テクノロジーの進化による社会の変化

 テクノロジーの進化が加速して、社会が大きく変わってゆく。私たちは、情報とネットワークのテクノロジーが進化して、社会のルールや対人関係が変わるのを見て来た。変化はとても大きく、急激な速さで押し寄せてくる。それなのにどんな変化も日常のなかに隠れてしまい、誰もがその変化にあっという間に慣れてしまう。そのためか、変化が意識されることは、あまりない。
 スマートフォンと呼ばれる「通話・通信機能を持った超小型コンピュータ」を誰もが使うようになると、連絡方法やコミュニケーションの方法が大きく変わり、買い物の方法や予約の方法も大きく変わった。
「Google」や「百度」などのインターネット検索が社会に浸透し、情報のあり方が変わり、知識の意味が変わってしまった。暗記やメモに意味がなくなり、古い情報があっという間に淘汰されてしまう。
 何十億もの人たちが SNS(Social networking service;ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を使い、他人と繋がる。繋がり方はかつて存在しなかったもので、地理的な制約がないこともあって、思ってもみなかったほど大きく広がる。その結果、社会は分断する。
 IoT(Internet of Things;モノのインターネット)という総称で呼ばれるインターネットに繋がったカメラやセンサーが世界中にバラまかれ、人びとの行動が記録される。IoT端末の数は、人の数を超え、増え続けている。それにつれて社会の監視能力も高まり続けている。
 ビッグデータというと、いまだに「アバウトなもの」とか「個人情報は含まれない」というような印象を持つ人が多いが、実際はとんでもない量の質の高いデータが集積され、日常的に売り買いされることで広まり、多様な目的で使われている。ビッグデータの社会への影響は驚くほど大きい。
 ビッグデータの対極にあるのが、ブロックチェーンだ。長いあいだデータベースに記録されてきたデータがブロックチェーンに記録されるようになり、不正に改ざんされることがないという長所が認識されると、その利用は急速に広まった。「自分の医療情報に、どの機関が、いつアクセスしたのか」というようなことがすべて記録され、それを自分で確認でき、しかもその記録が不正に改ざんされることがないのだから、用途は広がり続ける。ブロックチェーンは社会がトランスペアレントになってゆくことに大きく貢献している。
 AI(Artificial Intelligence;人工知能)の明確な定義は、未だに存在しない。それなのに AI はありとあらゆるモノに搭載され、教育現場、研究施設、医療現場、介護施設、金融機関、小売業、流通業、農業などなど、ありとあらゆるところに浸透し始めている。社会への影響は間違いなく大きい。
 そういったテクノロジーの影響は、過剰さが増え続ける社会、目的を持てない社会、予期された答えしか存在しない社会、さらけだされてしまう社会、トランスペアレントな社会、分断された社会、プライバシーのない社会、テクノロジーが監視する社会、何でも展示してしまう社会、コピー・ペーストの情報社会、余計な知識の要らない知識社会というような社会の断面として現れる。
 こうした様々な社会の断面は一見バラバラに見えるけれど、ひとつだけ共通した特徴がある。どれもテクノロジーの進化によって見えてきた社会の断面だということだ。そのために、後戻りすることがない。しかも加速度的に変わり続け、未来の姿は、どんなテクノロジーが出てくるかわからないこともあって、見えてこない。しかも、このような変化は社会体制に関係がない。自由主義の社会だろうが社会主義の社会だろうが、予期された答えしか存在しない社会やトランスペアレントな社会になることは、テクノロジーの進化を止めることができないように、防ぎようがない。
 以下に、テクノロジーの進化によって見えてきた社会の断面について書いてゆくが、このような変化は、誰にもコントロールできない。テクノロジーの進化を止められないように、社会の変化も止められない。残念ながら、変化を知ることで、変化に対応していくしかない。
 テクノロジーの進化を「ビジネス・チャンスだ」などといって経済的な利益ばかりを考え、社会の変化に注意を払わずにいると、社会があらぬ方向に向かっていってしまう。これから書いてゆく社会の断面について、危機感を持って考えていただけたらと思う。

One thought on “テクノロジーの進化による社会の変化

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *