける神祇問題

    ―神祇府構想と神社制度研究会を中心として―

    by 長友安隆

    http://www.mkc.gr.jp/seitoku/pdf/f43-18.pdf

    現下我カ國ニ於ケル學問、教育ノ實情ヲ見ルニ、明治以来輸入セラレタル西洋ノ思想、文化ニシテ未ダ十分咀嚼セラレザルモノヲ含ミ、之ガタメニ日本精神ノ透徹全カラザルモノアリ近時學問ニ關スル諸種ノ問題或ハ教育ニ關スル改善ノ要望ニシテ、其ノ主タル理由ヲコノ點ニ置クモノノ寡カラザルハ、其ノ所以ナシトセザルナリ今之ヲ我ガ國既往ノ歴史ニ徴スルニ、外來文化ハ常ニ我ガ國體、日本精神ノ下ニ醇化セラレ以テ我ガ國文運ノ發展ニ貢獻シ來レリ今ヤ時勢ニ鑑ミ、眞ニ國礎ヲ培養シ國民ヲ錬成スベキ獨自ノ學問、教育ノ發展ヲ圖ランガ爲ニ、多年輸入セラレタル西洋ノ思想、文化ノ弊トスル所ヲ芟除スルト共ニ其ノ長トスル所ヲ攝取シ以テ日本文化ノ發展ニ努ムルハ、正ニ喫緊ノ要務ト謂ハザルベカラズ茲ニ有力ナル學者、教育家、有識者ノ集リタル教學刷新評議會ニ於テ國體觀念、日本精神ヲ根本トシテ學問、教育刷新ノ方途ヲ議シ、宏大ニシテ中正ナル我ガ國本來ノ道ヲ闡明シ、外來文化攝取ノ精神ヲ明瞭ナラシメ、文政上必要ナル方針ト主ナル事項トヲ決定シ以テ我ガ國教學刷新ノ歩ヲ進メ、其ノ發展振興ヲ圖ラントス

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