加谷珪一

日本は過去30年間、ほとんど経済成長できておらず、実質賃金はむしろ下がり続けてきた。一方、諸外国は同じ期間で経済規模を1.5倍から2倍に拡大させており、賃金や物価もそれに伴って上昇している。
為替レートはあまり動いていなくても、日本の物価が横ばいで、海外の物価が上昇すれば、為替が安くなったことと同じ効果が発生する(例えば1ドル=100円で、海外から2ドルの商品を輸入すれば、日本人は200円を支払う必要があるが、海外の商品が3ドルに値上げされれば、為替レートが同じでも300円払わないと同じ商品を購入できない)。
物価の違いを考慮した日本円の各国通貨に対する為替レート(実質実効為替レート)を見ると、現在の為替水準は1970年代半ばとほぼ同水準であり、現時点における日米の賃金格差も70年代のレベルまで拡大している。言い方を変えれば、日本はすでに事実上、1ドル=200円程度の貧しい時代に逆戻りしていることになる。
近年「生活が苦しくなった」「日本が貧しくなった」と感じる人が増えているのはこれが原因だが、こうしたところに到来したのが今回の物価高騰である。しかも困った事に、海外の物価上昇に加え、名目上の為替も円安が進み始めている。9月後半まで1ドル=110円前後だったドル円相場は、10月に入って1ドル=114円を突破した。このまま円の下落が続いた場合、海外の物価高に円安というダブルパンチになってしまう。

8 thoughts on “加谷珪一

  1. shinichi Post author

    日本がいよいよ「貧しい国」になってきた…! この国を「貧乏」にしている“本当の原因”

    by 加谷珪一

    https://gendai.ismedia.jp/articles/-/88446?imp=0

    全世界的な資源価格・資材価格の高騰に加え、円安が進行している。輸入価格の上昇によって、多くの製品が値上がりしているが、ここに円安が加わると目も当てられない。日本は各国に対して完全に「買い負け」状態となっており、日本の消費に深刻な影響が及ぶ可能性も出てきた。

    ガソリンから食品まで何もかもが値上がり

    このところ原油をはじめとする資源価格が高騰している。2020年には40ドル前後だった原油価格は、すでに80ドルを突破しており、1年で約2倍になった。ガソリン価格は基本的に原油価格に連動するので、小売価格も急上昇しており、10月初旬におけるレギュラーガソリンの価格は全国平均で162.1円まで上がっている。

    価格が上昇しているのは原油だけではない。過去1年で天然ガスは4.5倍、石炭は3倍、アルミニウムは1.6倍、銅は1.4倍などあらゆる資源価格が上昇した。同時に食糧価格も高騰しており、同じ期間で小麦は1.3倍、砂糖は1.6倍、大豆は1.3倍、鶏肉は1.7倍、牛肉は1.3倍、パーム油は1.6倍である。

    資源価格が高騰すれば、これらを用いて製品を製造するメーカーの利益が減少するので、最終的には値上げを決断せざるを得ない。10月から和洋菓子やマーガリン、コーヒーなど食品類が軒並み値上げとなっているが、スーパーなどに買い物に行った時に気付いた人も多いのではないだろうか。建設資材も上昇しており、デベロッパーは利益の確保が難しくなっている。コロナ危機にもかかわらずマンション価格がまったく下がらないのは、資材価格の高騰が原因である。

    困ったことに、原材料の価格が高騰していることに加え、半導体不足も深刻な状況となっており、AV機器や家電、自動車の生産にも影響が及んでいる。プリンターやカーナビ、ゲーム機などは、すでに品薄で手に入りにくい状況となっているほか、パソコン関連の製品価格も実質的な上昇が続いている(パソコンはスペックが次々に変わるので同一条件での比較が難しいが、同一クラスに属する製品価格は昨年比で2割近く上がっている印象だ)。

    資源価格・資材価格高騰の直接的な原因は、コロナ後の景気回復期待による需要の急拡大だが、背景にはもっと複雑な事情がある。

    全世界的な経済成長によって途上国の生活水準が上がっており、数年前から資材の争奪戦ともいえる状況が続いてきた。各企業は旺盛な需要に対応するため、全世界にサプライチェーンを拡大してきたが、コロナ危機によって調達網がズタズタになってしまい、思うように資材が調達できなくなった。

    加えて各企業は、コロナ危機をきっかけに従来型の巨大なサプライチェーンについてリスク要因と見なすようになっており、規模の縮小と近隣調達化を進めている。多少、価格が高くてもリスクの低い地域からの調達を優先するので、どうしても価格は上がってしまう。

    こうしたところに、アフターコロナ社会ではAI(人工知能)化が一気に進むとの予想が出てきたことから、各社がIT投資を前倒しで実施。これによって半導体も逼迫し、何もかもが品薄で価格が上がるという、ある種の異常事態となっている。

    物価高と円安のダブルパンチ

    日本は過去30年間、ほとんど経済成長できておらず、実質賃金はむしろ下がり続けてきた。一方、諸外国は同じ期間で経済規模を1.5倍から2倍に拡大させており、賃金や物価もそれに伴って上昇している。

    為替レートはあまり動いていなくても、日本の物価が横ばいで、海外の物価が上昇すれば、為替が安くなったことと同じ効果が発生する(例えば1ドル=100円で、海外から2ドルの商品を輸入すれば、日本人は200円を支払う必要があるが、海外の商品が3ドルに値上げされれば、為替レートが同じでも300円払わないと同じ商品を購入できない)。

    物価の違いを考慮した日本円の各国通貨に対する為替レート(実質実効為替レート)を見ると、現在の為替水準は1970年代半ばとほぼ同水準であり、現時点における日米の賃金格差も70年代のレベルまで拡大している。言い方を変えれば、日本はすでに事実上、1ドル=200円程度の貧しい時代に逆戻りしていることになる。

    近年「生活が苦しくなった」「日本が貧しくなった」と感じる人が増えているのはこれが原因だが、こうしたところに到来したのが今回の物価高騰である。しかも困った事に、海外の物価上昇に加え、名目上の為替も円安が進み始めている。9月後半まで1ドル=110円前後だったドル円相場は、10月に入って1ドル=114円を突破した。このまま円の下落が続いた場合、海外の物価高に円安というダブルパンチになってしまう。

    かつて日本は輸出大国だったが、現在ではむしろ輸入大国となっており、原油や天然ガスなどエネルギー関連で約10兆円、電気機器類で約12兆円、衣類などで約3兆円、医薬品で約3兆円、食品類で約7兆円など、合計で年間約70兆円の輸入を行っている。輸入された原材料や部品の一定割合は最終製品として再輸出されるが、残りは日本国内で消費される。

    過去10年における全世界の平均物価上昇率は3.3%だったので、日本は同じ金額で買える輸入品の量を3.3%ずつ減らしてきた計算になる。70兆円という輸入金額に単純にこの数字を当てはめれば2.3兆円であり、この金額分だけ日本人は毎年、損をしていると思って良い。このまま資源価格の高騰と円安が続いた場合、全世界の物価上昇率もさらに上がるので、日本人が被る損失はさらに巨額となるだろう。

    量的緩和策を継続していることも大きい

    ではなぜ、このタイミングで円安が進んでいるのだろうか。基本的には米国の金利上昇とインフレ懸念が原因とされる。金利上昇をポジティブに捉えれば、米国の景気がさらに拡大するのでドル買い要因だが、ネガティブに見ればインフレによる通貨価値の毀損となり、本来ならドル安である。

    だが、日本は先進各国の中でもっともインフレに対して脆弱な経済構造であり、日本経済への悪影響を懸念した投資家が積極的に円を売っている可能性がある。これは、いわゆる「日本売り」ということなので、継続するとやっかいな事態となりかねない。

    これは構造的な問題であり、すぐに改善することは不可能だが、短期的な効果をもたらすはずの金融政策においても日本は事実上、身動きが取れない状況だ。米国など諸外国が金融正常化に動く中、日銀だけが量的緩和策を継続しており、この状態は通貨価値を下げる要因となる。だが岸田政権は量的緩和策を継続するとしており、日銀が正常化に向けて動き出す気配はない。

    構造的に円安になりやすい状況に加え、金融政策でもマネーの供給を続ける形となっており、円安が進む条件が揃っている。ここからもう一段の円安が進んだ場合、日本人の実質的な可処分所得は大幅に減るので、国内消費は深刻な影響を受けるだろう。緊急事態宣言が解除され、経済の回復を多くの人が期待しているが、残念なことに海外の物価高と円安がその効果を打ち消してしまうかもしれない。

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  2. shinichi Post author

    円安と物価高のダブルパンチ 生活への影響は? 3人の専門家に聞く

    NHK クローズアップ現代

    https://www.nhk.jp/p/gendai/ts/R7Y6NGLJ6G/blog/bl/pkEldmVQ6R/bp/poyrvyr7rp?cid=gendaihk-tvqc-220525-1

    急激に進む「円安」。私たちの暮らしや家計にも影響すると専門家は指摘します。すぐに実践できる節約術は?この状況はいつまで続く?3人のスペシャリストに聞きました。

    円安で海外旅行客が悲鳴

    まず海外旅行の最新状況をひもといていただいたのは、航空・旅行アナリストの鳥海高太朗さんです。

    3年ぶりの制限解除となった大型連休では、ハワイへの観光客は前の年の5倍になりました。しかし、旅行先では、現地に行った日本人観光客によると、ランチで食べたロコモコが2200円、あるカップ麺が550円と、驚きを隠せなかったと言います。免税店でブランド品を安く買うことを楽しみにしていた人も多かったのですが、なんと日本で買うより高い状態となっていたそうです。

    円安による割高感が、格安旅行で人気のタイでも起こっていました。タイの定番料理のガパオ、円安前、今年初めは200円だったのが、現在は220円。まだ安い感じはしますが、10年前は物価の影響もあって130円でした。トムヤムクンは2~3人前で円安前は920円。それが今は、およそ1000円。10年前は565円でした。こちらもずいぶん割安感はなくなっています。

    タイの日本語観光ガイドの方によると、大型連休には、久しぶりに日本人観光客が訪れたものの、滞在日数が減り、オプションツアーもほとんど頼まないなど、旅行の仕方が随分変わったといいます。

    さらにはショッピングでも、安価なものは買うのですが、タイシルクや木彫り、宝石類など高額商品の購入が減っていると言います。ホテルも、かつては、日本人は5つ星に泊まるというイメージだったそうですが、今回は1万円前後のスタンダードなホテルに泊まっていた方が多かったといいます。

    鳥海さんによると、昔は、日本人観光客はお土産文化などもあり、たくさんお金を使うので世界的に歓迎されてきましたが、今は財布のひもが固く、現地の人たちにがっかりされている現状はあるかもしれない。といいます。

    世界各国の通貨とくらべても進行している「円安」

    ハワイやタイだけでなく、今回の円安は世界各国の通貨に対しても進行しています。

    アメリカのドルに対して、今年の初めは1ドル115円だったのが、5か月ほど経った5月24日時点で1ドル=127円と10.0%の円安に。ほかにも中国の人民元や韓国のウォンに対しても、3%、4%の円安。さらに、日本人の旅行で人気のオーストラリア、ヨーロッパや南米でも円安は進んでいます。

    こうした状況について解説していただいたのは、マクロ経済が専門の日本総合研究所の石川智久さんです。

    なぜ円安になっているのか?そこには、日銀の金融政策が大きく関係しているといいます。

    そもそも今回、急激な円安が起きたのは、日米間の金利格差と言われています。アメリカの中央銀行が金利を上げ、金融の引き締めを行っている中、日本は引き続き低金利の金融緩和政策をとっています。

    そうすると、世界中の投資家たちが金利の高いドルで資産運用をしたいと、大量に円を売り、大量にドルを買ったため、円安ドル高になっているという状態です。そんな中、日銀の黒田総裁は、「円安は日本経済全体としてはプラス」と述べ、円安を事実上容認しているため、当面は円安が続く見込みだと石川さんはいいます。

    円安は私たちの生活にどう影響するのでしょうか?

