石川啄木

たはむれに母を背負ひて
そのあまり軽きに泣きて
三歩あゆまず

はたらけど
はたらけど猶わが生活楽にならざり
ぢつと手を見る

友がみなわれよりえらく見ゆる日よ
花を買ひ来て
妻としたしむ

One thought on “石川啄木

  1. shinichi Post author

    東海の小島の磯の白砂に
    われ泣きぬれて
    蟹とたはむる

    砂山の砂に腹這い
    初恋の
    いたみを遠くおもひ出づる日

    いのちなき砂のかなしさよ
    さらさらと
    握れば指のあひだより落つ

    頬につたふ
    なみだのごはず
    一握の砂を示しし人を忘れず

    ふるさとの訛なつかし
    停車場の人ごみの中に
    そを聴きにゆく

    かにかくに渋民村は恋しかり
    おもひでの山
    おもひでの川

    石をもて追はるがごとく
    ふるさとを出でしかなしみ
    消ゆる時なし

    やはらかに柳あをめる
    北上の岸辺目に見ゆ
    泣けとごとくに

    ふるさとの山に向ひて
    言ふことなし
    ふるさとの山はありがたきかな

    地図の上朝鮮国にくろぐろと
    墨を塗りつつ
    秋風を聴く

    Reply

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *