芸術

江戸時代までは
芸術という言葉はなかった
言葉がなかったくらいだから
芸術家もいなかった
もちろんアートはなく
アーティストもいなかった

絵師や彫師や摺師はいた
浮世絵師と呼ばれる人もいた
でも芸術家やアーティストはいなかったのだ

明治時代になるまでは
美術という言葉もなかった
明治政府は
 音楽画学像ヲ作ルノ術詩学等ヲ美術ト云フ
と定め
 美術の字穏当ならずと雖も 今姑く之を襲用す
などと言ってその場を凌いだ

宮大工 家大工 建具師 指物師 曲物師
そんな職人をアーティストと呼んだら
せっかくの出来上がりがウンチクばかりになってしまうし
庭師をアーティストと呼び 庭をアートと言えば
庭から情緒が消え 庭園になってしまう

私たちの場所には芸術はいらない
もちろんアートなどいらない
大事なことは職人がやってくれる
語る人はいらない

君への気持ちを言葉にして伝えるのは なにか違う気がする
芸術もアートも必要ないように 言葉も必要ない
言葉にした途端 本当のことが本当でなくなる
君への気持ちが嘘になる
だから伝わることを期待して ただ 佇む
伝わらないことは承知で ただ ただ 佇む

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