    日本は、生活品のほとんどを輸入に頼っているため、円安が進む、つまり円の価値が下がると、輸入するのに多くの円が必要となります。するとコストがかさんで、今、企業はモノの値段を上げざるを得なくなっています。すると、私たちの家計の負担も増えてしまいます。

    逆に、海外から見ると日本の製品は安くなるため、以前よりたくさん買ってくれることが期待できます。すると、日本の輸出企業は利益があがるというメリットがあるのです。

    20年ぶりの円安!私たちにどんな影響が?

    今回の急激な円安は、一時1ドル=130円まで進みましたが、これは何年ぶりのことなのでしょうか?

    円とドルの為替レートを見ると、今回の円安は、2002年以来であることがわかります。

    では、20年前の日本も円安で苦しんでいたのでしょうか?

    20年前の2002年の日本は、就職氷河期が続いた時代でしたが、円安を機に輸出産業が活発となり、日本経済にとってプラスに働いていました。

    それでは、輸入コストが増したことによる値上げに関してはどうだったかというと、それほど影響がなかったといいます。一体なぜなのでしょうか?石川さんによると、当時、日本は他の国に比べ物価が高かったため、輸入にかかるコストが上がっても、それほど大きな影響がなかったといいます。

    石川さん:

    「持っているお金が多い時と少ない時で比べるとわかりやすいと思います。たとえば1万円持っているときに、100円のものが200円に上がっても気になりませんが、1000円しか持っていないときに、100円のものが200円になったら、かなり厳しくなりますよね?それと同じです。当時、円は今と比べてかなり強かった、実力がありました。だから、多少、円安で輸入コストが上がっても、企業にも家計にもそれほど大きな影響はなかったんです」

    この「円の実力」は「購買力」ともいわれていて、どのくらい円で買う力があるかを表しています。たとえば、1000円を持ってアメリカに行って、何が買えるか?と考えると、為替レートだけではなく、現地の物価も影響することがわかります。物価が安ければたくさん買うことができますが、高ければ少ししか買うことはできません。つまり、円の本当の実力は、為替だけでなく、物価も一緒に考えなくてはならないということです。

    この物価を踏まえた円の本当の実力は今どれほどのものなのか?なんと50年前の水準と同じだというのです。

    50年前の1972年の日本は、どんな生活だったのか?海外旅行に行くのは、主に“富裕層”で、一般の庶民はなかなかいけない時代。さらに、海外の商品はかなりぜいたく品だった時代です。

    この円の購買力を比べるのに、よく使われるのがビッグマック指数です。各国で材料や調理法がほぼ同じであるハンバーガーの現地での値段を比べることで、その国の購買力がわかるといいます。

    今年発表された数値がこちらです。

    1位はスイスで804円、2位はノルウェーで737円、3位がアメリカで669円。日本は57か国中33位の390円でした。タイや韓国や中国よりも安い。つまり実力が低いということになります。

    「円安」を乗り切るテクニックは?

    不安定な先行きの中、生活を維持するためにはどうすればいいのか。ファイナンシャルプランナーの深田晶恵さんに節約テクニックについて聞きました。

    深田さんによると、値段が上がっている小麦から米に切り替えるというのは、最近よく聞く節約テクニックですが、ふるさと納税の活用など、米と同様、その地方にある特産品、つまり国産品に目を向けることも大切だといいます。さらに、円安の不安から、年金や老後の資金をドル貯金や仮想通貨に移すことを検討する方も多いですが、手数料などがかさむこともあるため、冷静に判断し、慌てて資産を動かさないことも重要だといいます。

    日本は、これからどうなる?

    円安がしばらく続くことが予想される中で、日本これからはどうなるのでしょうか?実は円安は悪いことだけはないといいます。まず期待できるのは「インバウンド需要の増加」です。先月の訪日外国人の数は、2年ぶりに10万人を超えました。

    日本観光が人気のタイでは、今のうちにバーツを円に替え、入国制限が解除されたら日本へ旅行したいと、両替所に人が殺到。先月の取引量は前の年の2.5倍になっているといいます。さらに、スイスのダボス会議では、日本が観光競争力・世界ナンバーワンに選ばれています。

    そして、円安のメリットのもうひとつが「輸出の活性化」です。

    今年の3月期の決算では旧東証一部のうち前年度に比べて利益が増加した企業が7割にのぼり、多くの大企業で過去最高益を記録しました。

    しかし、これは海外展開している大企業の話。国内で事業を展開する中小企業にとっては厳しいという声もあります。

    先月日本商工会議所が行ったアンケートによると、53.3%の中小企業が円安には「デメリットの方が大きい」と答えています。

    日本総合研究所の石川智久さんによると、日本の企業は99%が中小企業のため、日本全体でみると円安のメリットはそれほど大きくなく、特に日本のGDPのうち70%を占めるともいわれるサービス業が大きなあおりを受けるため、日本全体にとっても円安は痛手になりかねないといいます。

    石川さんが、大企業だけではなく日本全体を良くするために重要だと指摘するのが「賃上げ」です。

    上のグラフは、先ほど紹介した円の実力=為替と物価の影響も反映させた形で世界各国の賃金上昇の推移を表したものです。

    各国の賃金が上昇している中、日本では、ここ30年ほど賃金があがっていません。

    石川さん:

    「最近、メガバンクが賃上げを行ったという良いニュースがありました。まずは大企業から賃金を上げていき、中小企業がそれに付随する形で日本全体の賃金をあげていくべきです。賃金を上げて労働者のやる気を刺激して成長率を高め、成長産業を生み出す。成長→雇用・賃金の上昇→成長という好循環を生み出していくべきです」

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  3. shinichi Post author

    1ドル130円 20年ぶりの円安水準 世界経済急減速と3つのジレンマ

    by 櫻井玲子(NHK 解説委員)

    https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/467793.html

    ロシアのウクライナへの侵攻による影響などを背景に、世界経済は、急減速する可能性が、高まっています。
    欧米、日本、中国などで、景気が以前の予想より、悪くなる見込みで、その先行きへの不安から、為替や株式市場も大きく変動しています。
    きょうは今後の見通しや、各国が直面している「3つのジレンマ」について、詳しく見ていきたいと思います。

    【世界経済が失速する】

    『戦争が世界経済の回復を後退させる』
    IMF・国際通貨基金がこのような副題をつけて発表した最新のリポートによりますと、ことしの世界経済の成長率は去年の6.1パーセントから、3.6パーセントへと、急減速する見込みです。
    さらに来年も、同じ3.6パーセントにとどまる予想で、コロナ禍からの回復が期待されていたさなかに、ロシアの軍事侵攻が影を落としている形になります。

    国や地域別にみますと、
    ▼ロシアからのエネルギーや穀物輸入に頼るユーロ圏の成長率は、去年の5.3パーセントから2.8パーセントに減速。
    ことし1月の予想から1パーセント以上の下方修正です。
    また▼アメリカも5.7パーセントから3.7パーセントに減速すると予測。
    欧米いずれも、エネルギー価格の高騰に苦しめられています。
    さらに▼中国についても、新型コロナウイルスの感染再拡大も背景に、8.1パーセントから4.4パーセントに大きく減速すると予想しています。

    一方、日本は、去年の1.6パーセントから2.4パーセントまで回復するものの、こちらもことし1月の予想からは1パーセント近い下方修正です。
    資源エネルギーをはじめとする物価の上昇に悩まされるほか、輸出の伸びも鈍るのではとみられているからです。

    IMFはことしはじめの時点では、第2四半期、つまり4月ごろから、コロナによるダメージが徐々に薄れ、世界経済に力強さが戻ってくると予想していましたが、そのシナリオは、いまや完全に崩れました。
    このあとむしろ、ロシアの軍事侵攻の状況次第で今回の予測よりさらに悪化する、下振れリスクがあると警告しています。

    【3つのジレンマ】
    さて、世界経済の回復が順調にいかないとみられる根本的な要因に、各国が抱える「3つのジレンマ」があります。
    そこでここからはそのジレンマについて、詳しくみていきます。

    【ジレンマ①「インフレ抑制」優先?「景気回復維持」優先?】

    ▼まず最大のジレンマは、急激なインフレ・物価上昇を抑えることと、景気回復の勢いを維持することのどちらを優先させるべきか?ということです。
    エネルギーや食料価格の高騰と、コロナによる供給制約を背景に、先進国で物価が5.7パーセント。
    新興国や途上国では8.7パーセント上昇する。と予想されており、アメリカをはじめ多くの国がインフレ対策として、金融引き締めに踏み切る方針です。
    しかし、物価を抑えようと、市場に出回るおカネを減らす金融引き締め策を行えば、今度は景気そのものが悪化してしまう恐れがあります。
    インフレ退治と、景気回復のどちらを、どのタイミングで優先するか?
    各国の対応が、問われるところです。

    【日本は景気維持を優先して20年ぶりの円安水準に】

    では日本はどうか?といいますと、食品や電気・ガス代が値上がりし、4月の消費者物価指数は前の年にくらべてついに2パーセントを超える上昇となる可能性も出ています。
    ただ、日銀は、経済全体でみれば依然として力強さがみられないとして、景気回復を支える金融緩和を、死守する姿勢を、金融政策決定会合を通じて、鮮明にしました。
    このため28日の東京外国為替市場では、日銀が物価の抑制より景気の維持を優先し、その結果としての円安も容認したと受けとめられ、円相場は1ドル130円台まで値下がりし、20年ぶりの円安水準を更新しました。
    政府は、今週、原油高騰対策と、生活困窮者への支援を柱とした6兆2千億円程度にのぼる緊急経済対策を発表しましたが、日銀が金融緩和を続けている以上、円安局面が続くことも予想され、暮らしに影響が大きいエネルギーや食料価格は、簡単には下がらない、とみられています。

    【アメリカはインフレ抑制優先で利上げ加速】

    一方、アメリカでは物価の上昇に対する国民の不満に応えるためインフレ対策を優先し、中央銀行にあたるFRB・連邦準備制度理事会は来週、一気に0.5パーセントの利上げを決めて、金融を引き締める見通しです。
    しかし、現地では物価が8パーセントも上がっており、この程度では「焼け石に水」にすぎないと、利上げをさらに加速させるよう求める声も出ています。
    引き締めが加速されれば、その分アメリカの景気も減速し、世界経済全体にも、大きな影響を与えそうです。
    結局、インフレ抑制と、景気回復のいずれを優先しても、なんらかのマイナスは避けられないといえるでしょう。
    ロシアの軍事侵攻を人道的な見地からも、経済的な観点からも、一日も早く止めさせること。
    そしてコロナの収束に向けて最大限の努力を続けることが、最も効果のある対策で、各国そして国際社会の努力が、問われるところです。

    【ジレンマ② 困窮者支援と財政健全化】
    ▼次に2つ目のジレンマとして、困っている人への支援と、財政の立て直しの両立の難しさについても、考えてみたいと思います。
    国が、コロナや戦争、災害などで苦しんでいる人を支援することが最優先するのはいうまでもありません。

    ただ、先進国の債務、つまり借金は、コロナによる大規模な財政出動もあって、対GDP比で115パーセントと、5年前の水準にくらべても高止まりしています。
    将来の需要を先食いしすぎて、今後の中長期的な成長を妨げないよう、財政の健全性をどう保っていくかが課題になります。
    日本の政府債務残高も、2022年には、対GDP比で262パーセントに達すると予想されており、軍事侵攻やコロナの収束後に、慢性的な財政赤字をどう解消していくかが問われることになりそうです。
    短期的には国民への支援を優先しつつ、中長期的には経済に大きなショックを与えずに、財政をたて直すにはどうすればいいか。
    そのためには、今後の経済見通しを客観的に評価する、独立の第三者機関を作り、適切な対応策を検証する、といった、地道な努力が、必要になるのではないでしょうか。

    【ジレンマ③「脱炭素化」優先?「エネルギー確保」は?】
    ▼そして3つ目のジレンマは脱炭素化と、エネルギー確保の両立の難しさです。
    足元の資源エネルギー価格の高騰は、ロシアの軍事侵攻が大きな要因となっています。

    ただ、IMFは石油やガスといった化石燃料への新規投資がすでに2014年以降、年々減ってきていたことも、指摘しています。
    これに対し、再生可能エネルギーの導入はそこまでのスピードで進んでおらず、化石燃料への投資が減るスピードに、再生可能エネルギーの増えるスピードが追い付かないため、これが、構造的なエネルギー不足を生んでいるというのです。
    このため、エネルギーの生産国と消費国が協力し、化石燃料からの撤退と再生可能エネルギーの導入のスピードの平仄があうよう、目配りすることを提言しています。
    日本でも、再生可能なエネルギーを安定的な電源として使えるようにするためのさらなる努力が求められています。
    また、第一次オイルショックの教訓も踏まえて、エネルギー需要そのものを抑える省エネ技術の開発や導入にも、さらに力を入れる必要があるかもしれません。

    【ジレンマに特効薬なし】
    これまでみてきた3つのジレンマを、簡単に解消する特効薬はなく、ロシアの軍事侵攻でその影響が増幅されているのが実情です。
    日本をはじめ各国は、時間軸や優先順位を意識しながら、短期的な対応策と中長期的な政策を使いわけることで国民の暮らしを守り、この難局を乗り切ってほしいと思います。

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  4. shinichi Post author

    円・ドル=150円、180円、200円以上の可能性探る

    円は他のアジア通貨にとって「炭鉱のカナリア」

    ブルームバーグ

    https://toyokeizai.net/articles/-/586480

    ヘイマン・キャピタル・マネジメントの創業者カイル・バス氏は日本銀行の政策に関する一連のツイートで、ドル・円が「150円、180円、200円以上になる可能性がある」と指摘し、「厳格なイールドカーブコントロール(YCC、長短金利操作)がそうした事態の発生を余儀なくする」と説明した。

    バス氏は「日銀への信頼が日々、損なわれている」とし、「円相場の秩序を欠いた動きは制御への信頼感を損なう」と論評。いったん信頼が失われれば「日本は経済的大惨事に見舞われ、世界の他の通貨にも多大な連鎖反応があるだろう」との見方を示した。

    その上で、「こうした構造的な動きは(食料やエネルギー、基本素材など)極めて重要な資源の購入を毎日必要とする国々に深刻な被害をもたらす。次は香港と中国だ」とコメント。「円は他のアジア通貨にとっていわゆる『炭鉱のカナリア』だ」としている。

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  5. shinichi Post author

    ミスター円・榊原氏、円は1990年以来の1ドル=150円に下落も

    by Ruth Carson、Yvonne Man

    https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-05-19/RC5GAJT1UM1401

    日米の金融政策の差異が円安の唯一最大の要因-榊原氏
    円が150円を超えれば日銀は「多少懸念」すると思う

    「ミスター円」の異名を取る榊原英資元財務官は、日米の金融政策の方向性の差異が広がるのに伴い円相場が1990年以来の水準まで下落する可能性があると述べた。

      榊原氏は米連邦準備制度のタカ派姿勢と日本銀行の金融緩和策の差異が引き続き円安の唯一最大の要因だと指摘。その差が縮まるまでは、円には対ドルで下押し圧力が続く公算が大きいとの見方を示した。

      現在は青山学院大学教授の榊原氏はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「年末にかけて、140円から150円の間で推移すると市場で予想されており、円がその水準に達する可能性は十分にある」と発言。「150円を超えれば、日銀は多少懸念すると思う」と語った。

      円売りは今年人気のマクロトレードとなっており、米国債利回りの上昇を受けて円売り・ドル買いが進んでいる。日銀は円安でも緩和姿勢の維持を表明しており、下落基調が早期に反転する可能性は低い。

      円は今月に入り一時1ドル=131円35銭と約20年ぶりの安値を更新し、過去3カ月のパフォーマンスはG10通貨で最下位。150円台を付ければ1990年8月以来となる。

      円急落は日本の通貨当局による口先介入を誘発したが、下落基調に歯止めをかける効果はほとんど見られていない。榊原氏は「これは金融政策の相違が理由で生じているものだ」とし、円安の合理的な説明が依然としてあるため、当局がもっと本格的な介入に踏み切る可能性は低いとコメントした。

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  6. shinichi Post author

    今後50年で世界経済のパワーバランスは劇的に変わる

    OECD

    https://www.oecd.org/tokyo/newsroom/balance-of-economic-power-will-shift-dramatically-over-the-next-50-years-says-oecd-japanese-version.htm

