校條浩

SNSで結集した大衆の力はもろ刃の剣だ。SNSはばらばらだった人々が集まり力を結集し、世の中を変えるような素晴らしさがある。一方、集まった人たちが同じ考えの一色となり、異なる価値観や少数意見は全く耳を貸さなくなる危険性がある。
特に危険なのは、不都合な事実はフェイク(偽り)だと断定し、自分に都合のいい架空の話は真実だと信じることだ。関東大震災での朝鮮人虐殺のような悲惨な事件を日本も経験している。情報の分断による人々の危険な行動は、どの国にも危険が潜んでいる。

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  1. shinichi Post author

    SNSと社会の分断

    by 校條浩

    日経産業新聞

    https://www.nikkei.com/article/DGXKZO69767280Y1A300C2XY0000/

    今、世界中で社会の分断が深刻になっているが、その分断にSNSが大きな影響を与えている。

    米トランプ前大統領による扇動に呼応し、多くの共和党支持の急進派が米国国会議事堂に乱入した事件は記憶に新しい。背景にはトランプ氏がツイッターを駆使し、全米の大衆に白黒がはっきりした分かりやすいメッセージを送り続けたことがある。

    SNSでは支持されるコメントが次々と伝搬するので、同じ思いの人たちの群衆が動きやすくなった。

    SNSで民衆の動きが拡大したのは、ミャンマーでも同じだ。軍のクーデターに対するデモやゼネストなどの民衆の抵抗の大きさは、軍の予想以上だったと言われている。少数の権力・富裕層と一般大衆の間に深い分断があったが、民衆がSNSでつながることでその分断が一気に表面化した、と言ってもよい。

    しかし、SNSで結集した大衆の力はもろ刃の剣だ。SNSはばらばらだった人々が集まり力を結集し、世の中を変えるような素晴らしさがある。一方、集まった人たちが同じ考えの一色となり、異なる価値観や少数意見は全く耳を貸さなくなる危険性がある。

    特に危険なのは、不都合な事実はフェイク(偽り)だと断定し、自分に都合のいい架空の話は真実だと信じることだ。関東大震災での朝鮮人虐殺のような悲惨な事件を日本も経験している。情報の分断による人々の危険な行動は、どの国にも危険が潜んでいる。

    では、SNSを健全な議論の場にするにはどうしたらいいか。ささいな例だが、地域限定SNSである米国のネクストドアでの実際の経験をご紹介しよう。

    ネクストドアは、迷い犬の相談や庭師の紹介など地域の生活に密着した情報交換、意見交換が多く、普段は穏やかだ。それがある投稿をきっかけに大炎上した。白人の女性が「黒人との間に生まれた息子が、車から降りてきた白人女性に罵倒された」と投稿したことに端を発し、人種差別的な嫌悪発言だ、とその女性を非難する投稿一色となった。「その女性を見つけ出して糾弾しよう」という魔女狩りの提案まで出た。

    炎上の最中、たまたま現場近くに居合わせたという人が投稿した。その男の子は自転車を蛇行運転し車の往来を妨害していた、というのである。この投稿をきっかけに、非難一色だった雰囲気は大きく変わり、「真実が分からなければ単純に白黒は言えない」という認識で炎上は収束した。そこに至るまで何人かの投稿者が冷静に両者の話を分析し、どちらの情報からも結論は難しい、という意見を述べた点が印象的だった。

    この小さな一件で感じたことは、議論の透明性と他人の意見を尊重する態度の重要性だ。どのSNSでも言えることではないか。

    SNSは特定の意見に支持が集まると、その支持そのものがさらに賛同者を惹きつける自己増殖的な性質があり、分断をもたらしやすい。分断を助長しかねないSNSを、我々はどのような社会の装置として進化させるのか。課題は重い。

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