観測

約30億年前に
太陽の30倍と19倍の質量をもつ2つのブラックホールが
衝突したという
衝撃は大きく巨大なエネルギーが放出されたが
約30億年後に地球に到達した重力波は
かろうじて知覚できるほどの弱さにまで減衰していた

何千人もの科学者が
観測し 討論し 論文を書いて
その物語が正しいことを証明する
でもだからといって
そんなことを素直に信じるわけにはいかない

科学の作った物語は
宗教が作ってきた物語に似て
信じることがその基本にある

科学者は科学と宗教の違いを口にする
科学は道徳的な判断も美学的な判断もしない
知識の使い方を示さないし 超自然的な説明もしない
だから科学は正しいのだと

でも
科学の信奉者が科学が正しいと言うのと
宗教の信奉者が宗教が正しいと言うのとで
なにが違うというのか

想像もできないような昔に
想像もできないようなことが起きて
想像もできないような長い時間のあと
想像もできないような小さなエネルギーが観測される

そんな物語を素直に信じている人たちのことを
にわかには信じられない

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