経済成長(人口減少・生産性停滞の場合)

人口減少が継続し、生産性が停滞した場合には、2040年代以降マイナス成長となると見込まれる。2010年代に米国の7割程度の水準にある一人当たり実質GDPは、2050年代には米国の6割程度まで低下する。社会保障を支えるための家計の潜在的負担(財政赤字による将来的な負担も含めて考えた負担)が、所得の半分を超すなど、厳しい状況が続く。また、所得の伸びが低迷することから、現役一世帯当たりの実質消費増加率が2050年代までには現在の半分程度まで落ちるなど、生活水準の向上を期待することが難しくなる。さらに、この場合には、人口・経済相互が負の影響を与え合う「縮小スパイラル」に陥ってしまうリスクがある。これは、人口減少により、生産を決める要素である、労働、資本、生産性のすべてがマイナスに寄与し、そして経済が縮小することがさらに人口に減少圧力をかけ、この負の連鎖が続く状態である。このリスクが現実のものとなった場合、生活水準の低下は避けられないことになる。

3 thoughts on “経済成長(人口減少・生産性停滞の場合)

  1. shinichi Post author

    内閣府 > 経済財政諮問会議 > 「選択する未来」委員会

    選択する未来 -人口推計から見えてくる未来像-
    -「選択する未来」委員会報告 解説・資料集-

    第2章 人口・経済・地域社会の将来像

    (5)経済成長とイノベーション

    https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/future/sentaku/s2_5.html

    ●将来の経済成長-現状のままでは2040年代以降マイナス成長に

    現在の豊かさを将来も維持していくことができるだろうか。現状のまま推移して人口急減・高齢化が現実のものとなった場合、日本の経済はどのようになっていくだろうか。未来委員会の事務局において、一定の仮定に基づいて行った試算をもとに整理する。人口については、1億人程度で安定するケースと現状のまま減少が続くケースの2つを想定する。生産性については、改革により向上するケースと停滞するケースの2つを想定する。

    (人口減少・生産性停滞の場合)

    人口減少が継続し、生産性が停滞した場合には、2040年代以降マイナス成長となると見込まれる。2010年代に米国の7割程度の水準にある一人当たり実質GDPは、2050年代には米国の6割程度まで低下する。社会保障を支えるための家計の潜在的負担(財政赤字による将来的な負担も含めて考えた負担)が、所得の半分を超すなど、厳しい状況が続く。また、所得の伸びが低迷することから、現役一世帯当たりの実質消費増加率が2050年代までには現在の半分程度まで落ちるなど、生活水準の向上を期待することが難しくなる。さらに、この場合には、人口・経済相互が負の影響を与え合う「縮小スパイラル」に陥ってしまうリスクがある。これは、人口減少により、生産を決める要素である、労働、資本、生産性のすべてがマイナスに寄与し、そして経済が縮小することがさらに人口に減少圧力をかけ、この負の連鎖が続く状態である。このリスクが現実のものとなった場合、生活水準の低下は避けられないことになる。

    (人口安定・生産性向上の場合)

    人口規模が1億人程度で安定化し、生産性が向上した場合には、実質GDPの1.5%以上の成長が期待できる。社会保障を支えるための家計の潜在的負担は、人口減少・生産性停滞ケースの場合と比べると相対的に緩やかなペースでの増加となるが、所得の35%を超える水準に達することが見込まれる。現役一世帯当たりの実質消費増加率は年2%を超える伸びを持続するなど、生活水準は着実に向上することが期待できる。

    ●生産性の将来見通し-イノベーションが鍵

    将来にわたって豊かさを維持していくためには、人口急減・超高齢化の流れを止めることや生産性を大きく改善させることの両方が必要である。

    生産性の上昇率はこの20年ほどの間に低下したが、その分、上昇させる余地があるとも言える。グローバル競争が進み、価格だけでなく改めて品質や特徴的な価値が見直され、日本の良さが再認識されつつある。高齢化が進む中で、事業継承が課題となっているが、従来の事業のやり方の中に他者の視点が入ることで活性化が生じる事例も出てきている。AI(人工知能)、ビッグデータ、ロボットなどの技術革新の新しい波が来ているが、これに乗れるかも重要である。これらはいわゆるイノベーション、創意工夫による新たな価値の創造である。イノベーションに決まったやり方はなく、正に創意工夫によって生み出されるのがイノベーションである。イノベーションの効果の発現によっては、大きな生産性の改善は決して無理ではない。

    ●現在までの経済成長-一人当たりGDPの順位は下がり続けている

    一人当たりGDPは生活水準の目安の1つと考えることができる。日本の一人当たりGDPは、高度経済成長期を経て、国際的にも高い水準となっている。1995年には米国ドルで換算した一人当たり名目GDPがOECD加盟国中3位となった。しかしその後は、名目GDP成長の停滞等によりその順位は低下し、2013年には19位となっている。現在のこの水準は、イギリス、フランス、ドイツといった欧州主要国とほぼ同程度である。ただし、ほかの主要国は緩やかながらも一人当たりGDPは増加しているのに対して、日本は1990年代半ば以降ほぼ横ばい、やや低下気味となっている。現状のまま推移した場合には、世界の中で豊かな国としての地位を保っていくことは徐々に難しくなっていくことが想定される。

