パンデミックと新自由主義(杉村昌昭)

中国は、建前はどうであれ、世界的に見たら、いわば多くの面で〈権威主義的新自由主義国家〉という様相を呈している。そして、国内における強権発動装置を備えた〈市場社会主義〉がこれを支えている。この中国国家の現状と、今回の〈新型コロナ・パンデミック〉に対する欧米諸国の行政権力の対応とを重ね合わせてみると、そこに興味深い共通性が浮かび上がってくる。すなわち、そこには似通った “民衆管理” の姿が立ち現れてくるのである。言い換えるなら、多くの欧米諸国が(もちろん日本も)、「コロナ対策」にかこつけた統治手法として――欧米諸国の行政権力がどこまで自覚しているかは別として――中国の強権的な民衆管理の手法を採用しているということである。感染が広がりはじめた初期に行なわれた「ロックダウン」(日本では「緊急事態宣言」)、さまざまな行動制限、最近ではワクチン接種の事実上の義務化など、マスメディアの報道によって醸成されたコロナウィルスに対する人びとの恐怖心をテコとして採用された民衆統制は、欧米諸国がことあるごとに批判してきた中国政府の “非民主主義的民衆管理” そのものの様相を呈している。

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  1. shinichi Post author

    なぜ新型ウィルスが、次々と世界を襲うのか?

    パンデミックの生態学

    by マリー=モニク・ロバン
    translated by 杉村昌昭

    世界最先端の専門家62人が語る、その実態と発生メカニズム
    なぜ “新型コロナ” が出現したのか? さらに今後、“新たなウィルス” が人類を襲うのか?
    欧州で話題集中!
    パンデミックの起源は、森林と生物多様性の破壊だった!

    世界は、鳥インフル、エボラ出血熱、SARS、MERSなど、新たなウイルス感染症に襲われ続け、ついに新型コロナのパンデミックが発生した。世界の多くの研究者は、自然環境と生物多様性の破壊こそが、新型ウィルスを出現させていると指摘している。
    しかしなぜ、コウモリやネズミの小さな群れに潜んでいたウィルスが、ある時、突然、数カ月で全世界に広がるのか? 本書は、世界の最先端で研究を進める専門家(感染症学、ウィルス学、進化生物学、保全生物学、さまざまな生態学など)62名へのインタヴューを行ない、その実態と発生メカニズムを明らかにしたものである。
    パンデミックへの真の対策は、ウィルスのゲノム解析やワクチン開発競争、生物安全保障ではない。生物多様性や生態系の保全であり、これを世界が協力して推進しないかぎり、今後、さらに破局的な新型ウィルスが、世界を襲う可能性があることを警告する。

    **

    [訳者あとがき]

    パンデミックと新自由主義

    by 杉村昌昭

    パンデミックと新自由主義グローバリゼーションについて

    中国は、建前はどうであれ、世界的に見たら、いわば多くの面で〈権威主義的新自由主義国家〉という様相を呈している。そして、国内における強権発動装置を備えた〈市場社会主義〉がこれを支えている。この中国国家の現状と、今回の〈新型コロナ・パンデミック〉に対する欧米諸国の行政権力の対応とを重ね合わせてみると、そこに興味深い共通性が浮かび上がってくる。すなわち、そこには似通った “民衆管理” の姿が立ち現れてくるのである。言い換えるなら、多くの欧米諸国が(もちろん日本も)、「コロナ対策」にかこつけた統治手法として――欧米諸国の行政権力がどこまで自覚しているかは別として――中国の強権的な民衆管理の手法を採用しているということである。感染が広がりはじめた初期に行なわれた「ロックダウン」(日本では「緊急事態宣言」)、さまざまな行動制限、最近ではワクチン接種の事実上の義務化など、マスメディアの報道によって醸成されたコロナウィルスに対する人びとの恐怖心をテコとして採用された民衆統制は、欧米諸国がことあるごとに批判してきた中国政府の “非民主主義的民衆管理” そのものの様相を呈している。

    コロナ対策をめぐる異論封殺

    フランスのマクロン政権は当初から「ロックダウン」をはじめとする強制的措置をくり返し、コロナ禍をむしろ人為的に拡大した。そうした強権的民衆統制の手法は、現在も進行中であり、とりわけ人々の恐怖感と医療テクノロジーに対する信仰をテコとして、「ワクチン接種」の事実上の強制的義務化に突き進んでいる。これに対してはフランス国内でも、多くの異論(たとえばPCR検査の妥当性への疑問、陽性反応者を感染者と同一視することへの異論、あるいはワクチンの有効性に対する医学研究者や現場の医師からの多くの疑問)が提起されているが、フランスのマクロン政権はこれらの異論を弾圧・抑圧し続けている。TVをはじめとするマスメディアは、マクロン政権と一体となってこうした統制に加担しているため、異論はインターネットで表明するしかないが、この政権やマスメディアはネット上の異論をも “削除” という手法で押しつぶしている。
    こうした異論封殺は、日本でも陰に陽に行われていることも喚起しておきたい。

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