小林雅一

「遺伝情報の総体」であるゲノムとは、様々な生物の設計図と言い換えることができます。
それを自由に書き換えたり、修正することができるとすれば、これまでより健康に良くて美味しい農作物や家畜、魚などを大量生産できるでしょう。あるいは、従来の医学では治すことのできなかった、深刻な病を根本的に治療することもできる。さらには私たちの背を高くしたり、顔形を美しくしたり、知能や運動能力を高めたり、病気や怪我をしにくい強靭な肉体や体質を作り上げる可能性も秘めています。

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  1. shinichi Post author

    ゲノム編集からはじまる新世界 超先端バイオ技術がヒトとビジネスを変える

    by 小林 雅一

    バイオ業界で「史上空前の技術革命」と見られているゲノム編集。特に最新鋭のゲノム編集技術である「クリスパー」は「DNAのメス」とも呼ばれ、狙った遺伝子をピンポイントで改変・修正することができる。

    現在、この技術を使って、「肉量を大幅に増やした家畜や魚」「腐りにくい野菜」「二日酔いしないお酒」といった食料分野の研究開発や、医療分野ではエイズや筋ジストロフィーなど難病の治療研究、不妊治療や出生前診断といった生殖医療の基礎研究、各種のがんを治療する免疫療法の臨床研究、患者の体内でDNAを手術する研究などが急速に進んでいる。

    この分野にはグーグルやアマゾンなどIT業界も注目し、AIやクラウド技術を使って、「長寿」や「高精度医療」のビジネスに参入する。

    これら巨大なプラス効果の一方で、ゲノム編集を使って地球環境を変えてしまう恐れのある「遺伝子ドライブ」、子供でも動植物や微生物のDNAを操作できる「バイオ・ハッキング」など、極めて危うい側面も指摘されている。

    【第1章】 ゲノム編集クリスパーとは何か
    ・従来の高度技術とは別格
    ・人間の本質に関わる技術
    ・過去の遺伝子技術と何が違うのか 1高い操作精度/2汎用性/3技術の使い易さ
    ・バイオ・ハッキングとは何か
    ・ゲノム編集はどこまで実用化されているのか
    ・「身体を手術する時代」から「DNAを手術する時代」へ

    【第2章】 クリスパーを発明したのは誰なのか?
    ──ゲノム編集の基本特許を巡る争い
    ・泥沼化するクリスパーの特許訴訟
    ・発端は大阪大学の研究成果
    ・食品メーカー科学者の貢献
    ・二人の女性科学者の出会い
    ・分子生物学の基礎──遺伝子とは何か
    ・遺伝子からタンパク質が作られる過程とは
    ・遺伝的な特質はタンパク質によって形成される
    ・共同研究の始まり
    ・クリスパーの動作原理を解明
    ・ゲノム編集クリスパーの誕生
    ・生きた動植物への応用へ
    ・特許干渉とは何か
    ・なりふり構わぬ戦い方
    ・両者の技術はどこが違うのか

    【第3章】 ゲノム編集は私達の「食」をどう変えるか
    ―― GMOの過ちを繰り返さないためには
    ・人類による品種改良の歴史
    ・放射線育種は何故、消費者の反発を免れたのか ・GMOとは何か
    ・GMOは何故、消費者から敬遠されたのか
    ・GM0はどのように規制されているか
    ・日本のGMO受け入れ態勢
    ・欧州と米国の勢力争いを反映
    ・なぜゲノム編集食品はGMOではないのか
    ・クリスパーに傾くバイオ企業
    ・商業化する科学への批判
    ・ゲノム編集食品の商品化が始まる
    ・各国で割れる、ゲノム編集食品への規制方針
    ・消費者不在の研究開発
    ・食料増産は先進国の消費者には響かない
    ・ゲノム編集がGMOより有利な点とは
    ・GMOと同じ過ちを繰り返さないためには

    【第4章】 ゲノム編集はこれからの医療をどう変えるか
    ――「遺伝子格差」社会への警鐘
    ・エイズ治療で注目を浴びる
    ・危篤の白血病患者を救う
    ・免疫療法に導入されるクリスパー
    ・病気の原因遺伝子を解明することが前提
    ・体内でのゲノム編集は難しい
    ・間近に迫った臨床研究
    ・常に、一歩先を行くサンガモ
    ・生まれる前に病気を治す
    ・ゲノム編集の課題
    ・倫理面の議論が巻き起こる
    ・猿のゲノム編集が持つ意味
    ・「ヒト受精卵のゲノム編集」が持つ意味
    ・デザイナー・ベビーへと至るシナリオ
    ・科学の暴走にブレーキ
    ・ヒト受精卵のゲノム編集に成功
    ・遺伝子変異を修正することへの異論も
    ・病気と遺伝子の関係はどこまで解明されたか
    ・複雑な病気の原因解明は道半ば
    ・高精度医療の実態
    ・ITと生命科学の間に横たわる深い谷
    ・「遺伝子格差」社会への警鐘

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