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  2. shinichi Post author

    内閣府 > 経済財政諮問会議 > 「選択する未来」委員会 > 選択する未来 > Q11

    第3章 人口・経済・地域社会をめぐる現状と課題

    第2節 経済をめぐる現状と課題

    Q11

    人口急減・超高齢化は経済成長にどのように影響しますか。

    A11

    ●経済成長への影響

    人口規模、人口の急減及び人口構成が経済成長にどのような影響を与えるかについて、経済成長を考える際に一般的な考え方である成長会計に基づいて考える。成長会計では、経済成長を決める要因は、労働投入、資本投入及び全要素生産性であるとされる。

    人口が減少することは、労働投入の減少に直接結びつく。技術進歩などによる生産性上昇に伴って成長率が上昇するのに加えて、人口増によって労働力人口が増加して成長率が高まることを「人口ボーナス」と呼び、この反対の現象を「人口オーナス」と呼ぶ。今後、人口オーナスに直面し、成長率が低減することが懸念される。また、人口減少は資本投入へも影響を及ぼす。例えば、人口が減ることで必要な住宅ストックや企業における従業員1人当たり資本装備は減少することになる。また、高齢化が進むことで、将来に備えて貯蓄を行う若年者が減少し、過去の貯蓄を取り崩して生活する高齢者の割合が増えることで、社会全体で見た貯蓄が減少し、投資の減少にもつながる。

    生産性についても、生産年齢人口が増えていく経済と減っていく経済について比較すると、生産年齢人口が減っていく経済では生産性が落ちる可能性が指摘されている。例えば、人口規模が維持されれば、多様性が広がり、多くの知恵が生まれる社会を維持することができる。また、人口構成が若返れば、新しいアイディアを持つ若い世代が増加し、さらに経験豊かな世代との融合によってイノベーションが促進されることが期待できる。逆に言えば、人口が急減し、高齢化が進む社会においては、生産性の向上が停滞する懸念がある。

    人口の減少や高齢化の進行は以上のように、経済成長に対して3つの経路を通じて影響を与える可能性がある。

    また、人口構成の変化も経済成長に影響を与える。現在の財政や社会保障制度を前提とすれば、人口急減・超高齢化の進展の下では、社会保障負担の増大などを通して現役の働き手の世代の負担増加を続けていく懸念がある。負担と受益の関係が大きく損なわれると、経済へ悪影響が生ずるおそれがある。世の中の仕組み、制度や政策は、その時々の状況にあわせて見なされていくものではあるが、問題は人口の規模や構成といった大きな変数が急激に変化していくその速度である。急激な変化の中で、世の中の仕組みが柔軟に変わっていかない場合には、いろいろな歪みが生ずることになり、また、急速に仕組みが変わっていく場合には、将来の展望を描きにくくなる。いずれの場合であっても、安定して持続的に経済活動を行っていく上ではマイナスになり得る。

    以上のように、人口急減や高齢化の進行は、経済へ与える影響が非常に大きいと考えられる。もっとも、日本が直面する状況は、過去に例のない新しい事象である。人口急減・超高齢化の流れを緩和する取組の重要性はもちろんであるが、ある程度の人口減少・超高齢化のなかでも経済発展を持続できるよう、過去のパターンにとらわれず、新しい発想で立ち向かっていく必要があると言えよう。

     

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  3. shinichi Post author

    人口増加と経済成長(十字路)

    三菱商事 調査部長 武居秀典
    2018年9月21日
    https://www.nikkei.com/article/DGXMZO35607790R20C18A9SHH000/

    人口規模は国力の源であり、人口増加は理論上、労働投入量の増加を通じて、経済成長をもたらす。1990年代以降、中国では増加した労働力が繊維など軽工業に吸収され、急速な工業化に貢献。さらに自動車などのより生産性の高い製造業に従事することで賃金が上昇、巨大な消費を担う中間所得層を形成し、経済の好循環を生み出した。

    国連統計によれば現在、76億人の世界人口は、2050年には98億人に達し、その増加の6割を占めるアフリカはアジアに続く世界の成長センターと期待される。ただし、人口増加をもって将来の成長が約束されるわけではない。人口増加を経済成長につなげるには、増加する労働力を雇用する産業、特に生産性の高い製造業がカギとなる。労働力が増えても、雇用する産業の育成が進まなければ、失業者が増える。農村に労働力が滞留すれば、国全体の生産性が伸び悩み、1人当たりの所得も低下する。政治・社会不安にもつながりかねない。

    人口が増えれば消費が拡大するとの声もあるが、単に人口が増えるだけでは、その拡大にも限界がある。本格的な消費市場の立ち上がりには、国民全体の購買力を底上げする生産性の高い多くの雇用が不可欠だ。

    残念ながらアフリカの多くの国では、依然として治安や汚職、インフラ未整備などの問題があり、海外からの投資も伸び悩み、製造業がなかなか立ち上がらない。この状態が続けば、人口増加が経済成長につながるどころか、国の発展を毀損する可能性もある。一足飛びにデジタル化が進むとの予測もあるが、人口増加を吸収するだけの雇用創出は期待しがたい。アフリカ諸国の課題は多いが、人口増加を最大限生かすべく、製造業の誘致・育成および、同分野における雇用拡大に一層注力すべきだろう。

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