朝日新聞(徳島慎也)

 ほかの国の通貨に比べ、日本円はモノを買う力が強いのか弱いのか。そんな通貨の購買力を示す国際指標で、日本円が約50年前の水準まで下がっていることが分かった。この1年で急激に円安が進んだのも一因だ。その分、輸入に頼る原油や食材などが値上がりするなど、暮らしへの影響も広がり始めている。
 この指標は、国際決済銀行(BIS)が毎月公表しており、「実質実効為替レート」と呼ばれる。約60カ国・地域の通貨を比較し、各国の物価水準なども考慮して総合的な通貨の実力を示す。数値が低いほど、海外からモノを買う際の割高感が高まる。円安が進むと、海外旅行で何かと割高に感じるのと同じだ。
 この指標をみると、日本円は昨年5月に80以上だったが、海外でコロナ後の景気回復への期待が先行して円安基調となり、下落傾向が続いた。今年10月に70を割り込み、11月に67・79まで下落。これは同様に円安が進んだ2015年6月以来の水準で、1972年8月と同じ値だ。過去最高だったのは、一時1ドル=79円台まで円高が進んだ95年4月で150・85だったので、その当時と比べ、大幅に海外のモノが高く感じる状態になっている。

2 thoughts on “朝日新聞(徳島慎也)

  1. shinichi Post author

    日本「ジリ貧」鮮明に、円の“弱さ”が 1970年代前半と同等まで低下

    by 佐々木 融

    https://diamond.jp/articles/-/276922

    円の実質実効レートは 70年代前半と同水準で推移

     今年の為替市場の動きを見ると、円が先進国通貨の中で独歩安となっている。

     現状の円の実質実効レートの水準は、2015年6月につけた1970年代前半以来の最安値まで、あと4%程度という水準。また過去20年間の平均からは20%、過去30年間の平均からは30%も割安となっているのだ。

     他国の通貨と比べると、JPモルガンがカバーしている世界46通貨のうち、実質実効レート(CPIベース)が過去20年間の平均から20%以上割安なのは、トルコリラ、ブラジルレアル、コロンビアペソだけ。G10(主要10カ国)通貨の中で円の次に割安なノルウェークローネでも、13%程度しか乖離(かいり)していない。

     長期的に振り返れば、円の弱さは今年始まったことではない。円の実質実効レートはアベノミクス開始後に大幅な円安となって以降、70年代前半と同レベルの水準で推移し続けている。そして、直近の水準は73年2月から変動相場制に移行する直前以来の円安水準となっている。

     円の実質実効レートが70年代前半と同水準で推移しているとは、単純に言えば、円による購買力が70年代前半と同等であるということだ。

     例えば、80年代後半から90年代までは、海外から来日した外国人は一様に、日本の物価の高さに文句を言っていた。一方、日本人が海外旅行に行くと、日本に比べて割安なブランド物を免税店で購入して帰ってくるのが定番だった。

     それがアベノミクス以降に大幅な円安となってからは、来日した外国人は「日本は安い」と口をそろえて言うようになった。実際、コロナ禍前までは銀座で買い物を楽しんでいる海外からの旅行客が目立った。一方、日本人にとっては海外旅行先でさまざまな物が割高に見え、免税店では「日本で買った方が安い」との声が多くなった。

     なぜ、円はこれほどまでに割安となり、購買力が低いままとなってしまっているのだろうか。現象面からシンプルに答えれば、それは『日本の物価が他国と比べて上昇しないのに、為替レートがその分の調整をしていない』ことが背景にある。

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