    最新のOECD報告書によると、今後50年、躍進を遂げる新興経済が世界のGDPの大部分を占めることとなり、世界経済のパワーバランスは劇的に変わることが予測されます。

    これまで私たちが慣れ親しんだパターンとは異なる長期的経済成長を辿ることで、各国経済の世界に占める割合は大きく変化することになります。現在トップに君臨する米国は、早くて2016年にも中国に追い超され、いずれはインドにも追い越されるでしょう。さらに中国とインドを合わせれば、まもなくG7全体の経済力をも追い超し、2060年にはOECD加盟国全体を追い越すことが予測できます。急速な高齢化が進むユーロ圏や日本といった現在の経済大国は、若年層が人口を占める新興経済のインドネシアやブラジルのGDPに圧倒されることになります(グラフ参照)。

    “Looking to 2060: Long-term global growth prospects(2060年までの長期経済成長見通し)”は、OECD加盟34カ国及び非加盟の主要経済8カ国を対象とした新しい長期経済見通しを提示しています。同報告書は、加速する成長を続ける新興国と、それに反して減速していく先進国との差は拡大するとしつつも、世界全体としては年率3%の経済成長を予測しています。各国の一人当たりGDPの差異は主に技術レベルや資本集約度、人的資源やスキルにおける違いを反映するものとなります。

    アンヘル・グリアOECD事務総長は、「世界経済は、過去5年間経験してきた経済危機をやがて克服するが、私たちの子孫が暮らす将来はこれまでとは全く異なったものになるだろう。現在急成長しているる新興経済国が世界経済の重きをなすこととなるため、私たちは世界全体の持続可能な繁栄を確保するために新たな挑戦に立ち向かうことになる。教育と生産性は今後の経済成長に向けた牽引力となるため、世界全体でこれらの分野の政策が優先されるべきである。」と述べました。

    長期的な経済パワーバランスの移行は、各国の生活水準の向上にもつながるため、2060年までに貧困国は4倍以上の所得増大が期待できます。中国及びインドに関しては、所得は7倍も増加することが予測されます。これにより、2060年までに新興国と先進国の現在の経済格差は狭まる一方、各国間の格差は依然として残ることになります。

    グリア事務総長は「この見通しは動かしがたいものではない。大胆な構造改革を講じれば、先進国でも新興国でも長期的な経済成長及び生活水準の向上を導き出すことが出来る。」と述べました。

    OECDの調査は、労働・生産市場の広範な改革を進めれば、今後50年間に世界全体で平均16%の生活水準の向上が期待できると示しています。

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  7. shinichi Post author

    日本が国際的地位を格段に下げている痛切な事実

    いつの頃からか日本人は「謙虚さ」を失っている

    by 野口悠紀雄

    https://toyokeizai.net/articles/-/477731

    1人当たりGDPで見ると、日本は世界第24位。10年前と比べてさえ、順位が大きく下がってしまった。しかも成長率が低いので、さまざまな国に抜かされていく。
    かつて日本が先進国になろうとする1960年代の中ごろ、日本人は謙虚だった。その謙虚さを取り戻し、なぜ日本がこのような状態になったかを理解する必要がある。
    昨今の経済現象を鮮やかに斬り、矛盾を指摘し、人々が信じて疑わない「通説」を粉砕する──。

    1人当たりGDPで、日本は世界第24位

    日本の国際的な地位の低下が問題とされている。

    これを測るためのデータとしてよく使われるのは、国民1人当たりGDP(国内総生産)だ。

    IMF、WEO(国際通貨基金、世界経済見通し)は、「先進国」(advanced coutries)というグループ分けをしている。

    そこには、40カ国・地域が含まれているが、2021年の1人当たりGDP(市場為替レートによるドル表示)において、日本は4万0704ドルで、世界第24位だ。

    世界第1位のルクセンブルク(13万1301ドル)に比べると、3分の1以下にすぎない。

    アメリカ(6万9375ドル)の58.7%、アジア第1位シンガポール(6万6263ドル)の61.4%でしかない。ドイツ(5万0787ドル)、イギリス(4万6200ドル)に比べても低い。

    韓国は3万5195ドルで日本より低いが、後述のように成長率が高いので、いずれ抜かれるだろう。

    日本より下位にあるのは、ヨーロッパでは、旧社会主義国の他は、イタリア、スペイン、ポルトガル、ギリシャしかない。

    このように、日本は、先進国のグループに入っているとはいうものの、世界における地位はかなり低くなっている。

    日本の地位は、しばらく前までは、もっとずっと高かった。

    1人当たりGDPで、2000年にはルクセンブルクに次ぐ世界第2位で、第5位のアメリカより8%ほど高かった。

    アベノミクスが始まる直前の2012年には、順位が低下したとはいうものの、世界第13位。第10位のアメリカの95%だった。第20位のドイツより12%高かった。

    つまり、いまほどに国際的地位が低くなったのは、アベノミクスの期間のことなのである。

    こうなったのは、第1には円安が進んだからであり、第2には、世界が成長するなかで日本が成長しなかったからだ。

    自国通貨建て1人当たりGDPの2000年から2021年の増加率をみると、つぎのとおりだ。

    日本が4.6%、アメリカが91.0%、韓国が188.0%、イギリスが78.5%、ドイツが64.2%。

    したがって、時間が経てば、日本は他国に抜かれていくことになる。

    韓国の1人当たりGDPはまだ日本より低いが、成長率が著しく高いために、日本を抜くのは時間の問題だ。

    これに円安が加わると、市場為替レートで評価したドル表示の日本の値は、さらに低くなる。

    1970年代に逆戻り
    私は、1960年代の末にアメリカに留学して貧乏学生生活を強いられたが、日米間の所得格差は、現在、その時と同じような状況に戻ってきている。

