関東大震災から100年

1923年9月1日

家の財産などを荷車や人力車に積んで避難し、上野駅前広場につめかけた人々

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  1. shinichi Post author

    論説 関東大震災100年 巨大災害再来に備えよ

    山陰中央新報デジタル
    (2023/9/1)

    https://www.sanin-chuo.co.jp/articles/-/443394

     死者・行方不明者約10万5千人を出した関東大震災から9月1日で100年。国内の自然災害史上、最悪の犠牲者数だ。揺れによる建物倒壊、大規模な火災、津波、土砂災害が重なった複合災害だった。

     この1世紀で、建物の耐震化や不燃化は進んだが、木造住宅の密集地域は今も全国に存在する。市街地の拡大や建物の高層化による新たなリスクも出てきた。巨大災害は再来するとの前提で、過去の教訓を受け継ぎ、被害を減らしたい。

     関東大震災は、相模湾から房総半島に延びる「相模トラフ」で繰り返すマグニチュード(M)8級の巨大地震によって生じた。その前の同様の巨大地震は1703年の「元禄関東地震」で、大正まで220年の間隔があった。このため、100年たった現在は「次」まで猶予があるという見方が強いが、前回より短い間隔で起きてもおかしくはない。

     このタイプとは別に、M7級の首都直下地震の発生頻度は高い。今後30年以内の発生確率は70%程度と予測されている。M7級が都市直下で起きれば甚大な被害が生じることは1995年の阪神大震災で証明済み。現代の科学ではどの地震も予知はできない。普段から耐震補強や家具の固定を進めておきたい。

     この100年間に、国が「大震災」と呼ぶ災害は3回発生した。それぞれ犠牲者の死因に特徴がある。阪神大震災の多くは、家屋倒壊や家具転倒による圧迫死だった。2011年の東日本大震災は、ほとんどが津波による溺死だ。関東大震災は9割近くが火災による犠牲者だった。東京や横浜の市街地が焼失した。

     その後、建物の不燃化が進み、消防力も向上し、3万3千平方メートル以上を焼損する「大火」は、地震以外では1976年に山形県酒田市で起きて以降、発生していない。

     しかし、地震時の火災は様相が異なる。同時多発で出火するので消防機関の限界を超える。倒壊した建物が道路をふさぎ、消防車両が現場に着けない場合もある。

     市民による初期消火が必要だが、高齢化が進み、地域の防災力は低下している。消火作業に集中するには、家屋の耐震性が確保されている必要がある。

     100年前はなかったリスクも表面化してきた。超高層の建物が増える中、長くゆっくりと揺れる「長周期地震動」が懸念される。エレベーターの停止や高層階の孤立が相次ぐだろう。大災害で、直ちに救援は来ないという覚悟や備えはあるだろうか。

     地球温暖化に伴い、近年は非常に発達した台風や豪雨による災害も目立つ。関東大震災は台風の影響による強風が火災の被害を拡大した。当時相次いだ土砂崩れなども、台風による降雨の影響が指摘される。災害列島では、こうした複合災害を念頭に置くべきだ。

     関東大震災は内閣の組閣中で首相空席という不安定な政治状況で起きた。内務省などの庁舎が焼失し、政府の初動は著しく遅れた。

     巨大災害で国の役割が重要なのは言うまでもない。広域に及ぶため、市町村や県単独の能力を超えた事態が続出する。さまざまな課題で、国の調整が不可欠となる。100年前の経験者が少なくなった今、過去から学ぶ機運の醸成にも、国がより積極的に関与してほしい。

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