何でも展示してしまう社会

 北アメリカやヨーロッパ、アフリカなどでは Facebook や Twitter、Instagram といった SNS を使って、中国や東南アジアなどでは QQ空间 や 微信、TikTok といった SNS を使って、何億もの人たちが自分自身を進んで展示している。
 とはいっても、投稿される画像や映像は、投稿者の生活を反映してはいない。誰も、自分のありのままの写真やビデオを投稿したりしない。悲しいニュースや悪いニュースを他人と共有したりもしない。展示されている自分は、あくまで見せたい自分や見られたい自分であって、自分の実像ではない。
 展示されているものが実像でないとわかったからといって、見に行く人の数が減るわけではない。そもそも見る人にとっては、展示されているものが実像かどうかは問題ではない。楽しいから見るという、ただそれだけのことなのだ。
 SNS がメンタルヘルスに与える影響について数え切れないほどの研究がなされていて、悪影響ばかりが指摘されているというのに、SNSを使う人の数は減らない。自分が見せたことに対する評価とか、何人見に来たかとか、何人「いいね」を押してくれたかとか、どうでもいいことを気にするようになると、SNS の利用時間が増してゆく。SNS上の他人を見て(それが実際ではないとわかっていても)羨んでしまったり、自分に対するメッセージやリツイートを見て傷ついてしまったり、落ち込みが続いてうつ病になったりと、いいことは何もない。
 SNS をやめるのは、実社会で人付き合いをやめるのに似て、とても難しい。

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