    ドル表示の1人当たりGDPを日米で比較すると、表1のとおりだ。

    1970年には、アメリカは日本の2.54倍だったが、1973年2月に変動為替相場に移行してから日本の値は急速に高まり、1973年に日米の比率は1.98倍にまで縮小した。そして、1980年には1.33倍にまで縮まった。

    しかし、2020年では1.61倍であり、1970年代に近い値に戻ってしまっている。

    1950年代、日本は、東洋の片隅にある島国でしかなかった。

    工業化は進んだものの、世界水準には届かなかった。

    日本の自動車の輸出が始まったのは1950年代末のことだ。当時の輸出台数は年に数百台。1960年には乗用車の輸出台数が年1万台を超えたが、当時の日本車の性能は不十分だった。

    1960年代になって、日本は中進国の段階を脱し、先進国と呼んでよい状態になってきた。

    1963年の年次経済報告(経済白書)は、「先進国への道」というタイトルだ。

    そして、「むすび-日本経済の新しい姿勢」の中で、次のように述べている。

    「先進国への接近に伴う新しい環境の下で、先進国らしい姿に整えることも当面の課題として登場してきている」

    「政府の施策と相まって先進国への道程における国民各位の協力もまた大きな意義を持っている」

    「先進国への道はけわしいのである」

    「今後は先進国らしい姿に整えることにもこの活力を注ぐべきであろう」

    何と言う謙虚さだろう! 「姿を整える」と2度も言っている。

    「さあ、これから晴れの舞台に登場だ」という緊張と初々しさが伝わってくる。

    晴れの舞台の最大のイベントが、オリンピックと並んで、世銀・IMF総会だった(1964年)。役所に入ったばかりの私は、手伝いに駆り出された。

    東海道新幹線が世銀融資で作られたことのお礼もあり、出席者を案内して、試運転の新幹線で京都まで案内した。

    日本にも、ようやく世界標準軌の鉄道が誕生したと、誇らしい気持ちだった。

    日本製自動車が高速道路を走れるか?

    しかし、多くの日本人は、先進国と称することに面はゆい思いを抱き、「本当に日本は先進国なのだろうか?」という疑いを心の片隅に抱いていた。

    実際、日本が先進国だという思いは、外国に出ていけば無惨に打ち砕かれてしまう。

    私は、1968年9月にアメリカに留学して1年間滞在した。

    学生同士の雑談で、「日本でも自動車を作れる。その車は、高速道路を走ることができる」と話した時、「あの小さい車で!」と、ゲラゲラ笑われたことをよく覚えている。

    確かに、日本製自動車は、いかにも小さかった(小ささのために、石油ショック後の世界で頭角を現すのだが)。

    そして、空港で遠くに日本航空機の機影を認め、「日本の航空会社が、よくぞここまで旅客機を運航した」と涙がでた(1955年からは、国際線機長にも日本人が搭乗していた)。

    いったん帰国してから、再び博士課程への留学で、1971年に再渡米した。その期間中に、日本の地位は大きく上昇した。

    1971年8月15日に、ニクソンショック。そして、1973年には固定為替制度が放棄されて、変動為替レートとなった。

    西独の通貨マルクが変動し始めたのは、ちょうど国際経済学の時間中だった。

    学生の1人が、”The Mark is floating”と叫んだのを覚えている。

    円が増価し、日本の国際的地位はみるみる向上した。1人当たりGDPで見た日米間の豊かさの差が1980年代から1990年代に縮小したのは、表1で見たとおりだ。

    しかし、その後、日本の地位が下がり、日米の相対的な豊かさの比率は、1970年代末の水準に戻りつつある。

    「あの時に戻るのか」という思いは、衝撃以外の何物でもない。

    日本人は謙虚さを失った

    日本の地位がこのように低下しているにもかかわらず、日本人はいつの頃からか、謙虚さを失った。

    2005年頃、日本の1人当たりGDPのランクが落ちていると指摘すると、「自分の国を貶めるのか」といった類の批判を受けることがあった。

    客観的な指標がここまで落ち込んでしまっては、さすがにそうした批判はない。それでも心情的な反発はある。

    日本の経済パフォーマンスの低さを指摘すると、「自分の国のあら捜しをして楽しいのか」という批判が来る。アメリカの所得が高いと言うと、「所得分布が不公平なのを知らないのか」と言われる。つまり、外国にはこういう悪い点があるのだという反発が返ってくる。

    韓国の高い成長率に学ぶ必要であるというと、「韓国は日本の支援で成長したのを知らないのか」という意見にぶつかる。

    どの国にも良い点と悪い点がある。

    自国の問題点を強調するのは、それを改善したいからだ。他国の良い点を指摘するのは、それが自国を改善する参考にならないかと考えるからだ。

    事実を正しく認識することは、事態を変えるための第1歩だ。

    そして、1960年代の謙虚さを取り戻すことが、日本再生のための不可欠の条件だと思う

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  8. shinichi Post author

    「ニッポンは今や貧困国になった」 この厳しい事実に気付かない人が多すぎる

    by 相場英雄
    (聞き手・構成=山川 徹)

    https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/03/post-95785.php

    いまや日本社会は外国人労働者なしには成り立たない。それは健全なのか。作家・相場英雄氏は最新刊『アンダークラス』(小学館)で、外国人技能実習生の問題を取り上げた。相場氏は「日本人は貧乏になった。だから労働力を外国人に頼らざるを得ない。その事実に気付いていない人が多すぎる」という――。

