現代都市に生きる私たちの住空間は、悲しいほどに狭い。〈狭さ〉はただのデメリットでしかないように思える。けれど日本文化史には、鴨長明の『方丈記』、利休の茶室、池大雅・与謝蕪村の『十便十宜図』など、さまざまな〈狭さ〉の美学が存在する。また現代の赤ちょうちんなど、〈狭さ〉には社会通念や物質信仰を超えた「自由」が宿る。
都市空間において排他的・敵対的な〈広さ〉に囚われ、ますます自閉していく私たちに、〈狭さ〉はどのようなアンチテーゼとなるのか。前著『生きられる都市を求めて』に続き、現代都市空間にまといつく息苦しさを克服し、人間が「生きられる」場所の復権を提言する。
〈狭さ〉の美学
草庵・茶室・赤ちょうちん
フィギュール彩 87
by 近藤祐
〈狭さ〉には、自由と永遠が宿る!
鴨長明の『方丈記』、利休の茶室、大雅・蕪村の『十便十宜図』など、日本文化史上の〈狭さ〉という価値観と美意識とは、現代という過剰消費社会において排他的・敵対的な〈広さ〉に囚われた私たちに、どのようなアンチテーゼとなるのか。