    ニューヨークでは「ラーメン一杯2000円」が当たり前

    ──『アンダークラス』で技能実習生の問題に着目したいきさつを教えてください。

    僕の仕事場は新宿・歌舞伎町の近くにあるのですが、この数年、人の流れが目に見えて変わってきました。

    朝方、24時間営業のハンバーガーチェーンで、大きなバックパックを背負った配達員が眠りこけている。その隣には、たくさんの荷物が入った手提げ袋を抱えた若いホームレスが力尽きたように休んでいる。外には店内に入れずに一晩中、歩いている人がいる。しかも、ハンバーガーチェーンやコンビニで深夜から早朝に働いている店員は、ほとんどが外国人。いびつな風景だと感じました。

    日本は、いったい、どんな国なのか。なにかがおかしい。そんな違和感が、外国人労働者や、技能実習生に注目したきっかけでした。

    もう一つが、海外での体験です。

    数年前、ニューヨークに行く機会があり、ラーメンを食べました。日本では通用しないマズいラーメンが一杯2000円。小皿料理を注文し、ビールを飲んだら5000円を超えました。これはアメリカの経済が成長を続け、物価も給与水準も上がっているからです。一方、日本は経済が低迷し、物価が下がり続けています。日本はもはや先進国ではない、と感じたのです。

    「日本人はとっくにお金持ちじゃなくなった」

    ──作中に登場するベトナム人技能実習生の「日本人はとっくにお金持ちじゃなくなった」というセリフが印象的でした。

    それが外国人の実感だと思いますよ。

    4年前、取材旅行で訪ねた香港で、紹介制の高級レストランに行きました。店の前にはリムジンがずらりと並び、店内にいるさまざまな国の人たちは一目で裕福だとわかりました。日本人のわれわれが、明らかにもっとも金がない存在でした。

    活気にあふれた香港から東京に戻ると、日本全体が寂れたシャッター街のように見えました。にもかかわらず、ほとんどの人が日本が転落した現実に気づいていません。

    2000年代に入り、タイやベトナムなどの東南アジアの国々も一気に経済成長しました。日本が1950年代から70年代に約20年もかけて達成した高度経済成長を、わずか5年から10年程度で成し遂げつつある。少し前まで、アジアの国々に対して、日本が面倒を見ている発展途上国というイメージで捉えていた人が多かったのではないかと思いますが、いまその国々が日本を上回りつつある。

    インバウンドが増えていたのは、日本の物価が安いから

    ──この数年、「日本食がおいしい」とか「日本の伝統文化がスゴい」というテレビ番組が人気ですが、経済が後退した反動なのかもしれませんね。

    コロナ以前は、インバウンドが増えていました。もちろん日本への憧れをもって来日する人もいたとは思います。しかし、もっと違う理由があるのではないかという気がしていました。

    一昨年まで高校時代から北米に留学した息子の友だちが、よく日本に遊びにきていました。当初、気を遣って「狭いけど、うちに泊まるか?」と聞いていた。でも「大丈夫。日本は物価が安いから。インペリアルのスイートに泊まれる」と言うんです。確かに、帝国ホテルの値段では、アメリカの中堅ホテルにも泊まれない。日本の物価が安いからインバウンドが増えた。そう考えると日本をめぐる現状が腑に落ちてきます。

    雇用状況を見てもそうでしょう。物価が下がり続けるから、もっと安い労働力が必要になる。そこで、格差が激しく、いまも貧しい生活を強いられているベトナムやミャンマーなどの農村から来日する技能実習生という名の労働者に頼るしかなくなった。

    「派遣切りのときよりもずっと残酷」

    ──2019年4月から改正入管法が施行され、受け入れがさらに拡大されました。

    2010年以降、団塊世代が大量に離職し、日本の労働人口が一気に減りました。とくに低賃金で、仕事がきついというイメージがついた職種は人手不足に悩まされています。それにデフレのなか、下請け、孫請けの企業は、日本人の派遣労働者を使っていては高コストで収益をあげられない。だからより賃金が安い技能実習生が必要とされている。そこまで日本は追い詰められているんです。

    ──登場人物のひとりが「万が一、リーマン・ショックのような事態に直面した際、大量に受け入れた海外の人材をいきなり切り捨て、母国に帰れ、と命じるのですか。派遣切りのときよりもずっと残酷で、外交問題になりますよ」と発言しています。コロナ禍のなか、技能実習生はリーマン・ショック時以上の苦境にあります。

    『アンダークラス』の連載は、2018年から19年でした。当時はまさか、新型コロナウイルスが流行するなんて、思いもしていなかった。

    「悪徳ブローカー」に国はなんの対策も打たなかった

    実際、コロナ禍の影響で、働く場を失い、国にも帰れない外国人労働者がいる。豚や果物を盗んで逮捕された不良外国人について報道されましたが、ぼくには起こるべくして、起こった事件と感じました。

    本来なら受け入れを拡大する前に、技能実習生の働き方や生活をサポートする体制や、悪徳ブローカーを取り締まる仕組みをつくるべきでした。しかし実際には、国はなんの対策も打たなかった。だから奴隷のような環境で働かされる技能実習生や、働き口をなくして犯罪に走らざるをえない人が出てしまっている。

    ──そうした技能実習生の状況に対して、世間の関心が薄いように感じます。

    それは技能実習生や外国人労働者の問題が、自分とは無縁だと考えているからです。かつて中間層と言われていた人たちは、いまだに自分たちは安泰だと思っている。不都合な現実を直視したくない気持ちはわかりますが、長引く不況に加え、コロナ禍で勤務する会社がいつまで持つかもわからない。現に「洋服の青山」が160店舗を閉店し、400人の希望退職者を募るとニュースになりました。

    ずっと会社に守られ、企業の看板を背負って仕事をしてきたサラリーマンが、社会に放り出されたとき、なにができるのか。

    近い将来、これまで技能実習生にまかせていたような仕事をせざるをえない人も出てくるはずです。日本の貧困は、そこまで行き着いてしまった。

    日本はもはや先進国ではない。まずは、その現実を直視するところから考えていかなければならないのではないでしょうか。

    Reply

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